息苦しさが残るこの世界の中で思うのは、「言葉にして気持ちを伝えることの大切さ」
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吉元由美の『ひと・もの・こと』
作詞家でもあり、エッセイストでもある吉元由美さんが、日常に関わる『ひと・もの・こと』を徒然なるままに連載。
たまたま出会った人のちょっとした言動から親友のエピソード、取材などの途中で出会った気になる物から愛用品、そして日常話から気になる時事ニュースなど…さまざまな『ひと・もの・こと』に関するトピックを吉元流でお届けします。
素直な気持ちを言葉にのせて
マスクを手放せなくなって3年。野外ではマスクを外すよう厚生省からお知らせがありましたが、まだほとんどの人がマスクをして歩いています。
コロナ禍が始まった頃は異様な光景でしたが、いまではすっかり日常です。
やはり顔の下半分を隠してしまうと、表情がわかりません。見様によっては怒っているようにも、無感情のようにも見えます。
すると街全体がどこか殺伐とした雰囲気に包まれます。
目は口ほどにものを言う……と言葉の通り、目には感情が現れるものです。表情も『言葉』であり自分の『表現』なのですね。
マスクをしていても口角をあげていると、目の表情が柔らかくなります。
少しでも和らげることができたら……と思い、マスクをつけながら写真を撮るときに優しい気持ちで、口角をしっかり上げたのですが、表情のない写真になってしまいました。
表情力とでも言うのでしょうか、私の力不足なのかもしれませんが。
まだまだ息苦しさが残るこの世界の中で思うのは、いつにも増して気持ちを伝えることの大切さです。
この3年の間で、リモートでの仕事、コミュニケーションの便利さを知りました。家にいながら仕事も、打ち合わせもできる。セミナーにも参加できる。
確かに便利なのですが、リモートで講座をするときには、いまひとつもどかしさを感じます。
人が集まる『場』はエネルギーです。『気』という表現がわかりやすいでしょうか。いい雰囲気になったり、気まずいムードになったりするものです。
リアルで面と向かっていると、表情や雰囲気から相手の気持ちなどを受け取りやすい。しかし画面を通してとなると、受け取りづらいことがあります。
ですから、リモートの場合はいつもよりも声かけをし、お互いに意思の疎通を図ることが大切になります。
言葉にして気持ちを伝える。それは決して大袈裟なことではなく、感謝の気持ち、うれしさ、楽しさ、つらさ、淋しさ……日常の中で私たちの心の中に湧き上がる気持ちに素直に向き合うことでもあるのです。
作詞を手掛けたあるアーティストのCDを聴きながら、この曲を書いたとき愛しかなかったなあ、と思いだしだしたことがありました。
そのアーティストが輝ける歌を書く。自分の仕事への熱さではなく、アーティストへ思いをこめて書いたこと。
先日、ご本人にその気持ちを伝えると「私も歌うときに胸がいっぱいになる」と言われました。伝えてよかった。
私たちの間の水路に、豊かな流れができたような気がしました。
お店で、レストランで、仕事場で感謝を伝える。友達、家族の中で素直に交流する。
息苦しい時期を脱したとき、この交流はさらにあたたかいものになるのではないか。そう時代が進化しますように。
私たち一人ひとりが、進化の担い手なのです。
※記事中の写真はすべてイメージ
作詞家・吉元由美の連載『ひと・もの・こと』バックナンバー
[文・構成/吉元由美]
吉元由美
作詞家、作家。作詞家生活30年で1000曲の詞を書く。これまでに杏里、田原俊彦、松田聖子、中山美穂、山本達彦、石丸幹二、加山雄三など多くのアーティストの作品を手掛ける。平原綾香の『Jupiter』はミリオンヒットとなる。現在は「魂が喜ぶように生きよう」をテーマに、「吉元由美のLIFE ARTIST ACADEMY」プロジェクトを発信。
⇒ 吉元由美オフィシャルサイト
⇒ 吉元由美Facebookページ
⇒ 単行本「大人の結婚」