可愛い表紙にダマされるな…『メイドインアビス』が描く”人間性の喪失”に震える【オダウエダ書評】
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画像提供:吉本興業株式会社

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2025年9月から、grapeではお笑いコンビ『オダウエダ』の植田紫帆さんとの連載企画がスタート!
漫画を愛してやまない植田さんによる選りすぐりの漫画を、毎月1作品ずつ紹介してもらいます。
第3回では、増村十七先生が描く『バクちゃん』を取り上げた、植田さん。
移民というテーマを柔らかなタッチで描く――『バクちゃん』主人公に、オダウエダ植田が共感
4回目となる今回は、同年8月時点でシリーズ累計2,200万部突破の、異色の冒険ファンタジー作品について語ります。
『メイドインアビス』をオダウエダ植田が紐解く【第4回書評】
漫画の世界には沢山の冒険譚があり、人類は大陸、海、空、宇宙と未知なる領域に夢を抱いてきました。
今回紹介する「メイドインアビス」は真下、地下へと挑むお話でございます。
Ⓒつくしあきひと/竹書房
可愛いキャラクターの表紙ですが大変な目に遭います。
同じく可愛い「バクちゃん」とはまた違った苦労をするお話です。
大地にぽっかりと空いた巨大な穴「アビス」。
未だこの奈落の底に辿り着いた者はおらず、人類最後の秘境と呼ばれている。
数多の探検家、探掘家たちはそこに眠る数多の未知の生物、そして人類へ新たな叡智や富をもたらす”遺物”、そしてロマンを手に入れる為、深淵に足を踏み入れるのでした。
Ⓒつくしあきひと/竹書房
大穴と聞くと暗くてジメジメして狭苦しいと思うかもしれませんが、つくしあきひと先生の描くアビスは、とても広大であり美麗でいて残酷です。
地上とはまた違った大自然と生態系が構成されています。
アビスは幾重にも層が分かれており、特殊な力場というのが存在している為、入り口よりも内部の方が広大で時間の進み方も全く異なっています。
深層になればなるほど深層の一年分が地上の何十年分と差が出ると言われています。
アビスにはもう一つ、地上にはない法則があります。
それが「上昇負荷」、またの名を「アビスの呪い」。
言ってしまえば、高山病のアビス版なのですがこの上昇負荷がこの大穴への冒険を過酷にしています。
一度深層に降りてしまえば、そこから地上まで登り帰ろうとすると心身にダメージが入るのです。
Ⓒつくしあきひと/竹書房
浅いとこから戻るぐらいならそれこそ高山病ほどの症状なのですが、深層四層、五層では重症重体ほどの命に関わるダメージ、六層では人間性の喪失もしくは死、七層からは確実な死が待っています。
アビスの世界観の説明だけでもワクワクしてしまいますよね!
知らない世界の知らないルールっていうのは心を沸き立ててくれます。
アビスの呪いは恐ろしい現象なのですが、それが物語の良いエッセンスとなっていて、「高山病より酷い症状もあんのん!?人間性の喪失って何!?早く読みたいやん!!」とそそらせてくれます。
人間性の喪失はそのあとわかるのですが、えげつないものでございました。
人間性の喪失とは、身体が溶けたり変形したり、意識もなくなったり知性が無くなり意思疎通が取れなくなり、化け物のような姿になることでした。
恐ろしすぎますっ!
人間性の喪失を受けた者の事をこの世界では”成れ果て”と呼んでいます。
Ⓒつくしあきひと/竹書房
さて。この「メイドインアビス」の主人公、大穴の淵の孤児院暮らしで探掘家を目指すリコは、この世界で数人しかいない「白笛」と呼ばれる伝説の探掘家の1人である母・ライザのようにアビスにあこがれていました。
リコは探掘中に、人間の少年の形をしたロボットを見つけ、レグと名付け共に過ごすようになります。
それからしばらく経ったある日、大穴からライザの探掘家の証である「白笛」と封書が地上に戻ってきました。
その封書には「奈落の底で待つ」と書かれた紙とレグによく似た絵が書かれた紙が入っていた。
Ⓒつくしあきひと/竹書房
生き別れた母に会いに行く為、リコとレグは前人未到のアビスの底へと向かうのでした。
冒険の始まりに相応しい血湧き肉躍る導入です!!
リコとレグ、そしてのちに2人が出会うウサギの獣人のような成れ果て・ナナチ、五層の前線基地に住むプルシュカ、四本の腕を持つ白いフワフワの姫・ファプタなどこのお話にも可愛いキャラクターが沢山出てきます。
彼らにも当然、アビスの脅威が降り注ぎます。
大穴の底に近づくにつれてみんな沢山傷付いていきます。
それでもアビスの真実を知るために歩みを止めないのが探掘家の矜持なのでしょう。
可愛い登場人物が酷い目に遭うのはつくしあきひと先生の性癖がでていると個人的には思ってます。「ちいかわ」もそう思います。
「メイドインアビス」で特に知って欲しいのは深層5層の前線基地にいるプルシュカの父、白笛の1人である”黎明卿”ことボンドルド卿です。
全身鎧姿で作中でも異様な雰囲気を纏っております。
Ⓒつくしあきひと/竹書房
マッドサイエンティストであり、紳士じみた物腰柔らかい態度でアビスの呪いを利用した狂気の実験を行うとんでもない人物です。
自分の子供にも恐ろしい事をするのですがそれに対してもより良い事をしているという自覚しかない為、白笛の中でも得体の知れない人物として評価されています。(それは本当でして、自分の命さえもアビスの研究の為、蔑ろにしていたのです)
是非、彼が何をしていたかはその目で確認してみてください。おやおや。
アビス、そこに住まう生物、探掘家たちさえもがリコ達にとって敵か味方か分からず、美しい景色なのにそこはかなくずっと緊張感が漂っている作品です。
それこそ自然そのものを描写しているのだと私は思います。
リコ達は冒険のまだまだ最中でございます。
皆さんも彼らに出会うために「メイドインアビス」の世界に一歩踏み入れてください。
きっと帰れなくなるぐらい夢中になると思いますよ。
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[文/植田紫帆 構成/grape編集部]