「これは残す」と父が選んだ写真とは? 『今』を生きる尊さを考える
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吉元由美の『ひと・もの・こと』
作詞家でもあり、エッセイストでもある吉元由美さんが、日常に関わる『ひと・もの・こと』を徒然なるままに連載。
たまたま出会った人のちょっとした言動から親友のエピソード、取材などの途中で出会った気になる物から愛用品、そして日常話から気になる時事ニュースなど…さまざまな『ひと・もの・こと』に関するトピックを吉元流でお届けします。
父の中に流れている時間を思う
高齢の父が施設に入ることになり、住んでいたマンションを引き払うことになりました。
一人暮らしの部屋だったとはいえ、家具一式から細々としたものまで、『暮らす』にはこんなにも多くのものを必要とするのかと痛感しました。
処分するもの、手元にとっておきたいもの。
紙袋にいっぱいの大量の白黒の写真、手のひらほどの小さな写真、そこには子どもの頃の父や母、そして祖母、会ったことのない祖父がいます。
出征する兄を囲んでの家族写真、中学生の父はボロボロの運動靴を履いています。
両親の新婚時代、父はキリッと笑顔もないですが、母の柔らかい笑顔は希望を語っているようで何だかせつない気持ちになるのでした。
そんな片付けの中で検討しなくてはならなくなったのが仏壇です。
父の施設の部屋に置くには大きすぎるので、どちらにしても処分しなくてはならない。
どのようにお位牌を祀るか。
小さな仏壇にしたらいいのではないかと父が言うので、仏具屋さんに行きました。
このくらいでいいんじゃないか、と父が選んだコンパクトな仏壇を注文したのですが…。
私は内心、父の部屋に仏壇を置くのはどうなのだろう、と思っていたのです。
母のお位牌と写真を棚の上に置くだけでいいのではないかと。
そして注文した仏壇が届くという頃、父は部屋に置きたくないと言い出しました。
もうすぐ自分はここに入るのだと思いながら過ごしたくないと。やはり。そう思うだろうと想像していました。
父は、私には想像できないような時間を生きているのです。
ただ本を読んで過ぎていった一日の重さを、父は人生に刻んでいるのだと思います。
自分がどのように年を重ねていくのか。
10年後、20年後の自分はどうなっているのだろう。
そんな想像は、もう絵空事ではなくなってきました。
街を歩いている高齢の人たちにも子どもの頃があり、青春があり、人生の物語を紡ぎながら今を生きている。
私もいつか、今の自分を懐かしく思う時が来るのでしょう。
矍鑠としていても、体が不自由になっていたとしても、想像していなかった年を重ねた誰もが『今』を生きているのでしょう。その尊さを思うと頭が下がります。
父が、「これは残しておこう」と言った写真の多くが新婚時代や元気な頃の母の写真でした。
父とまだ3歳くらいの妹が写っている写真があり、
「これ、誰だかわかる?」
と妹が自分を指して尋ねると、
「誰だろう、わからないなあ」
と。あらら、と思いましたが、悲しくもせつなくもなかった。
父の中に流れている時間を愛しく思った瞬間でした。
いのちを紡ぐ言葉たち かけがえのないこの世界で
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※記事中の写真はすべてイメージ
作詞家・吉元由美の連載『ひと・もの・こと』バックナンバー
[文・構成/吉元由美]
吉元由美
作詞家、作家。作詞家生活30年で1000曲の詞を書く。これまでに杏里、田原俊彦、松田聖子、中山美穂、山本達彦、石丸幹二、加山雄三など多くのアーティストの作品を手掛ける。平原綾香の『Jupiter』はミリオンヒットとなる。現在は「魂が喜ぶように生きよう」をテーマに、「吉元由美のLIFE ARTIST ACADEMY」プロジェクトを発信。
⇒ 吉元由美オフィシャルサイト
⇒ 吉元由美Facebookページ
⇒ 単行本「大人の結婚」