愛犬が亡くなって1年 『見えないもの』を見ようとする
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吉元由美の『ひと・もの・こと』
作詞家でもあり、エッセイストでもある吉元由美さんが、日常に関わる『ひと・もの・こと』を徒然なるままに連載。
たまたま出会った人のちょっとした言動から親友のエピソード、取材などの途中で出会った気になる物から愛用品、そして日常話から気になる時事ニュースなど…さまざまな『ひと・もの・こと』に関するトピックを吉元流でお届けします。
見えないものを見ようとすると
1年前、15年間一緒に暮らしたトイプードルのラニが亡くなる前、三つの「はっ」とすることがありました。
ひとつ目は、ラニのご飯を入れるボウルを割ってしまったこと。洗うときに手が滑り割ってしまったとき、とても嫌な気持ちがしたのです。
(もう必要なくなってしまうのだろうか)いろいろな思いが胸の中をめぐります。引き寄せないように「ダメダメ」と打ち消そうとすればするほど、今の現実がリアルに迫ってくるのです。
二つ目は、寝室の小さな電球が切れたので、ラニを連れてご近所の電気屋さんに行ったときのこと。夜中にラニが目が覚めても大丈夫なように、小さな電気をつけるようにしていたのです。
昔ながらの電気屋さん、お母さんはとても明るく気さくな人で、買い物に行くとお茶を出してくれます。わんこが大好きで、そんな他愛もない話に優しい気持ちになれるのです。
私たちと入れ違いでおじさんが出て行ったのですが、キャリーカートの中で眠っているラニのカートを覗き込み、
「犬か? 死んでんのか?」
と言ったのです。悪意などないことはわかっていても、悲しかった。それから二日後に、逝ってしまいました。
そして三つ目は、その電球を付け替える間がなかったこと。これらは『虫のしらせ』だったのかもしれません。
亡くなって1年が経とうとしている今も、見えないラニが私の前を歩いているのをイメージしながら歩きます。
トコトコと、ルンルンと小さな体をうれしそうに揺らしながら歩いている。見えるはずのないモコモコの背中を、何もない空間から引っ張り出すように見ようとする。
左手で握りこぶしを作り、右手でそっと包み込む。ちょうどラニの頭くらいの大きさで、関節のゴツゴツはあるものの、くるくると手のひらでその大きさを思い出すように確かめる。
見えないものを見ようとし、触れられないものに触れようとする。それが慰めになるのかわからないのですが、喪の仕事のひとつなのだと思います。
私からは見えなくても、向こうからは見えているのかもしれません。悲しんでばかりいるママのことは心配になるでしょう。
以前、ほんの一瞬、姿を現してくれることがあったのです。ふわっとした背中が祭壇の横に。先日、写真を見て泣きそうになっていたとき、私の横をラニの毛の色をした影がソファから飛び降りたのです。
一瞬のこと、目の錯覚かもしれない。でも、このような『見えないもの』を受け取ることを、今は許されているような気がします。
心の目で見る。
「大切なものは目に見えない」
サン・テグジュペリの『星の王子さま』で語られたこの言葉が胸にしみます。
いのちを紡ぐ言葉たち かけがえのないこの世界で
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※記事中の写真はすべてイメージ
作詞家・吉元由美の連載『ひと・もの・こと』バックナンバー
[文・構成/吉元由美]
吉元由美
作詞家、作家。作詞家生活30年で1000曲の詞を書く。これまでに杏里、田原俊彦、松田聖子、中山美穂、山本達彦、石丸幹二、加山雄三など多くのアーティストの作品を手掛ける。平原綾香の『Jupiter』はミリオンヒットとなる。現在は「魂が喜ぶように生きよう」をテーマに、「吉元由美のLIFE ARTIST ACADEMY」プロジェクトを発信。
⇒ 吉元由美オフィシャルサイト
⇒ 吉元由美Facebookページ
⇒ 単行本「大人の結婚」