『もの』の向こう側に思いを馳せることは、世の中が少し優しくなることにつながる
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吉元由美の『ひと・もの・こと』
作詞家でもあり、エッセイストでもある吉元由美さんが、日常に関わる『ひと・もの・こと』を徒然なるままに連載。
たまたま出会った人のちょっとした言動から親友のエピソード、取材などの途中で出会った気になる物から愛用品、そして日常話から気になる時事ニュースなど…さまざまな『ひと・もの・こと』に関するトピックを吉元流でお届けします。
駆け引きのさじ加減
おまけしてもらうのが苦手です。値段交渉というのでしょうか、海外のお土産屋さんなどで値切るのは旅の楽しみの一つですが、大概そのまま買ってしまいます。
真夏にエジプトを旅したとき、あまりの暑さに遺跡の前の露天商でストールを買いました。1枚500円くらいだったと思います。色違いで3枚、少しおまけしてくれて1000円くらいだったと思います。
一緒に行った友人は値切って値切って3枚500円に。後からその値段を聞いて驚きました。
バリ島にダイビングをしに行ったときのことです。マイクロバスが休憩で停まるたびに、物売りたちが寄ってきます。たいていが子どもたちで、手作りのアクセサリーや絵葉書などを売りにきます。
お金も持ってきていなかったし、買うつもりもないので「ごめんね、お金ないの」と断っていると、ひとりの少女がニコニコ笑いながら、私の首に木の実で作ったネックレスをかけました。
私が外そうとすると、“No,no,gift,gift”と笑っています。え?物売りの女の子からもらうの?と半分戸惑っていると、“Friend,friend”と。そんなこともありました。
娘がメキシコへ行ったときのこと。メキシコの装飾品はとても手がこんでいて素敵で、観光地の露店で売っているビーズのアクセサリーも丁寧に作られたものが多いそうです。
それをアメリカ人観光客が一つ2ドルの指輪を値切って半額にし、一つ買っていたのを見て、唖然としたと言います。娘は2ドルの指輪を10個、他のものもそのままの値段で友達のお土産に。
メキシコに旅行に来るほど裕福なアメリカ人が、地元の人が丁寧に作ったものを買い叩く。その姿も心も醜かったと話してくれました。
値段の駆け引きを、売り手も買い手も織り込み済みで楽しむこともあります。お互いに恩恵を受ける頃合いを見定める。さじ加減を考える。
高額なものならともかく、楽しむ程度、ほどほどにした方がいいように思うのです。
年に一度、花市場に行く機会があり、市場に並んでいる花の安さに毎回驚きます。市場ですから安くて当然なのですが、この花の向こうにいる生産者が、商品になる花を育てるのにどれだけの労力がいるか。
それを考えると、店頭に並んでいる花の値段は決して高くはないと思うのです。
リーズナブルであることに越したことはないのかもしれません。でもときどき、その『もの』の向こう側に思いを馳せることは、世の中が少し優しくなることにつながるかもしれません。
※記事中の写真はすべてイメージ
作詞家・吉元由美の連載『ひと・もの・こと』バックナンバー
[文・構成/吉元由美]
吉元由美
作詞家、作家。作詞家生活30年で1000曲の詞を書く。これまでに杏里、田原俊彦、松田聖子、中山美穂、山本達彦、石丸幹二、加山雄三など多くのアーティストの作品を手掛ける。平原綾香の『Jupiter』はミリオンヒットとなる。現在は「魂が喜ぶように生きよう」をテーマに、「吉元由美のLIFE ARTIST ACADEMY」プロジェクトを発信。
⇒ 吉元由美オフィシャルサイト
⇒ 吉元由美Facebookページ
⇒ 単行本「大人の結婚」