93歳の父と過ごすお墓参りの時間と私なりの『メメント・モリ』
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吉元由美の『ひと・もの・こと』
作詞家でもあり、エッセイストでもある吉元由美さんが、日常に関わる『ひと・もの・こと』を徒然なるままに連載。
たまたま出会った人のちょっとした言動から親友のエピソード、取材などの途中で出会った気になる物から愛用品、そして日常話から気になる時事ニュースなど…さまざまな『ひと・もの・こと』に関するトピックを吉元流でお届けします。
93歳の目に映る世界は
父を連れてお墓参りに行きました。
お彼岸と暮れにはお参りし、霊園の近くの手打ちそば屋で天ぷらそばを食べるのがここ数年の恒例となりました。
杖をついて歩く足元は覚束なく、狭い歩幅で歩く姿に積み重ねてきた年月の長さを思います。
昔は人の話も聞かずに自分の話ばかりしていた父ですが、今は私たちの話を聞くばかり。
それもちゃんと聞こえているかはわかりません。
私と妹たちがお墓の掃除をしているのを、父はそばの縁石に腰掛けながら眺めています。
何を思いながら私たちを眺めているのか。
誰にもわからない父だけの時間がそこに流れているようでした。
冷たい風がどこからか桜の花びらをひとひら、ひとひらと運んできた3月の終わり、花冷えの日曜日。
そんな父を見ながら「今、ここ、この一瞬」の大切さを思います。
『メメント・モリ』(Memento Mori)という言葉があります。
「死を思え」という意味のラテン語で、古代ローマ時代に警句としてこの言葉が交わされていたと言います。
戦いに勝った将軍が自分を戒めるために、この言葉を家臣に言わせながらパレードをしたとか。
「明日はどうなるかわからない」諌めの言葉ではありますが、前向きになれる、背中を押してくれる言葉でもあります。
この瞬間の連なりが長い『時間』になっていくわけですが、『時間』とは、自分が生まれたときに約束してきたいのちの時間です。
「いろんなことがあったし、今も老後のことや仕事のこと、体のことで心配事はあるけれど、いま私たちとても幸せ」と、先日、二十代の頃からの親友としみじみと話をしました。
このような感慨を抱けるようになったのには、やはり長い瞬間の連なりが必要だったのかもしれません。
そしてこの感慨は、『メメント・モリ』(私なりの、ですが)へつながっていくのです。
喜びだけでなく、悲しみも孤独も、最後にはすべて『私』なのだと受け入れられる。
それがきっと『満ちていく』ということであり、幸せという曖昧だけれど何か確かな感慨として感じられるのではないか。
そんなことを思うようになりました。
93歳の父の目に、この世界はどう映っているのでしょうか。
テキパキと冗談を言い合いながらお墓の掃除をしている娘たちを見て、何を思うのでしょう。
立ったまま手を合わせている父は、母になんと語りかけていたのか。
波瀾万丈だった父の中に流れているいのちの時間が、穏やかな春のようなぬくもりと共にあってくれたらいいなと、父の背中を見ながら思うのでした。
いのちを紡ぐ言葉たち かけがえのないこの世界で
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※記事中の写真はすべてイメージ
作詞家・吉元由美の連載『ひと・もの・こと』バックナンバー
[文・構成/吉元由美]
吉元由美
作詞家、作家。作詞家生活30年で1000曲の詞を書く。これまでに杏里、田原俊彦、松田聖子、中山美穂、山本達彦、石丸幹二、加山雄三など多くのアーティストの作品を手掛ける。平原綾香の『Jupiter』はミリオンヒットとなる。現在は「魂が喜ぶように生きよう」をテーマに、「吉元由美のLIFE ARTIST ACADEMY」プロジェクトを発信。
⇒ 吉元由美オフィシャルサイト
⇒ 吉元由美Facebookページ
⇒ 単行本「大人の結婚」