思い出深い旅も「案外覚えてない」ことに気づいた… 記録していたから出会えた記憶
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「似合ってるね」っていわれると嬉しい!褒め合う習慣がつくる心地よいコミュニケーション吉元由美の『ひと・もの・こと』 作詞家でもあり、エッセイストでもある吉元由美さんが、日常に関わる『ひと・もの・こと』を徒然なるままに連載。 たまたま出会った人のちょっとした言動から親友のエピソード、取材などの途中で出会っ...

先生「あの頃と同じ顔してるな」再会は時を超え、守られて育ったありがたさを思い出させてくれる吉元由美の『ひと・もの・こと』 作詞家でもあり、エッセイストでもある吉元由美さんが、日常に関わる『ひと・もの・こと』を徒然なるままに連載。 たまたま出会った人のちょっとした言動から親友のエピソード、取材などの途中で出会っ...
吉元由美の『ひと・もの・こと』
作詞家でもあり、エッセイストでもある吉元由美さんが、日常に関わる『ひと・もの・こと』を徒然なるままに連載。
たまたま出会った人のちょっとした言動から親友のエピソード、取材などの途中で出会った気になる物から愛用品、そして日常話から気になる時事ニュースなど…さまざまな『ひと・もの・こと』に関するトピックを吉元流でお届けします。
そうだ。どこへ行こう?
「世界地図を拡げる。テレビで見知らぬ光景に出会う。
雑誌で見た異国の写真が心から離れられなくなる。
いつか行ってみたいと憧れをつのらせている国がある。
ふっと日常の場面を変えてみたくなる。
そうだ。旅に出よう。JRのキャンペーンのコピーのようだけれど、たぶん旅はそんな偶然性と必然性の上に成り立っていくものだと思う。
そう思った時から私は旅人になる。飛行機やホテルの予約をする時から、私の旅は始まっている。
それは、コンサートの幕が開く前の音合わせのように、微妙に心地よい不調和から調和へと移りゆくプロセスに似ている」
これは、1997年に書いた『天使ホテル〜ときめきの旅ローマ』のプロローグの冒頭です。
久しぶりに…おそらく20年以上ぶりにこの本を開きました。
自分で書いた文章ながら、旅心を誘われました。むしょうにどこかへ行きたくなりました。
このところ、旅についての本ばかり読んでいます。
時折襲われるどこかへ行きたい病。
長く、厳しい暑さの夏からやっと秋の気候になり、外に出る気分になってきました。
今年のあの猛暑では(どこへ行っても暑いだろう)という半ば絶望的な予測しかできず、引きこもり。
毎日、ここなら3泊できる、この時期なら4泊は行ける、とスケジュール表を見るのですが、行きたいところが決まらない。
海か山か街か。海なら沖縄まで行きたい。山は熊が怖い。街は疲れそう。
決められないということは、本当に行きたいと思っていないのか。
旅に対していつのまにか優柔不断になってしまいました。
20代、30代と、長旅に出るときはほとんどひとりでした。
この2週間は絶対に旅に出る!と決めて、仕事を頑張れたものでした。
そして飛行機に乗って、シートベルトを締めた瞬間の、あのとてつもない解放感。
飛行機代が安い冬にヨーロッパへ行くことが多かったのですが、グレイの寒空の下、孤独を感じながら歩いたあの旅の豊かさを忘れることはできません。
ひとり旅は淋しくないかとよく聞かれましたが、私は自分自身と一緒でした。
淋しさは、自分を見つめる扉でもあるのです。
そんなひとり旅をしていた頃に書いた『天使ホテル〜ときめきの旅ローマ』を読み返してみると、まるで他人の旅行記を読んでいるような気がします。
ざっくりとは記憶していても、ディテイルはごっそりと記憶から抜け落ちている。
驚いたのは、行きの飛行機が同じだった日本人の『あゆみさん』と地下鉄の駅で偶然に会い、食事をしたこと、まったく覚えていないし、思い出せないのです。
幸運にもこのローマ滞在は『本』という形で残りました。
写真だけでなく旅日記、旅の記録を詳しく記すことをお勧めします。
どんなに思い出深い旅であっても、忘れていくのです。
そのときにしか感じられなかったこと、味わえなかったことを思い出すことが、新たな旅の始まりになる。
まずは、今の『どこかへ行きたい病』を完治すべく、地図帳を開くところから始めましょうか。
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作詞家・吉元由美の連載『ひと・もの・こと』バックナンバー
※記事中の写真はすべてイメージ
[文/吉元由美 構成/grape編集部]