震災で家族を亡くした人が見た夢の記録 そこには偶然とは思えないメッセージが
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吉元由美の『ひと・もの・こと』
作詞家でもあり、エッセイストでもある吉元由美さんが、日常に関わる『ひと・もの・こと』を徒然なるままに連載。
たまたま出会った人のちょっとした言動から親友のエピソード、取材などの途中で出会った気になる物から愛用品、そして日常話から気になる時事ニュースなど…さまざまな『ひと・もの・こと』に関するトピックを吉元流でお届けします。
「私の夢まで、会いに来てくれた」を読んで
『夢』は私たちに何を語りかけてくるのか。
東日本大震災で家族、友人を失った遺族が見たなき人の夢の記録を綴った『私の夢まで、会いに来てくれた』を読みました。
突然、愛する人を失う。この本は、東北学院大学の金菱ゼミナールの学生たちが、「被災者遺族が見る亡き人の夢」をテーマに調査をした記録です。100人近くの人から話を聞いたとのことですが、遺族の方に叱られたり、きつく拒否されたり、学生たちの調査は楽なものではなかったそうです。
震災の後、被災者家族たちは自分が生きていくことだけでも大変な中、行方不明になった家族を瓦礫の中に探し続けます。ある女性は、行方不明になった母が見つかったという連絡に、遺体安置所に向かいます。ところが会わせてもらえない。棺に納められた母の顔にはピンクの布が巻きつけてあったそうです。せめて母に触れたかった。それが心残りになりました。
ある日、その女性は夢を見ます。名前を呼ばれてハッとすると、そこに母が立っている。
「どこにいたの?」
と叫ぶと、母は「ほれ、ほれ触れ、触れ」と、その人の手を取って、自分の頰を触らせる。その感触はあたたかく、柔らかく、母のものだと、懐かしく思う…という夢です。
その女性の父は、震災の4年後に見つかります。定置網に大腿骨が引っかかっていたそうです。凄まじい現実です。父が見つかる少し前に、父が大勢の人とフェリーに乗っているという夢を見ました。その時、父は見つかるかもしれない、と思ったそうです。いま、その女性は両親の強さを心の支えに、自分の道を歩んでいるとのことです。
津波という、非日常の天災だったということがあるかもしれません。遺族が見る夢のどれにも、明確なメッセージがあります。夢というと奇妙なストーリーが多く、なかなか意味を読み解けないものが多いものです。しかし、被災者が見る夢は、亡くなった家族が穏やかに暮らしていたり、遺族を抱きしめたり、亡くなった妻がキスをしに来たというような、明確な夢なのです。突然旅立った人たちは、遺族を癒し、別れを告げに夢に現れたのです。
夢は、夢主の超意識から発せられるものです。そこに、亡くなった人たちが意図的に入り込むことができるのかどうか、私には分かりません。ただ、亡くなった人が夢に出てくるというのは、普通の夢とは違う特別の意味があるように思います。メッセージを伝え、悲しみを癒しに来る。最近ご主人を亡くした友人は、夢の中で夫に抱きしめられて「大丈夫だよ」といわれ、頑張っていこうと思えたと話してくれました。
夢の機能について、半信半疑の人もいるでしょう。しかし、見た人の心深くに寄り添い、再生への足がかりになるのであれば、それを否定することはないと思うのです。見えない世界と見える世界。それはかけ離れているのではなく、すぐ隣に、この見える世界の中に溶け込んでいるようにあるのかもしれません。
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作詞家・吉元由美の連載『ひと・もの・こと』バックナンバー
[文・構成/吉元由美]
吉元由美
作詞家、作家。作詞家生活30年で1000曲の詞を書く。これまでに杏里、田原俊彦、松田聖子、中山美穂、山本達彦、石丸幹二、加山雄三など多くのアーティストの作品を手掛ける。平原綾香の『Jupiter』はミリオンヒットとなる。現在は「魂が喜ぶように生きよう」をテーマに、「吉元由美のLIFE ARTIST ACADEMY」プロジェクトを発信。
⇒ 吉元由美オフィシャルサイト
⇒ 吉元由美Facebookページ
⇒ 単行本「大人の結婚」