「自分らしい人生」という物語をつくっていくことの大切さ By - 吉元 由美 公開:2019-11-03 更新:2019-11-03 エッセイ吉元由美 Share Post LINE はてな コメント 吉元由美の『ひと・もの・こと』 作詞家でもあり、エッセイストでもある吉元由美さんが、日常に関わる『ひと・もの・こと』を徒然なるままに連載。 たまたま出会った人のちょっとした言動から親友のエピソード、取材などの途中で出会った気になる物から愛用品、そして日常話から気になる時事ニュースなど…さまざまな『ひと・もの・こと』に関するトピックを吉元流でお届けします。 私たちがつくる二つの物語 「もしもあのとき…していれば」 過ぎ去った過去を思い出すとき、何度となくこの思いがよぎることがあります。「もしもあのとき…」と紐解いていくと、限りない人生の可能性があることに気づきます。 日々、この瞬間は選択の連続です。コーヒーにしようか、紅茶にしようか。これも人生の選択。この人と結婚するかしないか。これも選択のひとつです。その時々に何を選んでいくか。人生の方向性を決めるのは、その時々の選択にかかっています。これが、現実に創造する自分の物語になります。 それともうひとつ、私たちが乗り越えていくために創る物語があります。臨床心理学者の河合隼雄先生は、生きるためには物語が必要であると説いています。生きていく上で、どうしても受け入れがたいことに遭遇します。最も受け入れがたいことは、大切な人の死でしょう。河合隼雄先生は著書の中でこのように述べています。 「なぜ死んだのか」と問われ、「出血多量です」と答えても無意味なのである。その恐怖や悲しみを受け入れるために、物語が必要になってくる。死に続く生、無の中の有を思い描くこと、つまり物語ることによってようやく、死の存在と折り合いをつけられる。 『生きるとは、自分の物語をつくること』新潮文庫 ーより引用 4年前、仕事仲間でもあった大好きな友人が癌で亡くなりました。彼女の死を私はどうしても受け入れることができなかった。胃腸の動きが止まってしまい、私は本当に食べ物が喉を通らなくなってしまったのです。でも、長い髪を美しく巻き、ステージに立つときと同じように美しくお化粧が施された棺の中の彼女を見たときに、少し受け入れることができたのです。 持って生まれた才能を生かして仕事をし、多くの人に感動を与え、多くの人に愛されて、多くの人を愛した彼女の人生は、傷ついたこともたくさんあったかもしれないけれど幸せだったのではないか…。 本人がどう思っていたのか、それを確かめる術はもうありません。でも、私の中で湧き上がってきたこの思いは、私を救ってくれたのです。これこそが、乗り越えるための物語です。「癌で亡くなってしまった」という現実だけでは、人は悲しみを越えることはできない。その人の人生と、自分の人生が触れ合う物語に思いを馳せたときに見えてくる景色があるのです。 日常の中で起こるシンクロニシティも物語を生みます。(これは大丈夫!と言われているサイン)(頑張って、というエールなのだ)と思うことで、力づけられることがあります。 選択することで作っていく現実の物語。そして、心を支える物語と。二つの物語を味わうことで、自分らしい人生という物語をつくっていく。年齢を重ねるほどに、その大切さをじわじわと感じるのです。 ※記事中の写真はすべてイメージ エレガントな終活~50歳から、もっと幸せになる~ エレガントな終活~50歳から、もっと幸せになる~吉元 由美1,394円(12/21 22:05時点)Amazon楽天市場YahooAmazonの情報を掲載しています 作詞家・吉元由美の連載『ひと・もの・こと』バックナンバー [文・構成/吉元由美] 吉元由美 作詞家、作家。作詞家生活30年で1000曲の詞を書く。これまでに杏里、田原俊彦、松田聖子、中山美穂、山本達彦、石丸幹二、加山雄三など多くのアーティストの作品を手掛ける。平原綾香の『Jupiter』はミリオンヒットとなる。現在は「魂が喜ぶように生きよう」をテーマに、「吉元由美のLIFE ARTIST ACADEMY」プロジェクトを発信。 ⇒ 吉元由美オフィシャルサイト ⇒ 吉元由美Facebookページ ⇒ 単行本「大人の結婚」 快挙を成し遂げた狩野英孝、帰国便の搭乗券をよく見ると… 「さすがJAL」の声ホノルルマラソンから帰国する狩野英孝さんに、JALが用意したサプライズとは…。 ロケで出会う人を「お母さん」と呼ぶのは気になる ウイカが決めている呼び方とは?タレントがロケで街中の人を呼ぶ時の「お母さん」「お父さん」に違和感…。ファーストサマーウイカさんが実践している呼び方とは。 Share Post LINE はてな コメント
吉元由美の『ひと・もの・こと』
作詞家でもあり、エッセイストでもある吉元由美さんが、日常に関わる『ひと・もの・こと』を徒然なるままに連載。
たまたま出会った人のちょっとした言動から親友のエピソード、取材などの途中で出会った気になる物から愛用品、そして日常話から気になる時事ニュースなど…さまざまな『ひと・もの・こと』に関するトピックを吉元流でお届けします。
私たちがつくる二つの物語
「もしもあのとき…していれば」
過ぎ去った過去を思い出すとき、何度となくこの思いがよぎることがあります。「もしもあのとき…」と紐解いていくと、限りない人生の可能性があることに気づきます。
日々、この瞬間は選択の連続です。コーヒーにしようか、紅茶にしようか。これも人生の選択。この人と結婚するかしないか。これも選択のひとつです。その時々に何を選んでいくか。人生の方向性を決めるのは、その時々の選択にかかっています。これが、現実に創造する自分の物語になります。
それともうひとつ、私たちが乗り越えていくために創る物語があります。臨床心理学者の河合隼雄先生は、生きるためには物語が必要であると説いています。生きていく上で、どうしても受け入れがたいことに遭遇します。最も受け入れがたいことは、大切な人の死でしょう。河合隼雄先生は著書の中でこのように述べています。
4年前、仕事仲間でもあった大好きな友人が癌で亡くなりました。彼女の死を私はどうしても受け入れることができなかった。胃腸の動きが止まってしまい、私は本当に食べ物が喉を通らなくなってしまったのです。でも、長い髪を美しく巻き、ステージに立つときと同じように美しくお化粧が施された棺の中の彼女を見たときに、少し受け入れることができたのです。
持って生まれた才能を生かして仕事をし、多くの人に感動を与え、多くの人に愛されて、多くの人を愛した彼女の人生は、傷ついたこともたくさんあったかもしれないけれど幸せだったのではないか…。
本人がどう思っていたのか、それを確かめる術はもうありません。でも、私の中で湧き上がってきたこの思いは、私を救ってくれたのです。これこそが、乗り越えるための物語です。「癌で亡くなってしまった」という現実だけでは、人は悲しみを越えることはできない。その人の人生と、自分の人生が触れ合う物語に思いを馳せたときに見えてくる景色があるのです。
日常の中で起こるシンクロニシティも物語を生みます。(これは大丈夫!と言われているサイン)(頑張って、というエールなのだ)と思うことで、力づけられることがあります。
選択することで作っていく現実の物語。そして、心を支える物語と。二つの物語を味わうことで、自分らしい人生という物語をつくっていく。年齢を重ねるほどに、その大切さをじわじわと感じるのです。
※記事中の写真はすべてイメージ
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作詞家・吉元由美の連載『ひと・もの・こと』バックナンバー
[文・構成/吉元由美]
吉元由美
作詞家、作家。作詞家生活30年で1000曲の詞を書く。これまでに杏里、田原俊彦、松田聖子、中山美穂、山本達彦、石丸幹二、加山雄三など多くのアーティストの作品を手掛ける。平原綾香の『Jupiter』はミリオンヒットとなる。現在は「魂が喜ぶように生きよう」をテーマに、「吉元由美のLIFE ARTIST ACADEMY」プロジェクトを発信。
⇒ 吉元由美オフィシャルサイト
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⇒ 単行本「大人の結婚」