食卓の中心は父からTV、そしてスマホへ… お箸の持ち方を知らない若者を思う
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こんにちは、フリーアナウンサーの押阪忍です。
ご縁を頂きまして、『美しいことば』『残しておきたい日本語』をテーマに、連載をしております。宜しければ、シニアアナウンサーの『独り言』にお付き合いください。
箸の使い方あれこれ
『一家団欒』という表現があるように、日本の家庭では、家族が1つの食卓を囲んで楽しく過すひとときを大切にしてきました。
TVが出現するまでは、どこのご家庭でもそうでしたね。それがお茶の間に、TVがデンと座ったら家族みんなが、TVを見ながら食事をするように変わりました。
ところがそれが、いまでは様変わりをしています。『スマートフォン』の登場です。家族みんなが食卓のそばにスマホを置き、TVどころかスマホを見ながら、手で触れながら食事をしている家庭も多いと聞きます。当然お母さん心づくしの夕げのお料理より、メールやゲームやLINEでの楽しみのほうが優先している食卓なのです。
かつては、ミヨちゃんがお皿のお芋をプツンと突いて食べようとした…それを見ていたおばあちゃんは「ミヨコ、そんな食べ方をしてはいけないよ。それは“突き箸”」といって、品のない箸の使いかたじゃ、ちゃんとつまみなさい…」と教えてくれました。
するとミヨちゃんは、どっちにしようかな…と持っている箸を、お芋とカボチャの煮付けの両方につけました。
するとお母さんが「ミヨコ、それは“迷い箸”というのよ…」ミヨちゃんは「もういやだあ…」と箸の先をペロッと嘗めました。「ダ~メ、それは“嘗め箸”というの」とお母さんはたしなめます。
家族の食卓は、団欒の中でもきちんとした箸の使いかたや作法を覚えられる躾の場でもあったのです。
それがいまはスマホ時代。右手で箸を持ち、左手でスマホを使っている人もいます。スマホ依存症がどんどん増えています。
スマホ時代は、知らず知らずのうちに言葉も作法も失われて来ているように思うのですが、少し当方は考え過ぎなのでしょうか…。
<2018年5月>
フリーアナウンサー 押阪 忍
1958年に現テレビ朝日へ第一期生として入社。1965年には民放TV初のフリーアナウンサーとなる。以降TVやラジオで活躍し、皇太子殿下のご成婚祝賀式典なども行う。2018年現在、アナウンサー生活60年。
日本に数多くある美しい言葉。それを若者に伝え、しっかりとした『ことば』を使える若者を育てていきたいと思っています。