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宇宙にたった一人きり… はやぶさ2、孤独と希望と

By - 吉元 由美  公開:  更新:

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※ 写真はイメージ

吉元由美の『ひと・もの・こと』

作詞家でもあり、エッセイストでもある吉元由美さんが、日常に関わる『ひと・もの・こと』を徒然なるままに連載。

たまたま出会った人のちょっとした言動から親友のエピソード、取材などの途中で出会った気になる物から愛用品、そして日常話から気になる時事ニュースなど…さまざまな『ひと・もの・こと』に関するトピックを吉元流でお届けします。

はやぶさ2、孤独と希望と

2019年2月22日、小惑星探査機はやぶさ2が「リュウグウ」へのタッチダウン(接地)に成功しました。

接地可能な地点は半径3メートル。当初は甲子園球場ほどの平地があると予想していたそうですが、「リュウグウ」の地表を探査したところ、想像以上にでこぼことした地形で、接地できる地点を数カ月にわたって調査していたと言います。太陽系の起源、生命誕生の謎に迫るべく、表面物質などを採取するミッションを担い、今後数回のタッチダウンを試み、岩石、砂などの採取を行う予定とのことです。

画像クレジット:JAXA, 東京大, 高知大, 立教大, 名古屋大, 千葉工大, 明治大, 会津大, 産総研

研究者、技術者の眼差しに我が子を見守るような深い愛情を感じてしまうのは大げさでしょうか。前回、はやぶさは交信が途絶え、一時行方不明になりました。それでも、宇宙を飛び続けていたのですね。地球に帰還したときの感動は、日本中をわかせました。単に帰ってきたということに心打たれただけでなく、おそらく多くの日本人はそこに健気さを感じたのでないかと思います。

小学生の頃、ベッドのマットに耳をあて、よく耳を澄ましてスプリングがきしむ音を聞いていました。子どもですからそれがスプリングの音だとはわかりません。その微かな金属音は遠くから聞こえてくるようで、なぜか「宇宙」を感じさせたのです。もしかしたら宇宙空間は、耳をあてたその場所から広がっているのかもしれないと、とんでもない秘密を知ってしまったようにわくわくしたものです。子どもの妄想ですが。

はやぶさ2のニュースを知り、なぜかこのことを思い出しました。微かな音に耳を澄ましながら、果てしない宇宙に思いを馳せ、途方に暮れそうになったのを覚えています。

そんな宇宙で、はやぶさ2は、どんな風景を見ていたのでしょう? たったひとり(感情移入してしまいます)、宇宙の中の孤独。もしかしたらそれは、人の心の奥にある根源的な孤独感につながるのかもしれません。宇宙の中でひとりぼっち…こんなことを感じた人もいるのではないでしょうか。

もうひとつ思い出しました。1957年、ソ連のスプートニク2号が犬を乗せたロケットを打ち上げました。名前はライカ。メスの雑種です。
地球の軌道を初めて回った生物です。

7日分の餌が自動的に与えられるようになっており、最後には安楽死させるための薬が入っていたという話もあります。ライカは打ち上げから程なく機体の不備により船内が高温となり亡くなってしまったと思われます。ライカはどんな風景を見たのでしょうか? このスプートニク犬のことを考えると、その孤独に泣けてきます。

1977年に打ち上げられたボイジャーは、現在地球から180億キロメートル、太陽圏を出て恒星系へと果てしない旅を続けています。いつか遭遇するかもしれない宇宙人に地球の情報を伝えるためのレコードには、バッハの曲やザトウクジラの鳴き声などが記録されているそうです。

正確な台詞ではないのですが、映画『宇宙戦艦ヤマト2199〜星を巡る方舟』の中で、かつて宿敵であったガミラスの艦長が言うのです。

「我々は同じ場所から生まれたのだ」

この台詞に、私は希望を感じます。孤独だけれど、ひとりではない。私たちが心の奥でどんな風景を見ているのか。はやぶさ2のニュースから宇宙へ、そして心の深淵へと思いが広がりました。


[文・構成/吉元由美]

吉元由美

作詞家、作家。作詞家生活30年で1000曲の詞を書く。これまでに杏里、田原俊彦、松田聖子、中山美穂、山本達彦、石丸幹二、加山雄三など多くのアーティストの作品を手掛ける。平原綾香の『Jupiter』はミリオンヒットとなる。現在は「魂が喜ぶように生きよう」をテーマに、「吉元由美のLIFE ARTIST ACADEMY」プロジェクトを発信。
吉元由美オフィシャルサイト
吉元由美Facebookページ
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出典
「はやぶさ2」小惑星リュウグウまでの旅程(改訂版)

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