【石子と羽男 第7話 感想】歩み出すきっかけを与えられるのは、私たちであるということ
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Twitterで人気ドラマの感想をつづり注目を集める、まっち棒(@ma_dr__817125)さんのドラマコラム。
2022年7月スタートのテレビドラマ『石子と羽男ーそんなコトで訴えます?ー』(TBS系)の見どころや考察を連載していきます。
人生は些細なきっかけで大きく変化する。悪い方にも、良い方向にも…。そして法で守ることができないことは山ほどある。
7話はそんな法律の壁を現代の若者の問題から紐解いていく。
『東横キッズ』を連想させる『山ヨコキッズ』
羽男(中村倫也)は、自転車をぶつけて、キッチンカーを破損させた人物を探して欲しいという相談を受ける。
依頼として引き受けた羽男は石子(有村架純)と繁華街の『山ヨコキッズ(以下、山ヨコ)』が集う場所で聞き込みを行うことに。
多くは様々な事情で家には帰らない未成年で、案件と呼ばれる援助交際を行う少女も多い。
皆が居場所を求め、日々を必死に生きているのだ。彼らは社会や大人を自ら切り離すように、全く二人の話に耳を貸さなかった。
その後、ドラレコの映像から破損させたのが山ヨコのリーダー的存在『K』であるということが判明したが、連絡を取る手段が見つからないでいた。
そんな時、羽男のもとに山ヨコキッズの1人、川瀬ひな(片岡凛) から、「Kの情報を渡すから今すぐ来てほしい」と電話を受ける。友人の美冬(小林星蘭)が父親・東(野間口徹)から暴行を受け、追われているというのだ。
美冬は母親の再婚相手である現在の東から暴力で支配されていた。1ヶ月前に暴行を受けた日に家を飛び出し山ヨコに来てからは、二人は唯一心を許し合える存在となった。
暫くして石子と羽男が現場に到着するが、美冬は途中の歩道橋の階段で足を踏み外し、集中治療室へ運ばれる事態となる。
こんな時、真っ先に連絡すべきは警察だ。しかし、彼女らが警察に頼れば、また居場所を失うことになる。
山ヨコにいる若者は皆、大人を信用も期待もしていないのだ。だが、ひなは美冬のため、偶然知り得た大人の電話番号に全てを託した。
そして意識を無くした美冬の代わりに「父親を虐待で訴える」というが、本人の意思は不明であり、疑わしいというだけで裁くことはできない。
この『推定無罪』というきまりは冤罪を防ぐためにある一方で、時に裁かれるべき罪を守ってしまう。弁護士は法律の範疇でしか動けないし、法には限界点が存在するのは確かなのだ。
それでも、石子は繋がりができた以上見捨てることはできないと、自分のルールを破り、ひなを家に泊まらせることにした。
石子が美冬に肩入れする理由とは…
そんな中、Kが権力争いの末に殺害される事件が報道される。
事件発生は9月9日。10日のドライブレコーダーにKが映るはずがないことに、羽男が気づく。
ドラレコに映った人物は美冬だった。Kと客の紹介料で揉めた腹いせに、隠し撮りされたデータを奪い取るため、店に忍び込んだという。
咄嗟に逃げた時、車体に傘をぶつけてしまったのだ。
「車を傷つけたのが美冬さんなら…」とひらめく羽男たち。修理代の賠償について父親に話を聞くのを利用して、暴行の証拠を掴む糸口を見つけたのだ。
しかし、父親の元に訪れ、話を聞き出そうとするも、石子が過度に詰め寄ってしまい、そのまま門前払いされてしまう。
石子がここまで肩入れするのには理由があった。ひながわずかでも心を開いてくれた瞬間は、二人の人生の希望だと強く感じていた。
「人生って、些細なことで変わると思うんです」
石子は自分自身がそれを一番良く理解っていたのだ。
目の前で突然起きた交通事故、その日は最初の司法試験の朝だった。それから毎年、試験を受けるたびにフラッシュバックし続けた。
今もパラリーガルのままなのはこれが原因だった。美冬の出血を見て顔を覆っていたのも、過去のこの記憶が脳内に過ぎっていたのだ。
事故が無関係であるはずの目撃者の人生さえ狂わせる。石子は山ヨコの若者も同じだと感じていた。
望まない環境に今いるのは、決して本人だけの問題ではない。人生は、望まぬ方向に一瞬で変わってしまうのだ。しかし、石子は続ける。
「逆に、私たちとの遭遇で、彼女たちの人生を少しでも変えられる」
石子の頑固な性格でありながら、諦めずに何か方法を探る、この柔軟な考えはいつも調査に風を吹かす。
石子は大庭の自宅を訪れ、協力のもと二週間前のドラレコ映像の美冬にアザを発見する。
その映像と美冬がKに隠し撮りされた動画をもとに、法廷で東に見せ迫ると、責任を取ると証言し、キッチンカーの件は解決目前となった。
残るは虐待の証拠…。二人はとある秘策を思いついていた。
東の酒癖の悪さを聞き、塩崎(おいでやす小田)と大庭(赤楚衛二)がお酒の席で悪事を吐かせようという作戦だ。
まずはさりげない世間話から始め、調子に乗ってきたら一気に核心に迫る。石子が用意したシナリオをコミカルに演じる二人が東を饒舌にさせていく。
殴れば言いなりになる。子供が世間に出た時に恥をかかないようにするために必要な『しつけ』。
「虐待はしていない」と主張する大人は、これを『しつけ』と言う。だが、これはれっきとした暴行罪だ。
でも、しつけと履き違える親は一向に減らないし、近所や親族との繋がりが弱くなった現代においてはより虐待の事実は見えにくくなった。
虐待や家庭問題で苦しむ子供を全員救うことは難しく、大人一人で救えることなんて、高が知れている。
だが街を賑わせる沢山の音の中に、居場所を求め彷徨う若者の声は響き続ける。私たちはその声一つにひとつにこれから続く尊い人生があることを忘れてはならない。
確かに期待しても叶わないことの方がずっと多い。それでも選択と偶然の繰り返しの中で、希望のための一瞬のきっかけだって存在する。
それを逃さないためにも、法律が存在する。
ひなと美冬は、石子と羽男という大人に偶然出会い、そして正しい法との向き合い方を知った。
「もう逃げないで戦います」
暴行傷害で声を上げたのは、意識を取り戻した美冬自身だった。そしてキッチンカーの賠償も、綿郎(さだまさし)の援助を受け、ひなも一緒に働いて返すことを決めた。
前話の「変わろうとしたその瞬間が未来を変えていく」というメッセージの後に、法律には限界があり、人生は時に悪い方向へと変化するというのを描くのは少し酷だったのかもしれない。
だが、何でもしてあげられるスーパーマンになれなくても、居場所を探し、良い方向に変化を求める者に、逃げ道は用意できる。
誰かに歩み出すきっかけを与えられるのはきっと、この物語を見た私たちだ。
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『石子と羽男ーそんなコトで訴えます?ー』/TBS系で毎週金曜・夜10時~放送
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[文・構成/grape編集部]