【『大奥 Season2』感想4話】仲間由紀恵が新境地で魅せる、フィクションと現実を繋ぐ権力の闇
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SNSを中心に注目ドラマの感想を独自の視点でつづり人気を博している、かな(@kanadorama)さん。
2023年10月スタートのテレビドラマ『大奥 Season2』(NHK)の見どころを連載していきます。
かなさんがこれまでに書いたコラムは、こちらから読めます。
人間の尊厳と業を描くこのNHKドラマ10『大奥』(NHK 火曜22時)の中でも、権力と性差をめぐる描写はこの医療編の後半が最も秀逸で、だからこそ恐ろしい。
今回の映像化の前から、作品中最大の悪役・一橋治済を誰が演じるかは原作ファンの中でも大きな話題になっていた。
ちなみに原作の治済は、凡庸な容姿の女である。その凡庸さゆえに、凶行の数々は衝撃的だった。
映像化の治済役が仲間由紀恵だと発表されたとき、これは中途半端はないだろうと背筋がざわついた。
その制作の賭けの結果はどう出たか。治済の出番はまだ途中であるけれども、もう答えは出ている。
この役は、仲間由紀恵という俳優が持つこれまでの輝かしいキャリアを、更に高みに押し上げる大きなターニングポイントになるに違いない。
※写真はイメージ
男子のみが罹る伝染病・赤面疱瘡で、男性の人口が著しく減少した架空の江戸時代。
主な労働の担い手は女性になり、政治もまた女性を中心に行われていた。
人口減少と国防の弱体化を憂う八代将軍・吉宗(冨永愛)は、再び男子の人口を増やすべく赤面疱瘡の克服を腹心の田沼意次(松下奈緒)に託す。
大奥に蘭学者を集め、一度は人痘接種という大きな成果を得るも、田沼を後押ししていた将軍・家治(高田夏帆)の死とともに研究は中止となり、研究をしていた面々は死罪や追放といった境遇に追いやられた。
だが一度踏みつぶされた伝染病克服の希望の芽は、まだ枯れてはいなかったのである。
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前回、欲が生み出す権力争いが国の未来を左右する発見を平気でもみ消してしまう、その絶望感はすさまじかったが、引き続き4話目も重苦しい。
見ていて息苦しさすら感じるのは、罪のない幼児が毒殺されていくという衝撃的な展開に加えて、その悪事が見逃されていく様子が現代にも通じるものだからだ。
母・治済の操り人形として将軍になった家斉(中村蒼)は、老中の松平定信(安達祐実)に力なく言う。「母上を怒らせてもよいことは何もない」と。
そして治済当人もまた、これほどに異常な人数の人間が死んでも誰も疑いの声をあげないと悪びれることなく呟く。権力者の悪事は、滅多に暴かれない。
安全と効率を求めて人は集団を作り、集団を指導する者に権力を預ける。
だが権力者がその能力を持たない上に更に悪辣であった時、それを糾弾することが難しいのは、時代も性別も集団の規模も越えて変わらない事実である。
そんな現実にも通じるやるせなさを、脚本の森下佳子は巧みに物語の中に仕込んでいく。
この医療編の後半、原作に加えて映像化でオリジナルとして加えられたのは、治済の性格についての描写だった。
敵対関係でもない孫を殺す動機が理解できないと言う家斉に、定信は「世には人のもだえ苦しむさまを楽しむ趣味の者もいる」と、家斉を哀れむように返す。
ここは原作では動機の分からないサイコパスのように描かれていた治済について、更に一歩踏み込んだ表現である。
そして「人の苦しみを楽しむ者もいる」というその表現が、治済という人物の輪郭を更に明確にする。
※写真はイメージ
それは例えばいじめであったり、性加害であったり、顔の見えない誹謗中傷であったり、相手を痛めつけることを目的とした卑劣な行為と根で繋がっている。
私たちがどこかで見て思わず目を逸らしてきたそれらの嫌悪感と、仲間由紀恵がどこまでも美しく艶やかに演じきった凶悪が重なって、未知の恐ろしさを創りだしたのである。
重苦しい展開の中、黒木(玉置玲央)と伊兵衛(岡本圭人)、そして黒木の妻になったるい(中村映里子)、そして黒木の息子・青史郎(塚尾桜雅)の場面でかろうじて和んだ。
ドラマでは息子の出生の場面は描かれなかったが、黒木が息子につけた青史郎という名は、青沼(村雨辰剛)にちなんでいる。
家斉が幼い頃に出会った青沼の姿、どこに飛ぶか分からないから不評だと源内が笑った竹とんぼ、そして対価など期待せずに文字の読めない村の女に源内が残した人痘接種の書き付け。
※写真はイメージ
家斉や黒木、伊兵衛が人痘接種という希望の灯火を再びともそうとする道のりの中で、目印のように出会う、今は亡き人の慈愛と献身の欠片が胸を熱くする。
闇のような悪意と閉ざされた権力に、真に抗えるものは何か。
その答えが描かれるのは次回である。
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[文・構成/grape編集部]
かな
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