玄関のドアノブにつけられたままの、古くなったリードを見て気付く
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吉元由美の『ひと・もの・こと』
作詞家でもあり、エッセイストでもある吉元由美さんが、日常に関わる『ひと・もの・こと』を徒然なるままに連載。
たまたま出会った人のちょっとした言動から親友のエピソード、取材などの途中で出会った気になる物から愛用品、そして日常話から気になる時事ニュースなど…さまざまな『ひと・もの・こと』に関するトピックを吉元流でお届けします。
ロンロンのリード〜犬たちが教えてくれること
11才になるトイプードルのラニ。2.5kgという小ささなので、シニア犬になったといっても、ずっと幼い子どものような感じがします。それでも、目がうっすらと白くなり、遊びに夢中になっている時に、こほこほっと咳をすると、11才という年齢がふと怖くなるのです。
愛するものは人を強くし、そして弱くする。こんなに愛しい存在が、この世界にあったんだ…。まだ赤ちゃんの娘を抱っこしながら、授かった喜びと同時に、失う怖さを知りました。
それは11年前にラニと出会った時も同じ。命を慈しむということを教えてもらったと共に、やはり失った時のことを想像すると胸が張り裂けそうになるのです。
娘がまだ2歳、3歳のころ、ご近所に何匹もビーグルを飼っている家と、ゴールデンレトリバーを飼っている家がありました。いつも玄関のフェンス越しにわんちゃんたちを見るのがお約束で、なかなかそこから離れようとしませんでした。ビーグルを飼っていたのは60代くらいのおじさんで、いつも数匹をつれて散歩をしていました。
ゴールデンレトリバーのロンロンは、玄関のドアノブにくくりつけてあるリードをつけて、よくポーチでひなたぼっこをしていました。大型犬の大らかさ。娘が「ロンロン!ロンロン!」と呼びかけるとむくっと顔を上げます。
※ 写真はイメージ
ラニがやって来てからは、散歩のときにロンロンやビーグルたちに挨拶をします。しかしラニは、ほかの犬にワンワン吠えるので、さっさと通り過ぎるようになってしまいました。
娘は大学生になり、ラニも年を重ねます。ビーグルたちも、ある時からいなくなりました。飼い主のおじさんは、おじいさんの風貌になり、見かけることも少なくなってきました。
ある日、痩せたロンロンが飼い主さんとゆっくりゆっくり散歩しているのを見かけました。一歩一歩、その足取りを確かめるように下を向いて歩いています。いくつになったのでしょうか。16、7歳にはなっていたと思います。家族に愛され、見守られ、幸せだったロンロンの時間がそこにあるような気がして、駅に向かって歩きながら涙が止まりませんでした。
言葉を交わすことのできないペットたち。私たちは彼らから、心で接することを教えてもらっているのです。信頼ということも、愛するということも。それを宝物にできるかどうかは、人間の感性によるところなのでしょう。
ロンロンの家の玄関には、いまもまだ古くなったリードがついたまま。時は、大切なものをそこに残したまますぎていきます。2.5kgのラニをぎゅっと抱きしめる。そうしてときどき、いま、この瞬間を味わってみるのです。
作詞家・吉元由美の連載『ひと・もの・こと』バックナンバー
[文・構成/吉元由美]
吉元由美
作詞家、作家。作詞家生活30年で1000曲の詞を書く。これまでに杏里、田原俊彦、松田聖子、中山美穂、山本達彦、石丸幹二、加山雄三など多くのアーティストの作品を手掛ける。平原綾香の『Jupiter』はミリオンヒットとなる。現在は「魂が喜ぶように生きよう」をテーマに、「吉元由美のLIFE ARTIST ACADEMY」プロジェクトを発信。
⇒ 吉元由美オフィシャルサイト
⇒ 吉元由美Facebookページ
⇒ 単行本「大人の結婚」