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移民というテーマを柔らかなタッチで描く――『バクちゃん』主人公に、オダウエダ植田が共感

By - grape編集部  公開:  更新:

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オダウエダ・植田紫帆さんの画像

画像提供:吉本興業株式会社

植田紫帆の写真

お笑いタレント

植田紫帆

お笑いコンビ『オダウエダ』でコント師として活躍。NTV『THE W 2021』優勝。

2025年9月から、grapeではお笑いコンビ『オダウエダ』の植田紫帆さんとの連載企画がスタート!

漫画を愛してやまない植田さんによる選りすぐりの漫画を、毎月1作品ずつ紹介してもらいます。

第2回は、まるよのかもめ先生の『ドカ食いダイスキ! もちづきさん』について熱く語った、植田さん。

今回書評するのは、移民をテーマに描く漫画です。

オダウエダ・植田紫帆さんの画像

画像提供:吉本興業株式会社

【第3回】移民の困難を描く『バクちゃん』をオダウエダ植田が書評

私は普段、渋谷にある吉本の劇場に通ってます。

駅から劇場に向かう途中の街並みには、コロナを乗り越え、人が戻って来てまして安心する気持ちと「もう少し人が少なくてもええんやで」なんて思ったりしてます。

インバウンドの影響で外国人の方はむしろ以前よりも沢山見かけるようになりました。

劇場の最寄りのコンビニの店員さんは全員外国人の方になりましたし、お客さんだって外国人の方ばかりです。

いつかこの広い宇宙で、もし宇宙人なんかが見つかったりしたら、渋谷も宇宙人で溢れたりするんでしょうか。

今回はそんな漫画です。

増村十七先生の『バクちゃん』

漫画『バクちゃん』の書影画像

(C)増村十七/KADOKAWA

『夢』を食べるバク星人が住むバク星。

バク星では年々『夢』が枯渇しており、バク星人のバクちゃんは故郷を離れ、地球の日本に1人で移住する近未来SFダイバーシティなお話。

可愛いバクちゃんが日本で色んな問題にぶつかっていくという展開で、増村先生の柔らかなタッチで描かれているので一見ほのぼのとした日常系漫画かと思ってしまいますが、内容は移民がテーマです。

漫画『バクちゃん』の画像

(C)増村十七/KADOKAWA

なかなか重いテーマを増村先生は絵本のような読み口で我々に描いてくれているので、移民について全く知らなかった私でもとても読みやすかったです。

バクちゃんは地球単位だと子供ぐらいだと思うのですが、多分バク星では成人に該当するのか、生活をするために必要なあれこれをご両親無しでバクちゃん自身で対応していかないといけないらしく、「地球にロケットでピューンと飛んで来て、はい完了」ではないんですよね。

区役所にいき、口座をつくり、家を探し、仕事を探す、といった現実の移住に必要な細かい手続きが描写されているのです。

区役所にたらい回しにされた挙句、口座が作れず、口座が作れないからケータイが買えないバクちゃんの姿をみて、めんどうくささと苛立ちに共感せざるを得ませんでした。

漫画『バクちゃん』の画像

(C)増村十七/KADOKAWA

大阪から東京に引っ越してきただけであんなにストレスフルな作業に苛まれ、色々な国の施設に行ってはうまくいかずに髪の毛を掻きむしることになるとは思わなかったので、移民となると比にならないわけでして。

私たちが普段何気なく自分が自分であると証明するものは0から作ろうとなるとめちゃくちゃ大変なんですね。

色んな場所をたらい回しにされてるバクちゃんをみて「バクちゃんしんどいよなぁ」と心に寄り添ってあげたくなるのです。

バクちゃんはこの地球に1人で生きていかなくてはならなくなるのですが、孤独ではありませんでした。

ひょんなことからバクちゃんと暮らすことになった地球の日本人・ハナちゃんや、バクちゃんが日本にきた理由でもある、大学に勤めるバクちゃんの親戚のおじさん。

移民センターやバイト先で出会う宇宙人たちなど、バクちゃんを助けてくれる人たちが出てくるのですが、その中でも宇宙人の方が職に就く大変さを描いているシーンが印象的です。

移民センターでバクちゃんが勉強をしている時に、その建物で清掃の仕事をやっているサリーさんという宇宙人さんと仲良くなるシーン。

漫画『バクちゃん』の画像

(C)増村十七/KADOKAWA

サリーさんがこけてしまった時にバクちゃんが清掃の仕事を代わりにやるよ、と言うのですが、「バクちゃんがやったら私の仕事がなくなる。移民は仕事が大切。仕事がないと私は困るからね」とカタコトの言葉でサリーさんは伝えます。

バクちゃんは「じゃあ休憩しよう」とサリーさんとお茶を飲みながらお話しします。

バクちゃんは優しいですね。

途中でサリーさんの星の話になるのですが、「自分の星はすでに無くなってしまって家族で地球に移り住みなんとか生活できてる」とサリーさんは語ってくれます。

バクちゃんが「地球は好き?」と聞くと「ノーチョイス(選択肢ないよ)」とサリーさんは答えるのでした。

漫画『バクちゃん』の画像

(C)増村十七/KADOKAWA

この国にやってきた外国人の方の中には、必ずしも自分たちで選んでここにきたわけじゃない事もこのシーンを読んで学びました。

ここしかなく、ここで生きるしかない。

この星に生きるみんながどこで生きることになったって幸せで生きられるよう頑張る、そんな心温かな漫画です。

他にも様々な移民の方が抱える困難を、バクちゃんを通して是非この機会に知ってみてください。

あとバク星人って実は大人になると地球人の姿になれるそうで、こういうのも漫画好きの心をくすぐってくれます。

親戚のおじさんがめっちゃかっこいいです。

バクちゃんはまだ子供なので人間の姿にはなれないのですが多分イケメンっぽいですね。

先生、資料集を出される時はご一筆お願いします!


[文/植田紫帆 構成/grape編集部]

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