【『正直不動産』第9話感想・考察】愛着の湧くキャラクター、永瀬・山下智久にキュンとした瞬間
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grape [グレイプ] entertainment
ドラマ好きなイラストレーター、ゆう。(@yamapyou)さんによるドラマコラム。
2022年4月スタートのテレビドラマ『正直不動産』(NHK)の見どころや考察を連載していきます。
女が男を養うなんてありえない。職場で女というだけでナメられる。
そんな時代はもう終わった。
正直不動産はメッセージの送り方が非常に上手い。
新しい時代を生きる我々へ、古い時代の考え方を捨てるよう気付きをくれる。
多様化してきた現在、これまでの固定観念とはおさらばしなければならない。
女性は家庭に入り、男性は外で働く。これはもう当たり前ではないのだ。
別に女性の方が収入が高ければ女性が養えばいい。男性が育児をしたっていい。
女性だから見下され、無下に扱われる。そんな職場はこの時代にはそぐわない。
そのような考えが徐々に浸透してきてはいるものの、やはりまだ『当たり前』な世の中ではない。
それなのに、永瀬(山下智久)や月下(福原遥)は「そんな時代、まだあるんですね」とあえて言い切った。
古い固定観念を持ったままの人は、このセリフにグサリと来たのではないだろうか。
正直不動産はその考えを容赦なく『時代遅れ』であることを示した。
とても潔く、「よくぞ言ってくれました」とも思った。
まだ古い時代の考え方にとらわれ、窮屈を感じ苦しんでいる人は多いだろう。
大衆の意識を少しずつ変えていかなければならない。『正直不動産』第9話からは、そんな熱い想いと挑戦的なメッセージを感じた。
ついに明らかになった!ミネルヴァ鵤社長と花澤の過去
登坂不動産の人員までも奪い出したミネルヴァ不動産。
鵤(高橋克典)がここまでする理由が気になる永瀬は、偶然出会った桐山(市原隼人)に鵤の過去について聞く。
鵤は幼い頃に両親に捨てられ天涯孤独だった。
不動産屋の里親に引き取られたが、虐待を受けて育つ。
しかし、里親は住元不動産を騙した地面師の主犯格で潜伏先のフィリピンで逮捕され、獄中で死亡。
その逮捕に協力したのが登坂社長だった。
では登坂社長への攻撃は、父親の敵討ちかとも思われたが、そうではなかった。
鵤は父親を憎んでいたのである。自分が殺すはずだったのに、登坂のせいで父親は獄中であっさり死んだ。だから登坂を恨んでいるのである。
実に歪んだ動機だ。地面師の逮捕に協力した登坂社長は何も悪くない。
腑に落ちない気持ちになったのは視聴者も永瀬も同じだろう。
気になるのは登坂社長である。
鵤に怒りを覚えるというよりは、どちらかというと仕方ないという雰囲気。その心の余裕は何なのだろうか。
最終回での因縁の関係に決着がつくことを祈ろう。
正直に生きる永瀬にキュンとした瞬間
メガバンクに務める榎本美波(泉里香)から、「結婚を前提にお付き合いしてください」と猛烈なアタックを受ける永瀬。
初期のころは女遊びの激しい場面も多く見せていたものの、ここ中盤は仕事に励む姿が主になり、ここに来て永瀬の恋愛パートが動き出したことにドキドキしている視聴者も多いのではないだろうか。
永瀬は正直の祟(たた)りにあい、なんだか優しくなった。
以前は客を人として思っていなかった永瀬だが、その心境の変化はプライベートにも確実に影響しているように思える。
結婚というワードが重いのだろうが、裏を返せば、結婚するつもりがないので軽い気持ちでお付き合いし、榎本を傷つけたくないと考えているようにも思う。
また、ボロアパートの窓から以前住んでいたタワマンを見上げ、最初はすぐ戻りたいと思っていた永瀬だが、最近はそう感じなくなっていた。
風呂なしで電気もチカチカするようなアパートだが、ここにいる方がよっぽど生活してる感じがする。
これも永瀬の心の変化だ。
見栄を張って着飾るより、正直にありのまま、生活感を出して生きることの心地よさに気付いたのかもしれない。
榎本と肉じゃがを食べているシーンでは、おでこにピンを付けていた永瀬が特に印象に残っている。
職場でのスマートでイケメンな永瀬とは違い、オフの姿は何だか幼く、とてもキュートなのだ。
こんなキュンとなる姿を、思いもよらないタイミングで出してくるのはずるい。
第9話で改めて、「永瀬…変わったなあ」と感じた。
いつもの居酒屋では、月下を褒め、嬉しくて泣いてしまう彼女の涙を拭いてあげる。
最初は新人教育でさえ億劫そうにしていた永瀬からは考えられない姿だ。
お時間のある人は是非、ドラマの初回、またはコラムの初回を読んで欲しいのだが、この変わりようは改めて見ても面白い。
『正直不動産』過去コラムはこちら
我々は約3か月間、永瀬という男を見守ってきた。愛着も湧き、どんどん魅力的になる。
また、一緒に戦ってきた正直不動産の仲間たちも、大いにドラマを盛り上げてくれた。
彼らとのお別れは辛いが、「正直不動産という素晴らしいドラマに出会えて本当によかった」そう感謝の意を込めて次回の最終回を見届けたいと思う。
[文・構成/grape編集部]