ペットたちは、人間に愛すること、慈しむことを教えてくれる存在でもある
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吉元由美の『ひと・もの・こと』
作詞家でもあり、エッセイストでもある吉元由美さんが、日常に関わる『ひと・もの・こと』を徒然なるままに連載。
たまたま出会った人のちょっとした言動から親友のエピソード、取材などの途中で出会った気になる物から愛用品、そして日常話から気になる時事ニュースなど…さまざまな『ひと・もの・こと』に関するトピックを吉元流でお届けします。
ペットショップの子犬たちに思う
うっかりペットショップに入ってしまいました。
2段のショーケースがずらりと並び、その中で子犬たちがぐるぐると歩き回ったり、ぴょんぴょんと跳ねていたり。お座りをしたままじっとしている子がいたり。
子犬の匂いがしました。胸の奥をぎゅうっと掴まれるような思いがし、恐々と中に入っていきました。
15年、一緒に暮らしたトイプードルのラニが逝ってしまって、もうすぐ1年になります。
腎臓が弱っていた最後の半年は、少しでもご飯を食べさせることと、西洋医学、ホリスティックなアプローチを施すこと、そして血液検査の結果に一喜一憂する日々でした。
腎臓の機能が低下すると慢性的に吐き気があるために、ご飯を食べたくても食べられなくなるのです。指に高栄養ジェルをつけて舐めさせたり、柔らかくしたご飯をシリンジであげたり。
5年日記をつけているのですが、去年の今頃に書いているのは、ラニの体調のこと、カートに乗せて散歩した時に見た桜や花水木がきれいだったこと、風の気持ちよさ、抱っこした時に触れたラニの痩せた体のこと……。
ラニのいない1年という時間、そしてこれからずっとその時間を積み重ねていくと思うと、眠りかけた喪失感がまた目覚めるのです。
旅立つ準備を始めたんだなあ、と思った夜、絶対に寝てはいけないと思い、一晩中抱っこしていました。
よろよろと、倒れながらも自力でトイレに行こうとする姿に、本当に別れが近づいていることを思いました。そして、朝が来て、昼が過ぎた頃、最後に私の顔をパッと見上げて、逝ってしまいました。
ものすごく悲しいのですが、ラニは愛すること、ただただ愛することを教えてくれました。ペットたちは、人間に愛すること、慈しむことを教えてくれる存在でもあるのです。
ペットショップの子犬たちは、みんな生まれて2ヶ月くらいです。生まれて3ヶ月は母犬やきょうだいたちと触れ合うことが、犬の体や社会性を育むために必要だと考えられています。
この子たちの親たちは、おそらく『繁殖犬』と呼ばれている犬たちなのでしょう。母親のぬくもりを十分に味わう前に、販売されるために連れてこられたのかもしれません。
ペットを失くした喪失感や悲しみを癒すのには、また新しい子を迎えることがいいと言われます。その決心はまだつかないのですが、つい保護犬サイトを見てしまいます。
保護犬ですからかわいそうな境遇の子たちばかりで、中でも繁殖犬だった子たちは散歩をしたこともおやつをもらうこともなく、体がボロボロになるまで出産を繰り返した子たちが多いのです。
残酷なことです。これは虐待の域だと思うのですが、日本の法律がこれを許しているのは腹立たしくてなりません。
ペットショップの子犬の匂い。ラニは3ヶ月お母さんと過ごしてから、我が家にやってきました。
子犬のラニの匂い。抱っこした時の壊れてしまいそうな小さな体を今もよく覚えています。この命を大切に守ろう。愛しさしかないのです。
ここから出して出して!と言わんばかりにぴょんぴょん跳ねる子犬たち1匹1匹に(しあわせになるのよ)と祈るように話しかけ、泣いてしまう前に店を出ました。
ペットに限らず、動物たちを守る法整備がなされることを強く願います。
いのちを紡ぐ言葉たち かけがえのないこの世界で
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※記事中の写真はすべてイメージ
作詞家・吉元由美の連載『ひと・もの・こと』バックナンバー
[文・構成/吉元由美]
吉元由美
作詞家、作家。作詞家生活30年で1000曲の詞を書く。これまでに杏里、田原俊彦、松田聖子、中山美穂、山本達彦、石丸幹二、加山雄三など多くのアーティストの作品を手掛ける。平原綾香の『Jupiter』はミリオンヒットとなる。現在は「魂が喜ぶように生きよう」をテーマに、「吉元由美のLIFE ARTIST ACADEMY」プロジェクトを発信。
⇒ 吉元由美オフィシャルサイト
⇒ 吉元由美Facebookページ
⇒ 単行本「大人の結婚」