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なぜ、つい『失言』をしてしまうの? 言葉の使いかたを考えさせられる

By - 吉元 由美  公開:  更新:

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吉元由美の『ひと・もの・こと』

作詞家でもあり、エッセイストでもある吉元由美さんが、日常に関わる『ひと・もの・こと』を徒然なるままに連載。

たまたま出会った人のちょっとした言動から親友のエピソード、取材などの途中で出会った気になる物から愛用品、そして日常話から気になる時事ニュースなど…さまざまな『ひと・もの・こと』に関するトピックを吉元流でお届けします。

失言ポロリ

他意はない。傷つけるつもりも、嫌味などを言うつもりも一切ない。なのに、ポロリと失言。ノリで口が滑ってしまったり、ジョークのつもりだったり…でも、相手にとってはジョークになっていなかったり。悪気はないのに、人は時々不用意なことを口にしてしまうものです。

私が記憶しているいちばん古い失言は、小学生の頃のことでした。両親の親しい家族が遊びに来たとき、大人の会話に混ざって話をしていたとき、つい口を滑らせてしまったのです。

「ひとりっ子ってわがままなんでしょう?」

兄弟姉妹の話になったとき、前に誰かが話していたのを聞きかじっていた私は、生意気にもこんなことを言いました。そのご家族、一人娘さんだったのです。一般論のつもりで話したところが、一般論にならなかった。

小学生とはいえ、口にした途端に(やってしまった!)と後悔しました。自分がとても恥ずかしかったことをよく覚えています。あのときの感覚は、今でも小さな粒のようにどこかに残っていて、思い出すたびに心が冷やっとするのです。

「つい…」の怖さ。一度口にした言葉は決して消えない。長い時間が経っても、私が覚えているように、言われた方は余計忘れることはできないでしょう。

私の著書を読んでくれたある友人、読んだことを私に伝えたかったのだろうと思います。

「由美の本、この前読んだわよ」

そう言われるとうれしいものです。ありがとう、と伝えると、ピリオドを打つような感じのひと言が…。

「図書館で借りて」

あ、読んでくれてありがとう。それしか言えません。もちろん、ありがたい。でも、図書館で借りて読んだとしても、それは著者に言わなくてもいいのではないか。同じように、こんなことも。

「◯◯の新曲、聞いたよ、YouTubeで」

「この前、由美の本を見つけたよ、ブックファーストで」

正直さが、つい口を滑らせてしまう。そういうことなのだと思います。わざわざ言わなくてもいいはず。伝えたいことは見たり、聞いたり、読んだりしたことのはずです。それだけに、残念な感じがするのです。

例えば、「どちらか、好きな方を選んで」と聞かれたとき、「これでいい」という答えと「これがいい」という答え…そこには大きな違いがあります。まったく妥協したつもりはなくても、ついポロリと「これで…」と言ってしまうことがあります。

言葉は繊細なものです。助詞ひとつの使い方で、『気持ち』が違ってくる。言葉は私たちにとって日常的なものだからこそ、言葉に意識的であることが大切です。

おもんぱかる」こと。想像力を働かせること。相手の立場になって考えること。失言ポロリに気づくこと…。言葉は、心と共に伝わるもの。言葉の先にいる人を思いながら、伝えるものなのですね。

※記事中の写真はすべてイメージ

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[文・構成/吉元由美]

吉元由美

作詞家、作家。作詞家生活30年で1000曲の詞を書く。これまでに杏里、田原俊彦、松田聖子、中山美穂、山本達彦、石丸幹二、加山雄三など多くのアーティストの作品を手掛ける。平原綾香の『Jupiter』はミリオンヒットとなる。現在は「魂が喜ぶように生きよう」をテーマに、「吉元由美のLIFE ARTIST ACADEMY」プロジェクトを発信。
吉元由美オフィシャルサイト
吉元由美Facebookページ
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