志駕晃「なんでみんな結婚しないのか」 興味深い『今どきの婚活』を覗いてみたら…
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grape [グレイプ] entertainment
結婚を、するもしないも自由な現代。
どちらを選ぶにしても、さまざまな理由があるでしょう。
未婚の場合、「いいと思える人がいない」「自由な時間が減るのは嫌」「異性との会話が苦手」など、世間でよくいわれているような理由に大半の人が共感しています。
しかし、人によっては、容易には明かせない『本当の理由』を隠しているかもしれません。
現代の婚活って? 作家・志駕晃にインタビュー
リアルな婚活市場を描いた小説『私が結婚をしない本当の理由』。2023年8月22日、文庫化に伴い『まだ出会っていないだけ』に改題して発売されました。
作者は、第15回『このミステリーがすごい!』大賞の隠し玉に選ばれた小説『スマホを落としただけなのに』でデビューを飾った、作家の志駕晃さん。
セキュリティなど、現代社会の諸問題を取り入れた同作がシリーズ化され、人気を博したことから、志駕晃=手に汗握るサスペンスというイメージを持っている人は多いでしょう。
同月4日に発売されたシリーズ4作目『スマホを落としただけなのに 連続殺人鬼の誕生』は、作者本人が嫌になるほど陰惨な内容となり、これまで登場した女性キャラクターが次々と亡くなる衝撃作になったとのこと。
そんな作風の志駕さんが、「今まで書いたことのない題材にも挑戦したい」との想いから、結婚相談所を舞台として執筆したのが本書です。
【『まだ出会っていないだけ』あらすじ】
「会員になれば3か月で結婚できる」と評判の結婚相談所を訪れるのは、事情を抱えた20~30代の男女4名。
大企業勤務の『こじらせ女子』、マザコンの御曹司、オタク趣味の家事手伝い、会話に難がある研究者と、成婚までのハードルが高そうな人ばかり。
相談所の社長と女性スタッフの2人は、彼らの『出会い』を手助けできるのか!?
コロナ禍により、パートナーがいる心強さが再認識され、結婚への関心が高まっている昨今にぴったりの1冊です。
現代の婚活事情に焦点を当てた理由は、志駕さんが株式会社ニッポン放送プロジェクトに務めていることも関係するようで…。
人が死なない小説を書きたくなって、『婚活×ミステリー』にしたら面白いのではないかと。
何より、業界的にイケメンだったり、年収が高かったりしても結婚をしていない人たちが身近に大勢いたので、「なんでみんな結婚しないのか」という単純な興味がありました。
また、40年ほど前に、ライバル同士の結婚相談所のストーリーを考えていて、いつか書いてみたいと思っていた題材でした。
有名な結婚相談所に取材して聞けた、成婚にこぎつけるまでの苦労話は、小説内に存分に生かされているとのこと。
情報収集で知り得た、人々の『結婚をしない理由』も多数盛り込まれているため、読者は「まさにこれなんだよな」と共感すると同時に、「そんな理由の人もいるのか」と驚くことでしょう。
執筆中に感じたことについて、志駕さんは次のように述べています。
結婚しないほうが普通なのかなっていう気すらしましたね。
世の中の中間層は、1人でいるほうが楽でしょう。
「嫌な人と結婚して、義父母との付き合いとか、いろんなしがらみに振り回されるくらいだったら、1人で生きるほうが楽だ」という考えは、非常によく分かります。
とはいえ、結婚への意欲を抱いている人たちも多いもの。
そんな人たちに、「この小説を読んでいろいろと考えてほしい」との想いがあるそうです。
いろいろなキャラクターや、婚活の種類を作品内に出したいなと思いました。
婚活事情をこの1冊に全部書けたら面白いだろうなって。
また、結婚相談所がどんなところか、興味がありつつも登録していない人に「こうなっているんだよ」って教えてあげられたら…という気持ちもあります。
作中では、親同士の婚活パーティーのほか、飲食店やイベント会場で開催される通称『街コン』、職種縛りのお見合いなどに触れています。
多様な婚活を一度に覗くことができる点も、この小説の面白さといえるでしょう。
また、マルチ商法の勧誘など、婚活に潜む危険も紹介されているので参考になりますよ。
『幸せな結婚』と運命の人
婚活中の人が追い求める『幸せな結婚』は、小説内でも重要な鍵の1つ。
どうしたら『幸せな結婚』ができるのかを尋ねると、志駕さんは「自分に何ができるかを考えれば、意外とゴールは近いですよ」という言葉に続けて、『運命の人』についての持論を展開しました。
自分が変われるかどうかが1番大きいです。
『運命の人』には出会っているんですよ、みんな。
だけど、それが運命にならないってことは、自分が変わっていないから。
結婚したい人は、自分の考え方が変われば、周囲にいる誰かの魅力に気付き、結ばれる可能性があります。
要するに、本当の原因は自分にあるということ。
幸せも、「結婚したら幸せ」ということはなく、自分がそう感じられるかどうか。
どんなに好条件の人と結婚しても、自分が幸せを感じられなければ、人は幸せになれないのです。
反対に、世間一般に悪条件と思われる人と結婚しても、本人たちが幸せであれば、それは『幸せな結婚』です。
相手の年収や学歴など、結婚する上で譲れないポイントだと思っている部分も、もしかしたら自分の『幸せな結婚』に、本当は必要ない可能性も…。
誰しも知らないうちに、世間の価値観に染まっていることがあるので、自分を改めて分析する時間も必要なのかもしれませんね。
『まだ出会っていないだけ』は、結婚相談所を訪れたクセのあるキャラクターたちが、婚活を通して変わっていく様子も見どころの1つ。各キャラクターの『運命の人』にも注目です。
さらに、相談所の社長と女性スタッフも未婚であることが判明し、結婚をしていない本当の理由が明かされます。
決して他人事とはいえない、その秘密とはなんなのでしょうか…。
気になる人は、ぜひ本書をお手に取ってご覧ください!
まだ出会っていないだけ (中公文庫, し57-1)
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[文・構成/grape編集部]