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『自分』を残しておくための「紙」と「ペン」は、自分の手と気持ちに馴染んだものを

By - 吉元 由美  公開:  更新:

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吉元由美の『ひと・もの・こと』

作詞家でもあり、エッセイストでもある吉元由美さんが、日常に関わる『ひと・もの・こと』を徒然なるままに連載。

たまたま出会った人のちょっとした言動から親友のエピソード、取材などの途中で出会った気になる物から愛用品、そして日常話から気になる時事ニュースなど…さまざまな『ひと・もの・こと』に関するトピックを吉元流でお届けします。

自分を大切にする『紙』と『ペン』のある時間

旅に出ると、なぜか手紙を書きたくなります。あるときはひとり、部屋で。あるときはカフェの小さなテーブルで。

今ならメールやLINEなどが手軽なのかもしれませんが、ペンで字を書くという行為が、自分の中にある伝えたいことを引き出すスイッチを入れるのです。それも、仕事などで考えていることとは違う次元のことを。

自分でも気付いていなかった本音や、少々センチメンタルなことであったり。ときどき、そんな自分に出会ってみたくなるのです。

今、海外はもちろんのこと、国内でも気軽に旅に出ることがむずかしいときなので、気に入ったカフェの、気に入った席で書き物をしています。

たとえばご近所の並木道に面したファミリーレストラン。窓際のボックス席は落ち着きます。なぜかこの席だと、仕事もはかどるのです。

紙とペンの相性はとても大切です。たとえば、歌詞を考えているとき。いつも鉛筆を使うのですが、柔らかい芯の、2Bから4Bの鉛筆でないと思考がスムーズに動いていかないのです。

柔らかい心の書き心地が、なんとも気持ちがいい。そして下書きの紙はA4のコピー用紙を横にして。これは『儀式』のように、デビューしたときからの慣わしです。

若い頃によく一人旅をしていた頃、必ず持って行ったがシェーファーのカリクラフィー用の万年筆でした。1500円くらいのリーズナブルな万年筆です。

文字に少し表情が出て、なぐり書きでも『味』が出ます。インクはBlue-black。この色も、イマジネーションをそそるのです。

今、愛用しているのはuni ball SigNonoの太字、インクはdeep blue。滑るような書き心地、そしてこのペンのインクは紙にほどよく滲みます。

紙も柔らかいものを。インクを吸い取るような紙が好きです。ペン先からこぼれた思考や思いを受け止めるノートも、吟味して吟味して選びます。

文筆を生業としている私にとって、自分のために文章を書くモチベーションはとても大切なものです。

誰にとっても「自分のために書く」のは、「自分と一緒にいる」ことでもあるのです。思考も思いも記憶も、そのままにしておくといつか薄らいでいく。

そのとき、その瞬間の自分を記録する。日記でも雑記帳でも、手帳の片隅にでも、『自分』を残しておく。それは、自分を大切にすることにもつながると思います。

そして、せっかくですから思いを記していく水路となる紙とペンは、自分の手に、気持ちに馴染んだものを選びたいものです。

※記事中の写真はすべてイメージ


[文・構成/吉元由美]

吉元由美

作詞家、作家。作詞家生活30年で1000曲の詞を書く。これまでに杏里、田原俊彦、松田聖子、中山美穂、山本達彦、石丸幹二、加山雄三など多くのアーティストの作品を手掛ける。平原綾香の『Jupiter』はミリオンヒットとなる。現在は「魂が喜ぶように生きよう」をテーマに、「吉元由美のLIFE ARTIST ACADEMY」プロジェクトを発信。
吉元由美オフィシャルサイト
吉元由美Facebookページ
単行本「大人の結婚」

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