子連れに声をかけた、評判の悪い高校の男子たち 駅で起こった出来事に心打たれる
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2020年5~8月にかけて、ウェブメディア『grape』では、エッセイコンテスト『grape Award 2020』を開催。
『心に響く』と『心に響いた接客』という2つのテーマから作品を募集しました。
『grape Award 2020』心に響くエッセイを募集! 今年は2つのテーマから選べる
今回は、応募作品の中から『男子高校生の勇気ある小さな親切と大きな感謝』をご紹介します。
私の娘がまだ1歳くらいの時のことです。
娘をベビーカーに乗せて、2人で電車で買い物に出かけた帰りのことでした。
JRの電車の中で、娘はベビーカーですやすや眠っていました。駅に到着し、乗り換えのため私はベビーカーを担いで電車を降りました。とても混雑していて、駅の階段にはたくさんの人がいてなかなか前に進まない状態でした。
ベビーカーの娘はまだぐっすり眠っており、ベビーカーの両サイドにはたくさん荷物をかけていました。その頃は駅にはまだエレベーターが設置されておらず、改札まで行くにはベビーカーと荷物を持って階段を上がるしかありません。
力には自信がある方でしたが、さすがに子どもを乗せたベビーカーとたくさんの荷物を、この人混みの中同時には持って上がれないと思いました。
とりあえず、人混みが空いてからどうにかして階段を上がろうと少し待つことにしました。
しかし、一度に持ってあがるのはやはり難しく、ベビーカーと子どもを置いて、まずは荷物だけ階段の上まで運ぶか、もしくは先にベビーカーと子どもを階段の上まで運ぶか悩みました。
いずれにしても子どもを一時的に放置することになるのは心配で、どうしたらいいかと考えあぐねていた時です。同じ電車から降りた4人の制服を着た男子高校生が階段下で何やら話していました。
何故階段を上がらないのかな、と思っていると、人混みがおさまった頃、そのうちの1人の男子高校生が突然私のところに来て「上までベビーカーもちましょうか」と声を掛けてくれたのです。
彼らは私が困っているのを見て、ベビーカーを運んでくれようと一緒に人混みがおさまるのを待ってくれていたのです。
4人の男子高校生達は、それぞれベビーカーの4隅を持ち、階段を上がってくれました。声を掛けてくれた彼は、運びながらおそらく照れ隠しでしょう、「俺ってめっちゃいい奴やん」と笑って言いました。周りの3人の男子高校生も恥ずかしそうに笑っていました。
若い彼らにとっては、知らない人に声をかけること自体かなり勇気がいることだと思います。
他人が困っているのをいち早く察知し、勇気を出して行動に移してくれたことが本当に嬉しく、涙が出そうになりました。何度も4人の高校生達にお礼を言い、彼らとわかれました。
彼らの制服からどこの高校かはすぐにわかりましたが、お世辞にもあまり評判のいい高校ではなかったので、思いもよらない行動にはじめは驚きを隠せませんでした。
その時私は、評判の良くない学校という偏見を持っていた自分がとても恥ずかしくなりました。大人の私が彼ら高校生に教えられた気がします。
大人はすぐに「最近の若い奴は」といいますが、全てがそうではなく、素晴らしい若者もたくさんいるのです。私達大人が彼らのような立派な若者から教えられることもたくさんあるのだと思いました。
彼らの勇気ある小さな親切に大きな感謝です。
あの時の男子高校生も今ではきっと立派な大人になっていることでしょう。
grape Award 2020 応募作品
テーマ:『心に響くエッセイ』
タイトル:『男子高校生の勇気ある小さな親切と大きな感謝』
作者名:マーチ
エッセイコンテスト『grape Award 2020』の審査員が決定!
2017年から続く、一般公募による記事コンテスト『grape Award』。第4回目となる2020年の審査員には、grapeでも人気の漫画『犬と猫どっちも飼ってると毎日たのしい』シリーズでおなじみの漫画家・松本ひで吉さんが決定しました。
さらに『Jupiter』などの作詞を手がけた作詞家でエッセイストの吉元由美さんや、映画化もされた『スマホを落としただけなのに』などで人気を博する小説家の志駕晃さんも審査員として作品を読みます。
心に響く作品として選ばれるのは、どのエピソードでしょうか。結果発表をお楽しみに!
『grape Award 2020』詳細はこちら
[構成/grape編集部]