ツイッターから歌が生まれる オノ・ヨーコさんの一行の哲学
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吉元由美の『ひと・もの・こと』
作詞家でもあり、エッセイストでもある吉元由美さんが、日常に関わる『ひと・もの・こと』を徒然なるままに連載。
たまたま出会った人のちょっとした言動から親友のエピソード、取材などの途中で出会った気になる物から愛用品、そして日常話から気になる時事ニュースなど…さまざまな『ひと・もの・こと』に関するトピックを吉元流でお届けします。
ツイッターの一行から歌が生まれる
「感情を持つ人間であることを嘆きたくなるほど、ある人を愛してしまいました。私はいったいどうしたらいいでしょうか?」
「まず、鏡を見て、自分を愛することに努力をしてください」
オノ・ヨーコさんのツイッターに寄せられた質問に、ヨーコさんが答えたものです。他人を愛することは、自分を愛すること。自分中心の愛でも、自己愛でもない。自分の弱さも情けなさも受け入れて愛することができたとき、相手の弱さを受け入れることができ、「ただただ愛する」という境地に至るのでしょう。深い答えです。
この4月から音楽大学で作詩基礎研究という授業を担当することになり、1年をかけて「歌詞を書く」ことを伝えていきます。歌詞が普通の文章と決定的に違うのは、音数が決まっているということ。音数に合わせてパズルのように言葉をはめます。
そのような基礎的なことと共に、「何を書くか」「何を伝えたいか」を考える力を、学生たちにつけてもらいたい。教える立場として、ここをどう伝えるかが大きなポイントです。
作詞家はそれぞれに書くスタイルを持っています。これはあくまで私のスタイルなのですが、アイドルの歌詞であっても、戦隊モノの歌詞であっても、一行、二行、大切なこと…(あ、そうか、そうよね)と胸の底に落ちるようなメッセージを織り込みたいのです。そのためには、物事を深く考察すること、心の深いレベルで感じ取ることが必要なのです。
「感情を持つ人間であることを嘆きたくなるほど、ある人を愛してしまいました」
オノ・ヨーコさんに投げかけたこの質問は、そのまま歌のテーマになります。感情を持つ人間であることを嘆きたくなるほど…愛した相手はどんな人でしょうか。
もしかしたら、結ばれることが叶わない相手かもしれません。ヨーコさんはまず自分を愛するように、とアドバイスします。誰かを愛することと自分を愛することは同じこと。たった一行のアドバイスにも、深い示唆があります。
この質問者は、あらゆる感情を激しく味わっているのでしょう。愛する喜びもあれば、苦しみもある。多分、孤独の底に突き落とされているような気持ちになるときもあるでしょう。その感情の揺れをどのように歌詞で表現するか。愛するとはどういうことか。そこを深めていき、ある種のセオリーを見つけるのです。
結ばれない恋の歌詞をいくつも書きました。杏里に書いた『さよならシングル・デイズ』の中の「自分を愛するようにあなたを愛していくわ」という一行は、30数年経った今でも「愛する」ことへの示唆になっています。
考えを深めるきっかけは日常の中にあります。オノ・ヨーコさんのツイッター、一行の哲学。学生たちに投げかけたらどんな意見が出るでしょうか。そこから歌詞の世界が広がるのです。
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作詞家・吉元由美の連載『ひと・もの・こと』バックナンバー
[文・構成/吉元由美]
吉元由美
作詞家、作家。作詞家生活30年で1000曲の詞を書く。これまでに杏里、田原俊彦、松田聖子、中山美穂、山本達彦、石丸幹二、加山雄三など多くのアーティストの作品を手掛ける。平原綾香の『Jupiter』はミリオンヒットとなる。現在は「魂が喜ぶように生きよう」をテーマに、「吉元由美のLIFE ARTIST ACADEMY」プロジェクトを発信。
⇒ 吉元由美オフィシャルサイト
⇒ 吉元由美Facebookページ
⇒ 単行本「大人の結婚」