観光バスのバスガイドをする女性 上司から呼び出され、クレームかと思ったら…?
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※写真はイメージ
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2020年5~8月にかけて、ウェブメディア『grape』では、エッセイコンテスト『grape Award 2020』を開催。
『心に響く』と『心に響いた接客』という2つのテーマから作品を募集しました。
『grape Award 2020』心に響くエッセイを募集! 今年は2つのテーマから選べる
今回は、応募作品の中から『観光バスでの一期一会』をご紹介します。
私は観光バスのバスガイドをしている。
バス車内でのご案内はもちろん、観光地での下車説明やお食事会場へのご誘導もお仕事の一つ。
とにかく観光の仕事に就きたいとバスガイドになったはいいが、その後は苦労の連続。とにかく暗記がつらく、観光地の原稿が出てこなくてもバスは進んでしまう。苦労を共にした同期もやめてしまい一人寂しく研修はとても大変だった。
ゴールデンウイークになり忙しくなるとついに独り立ちの時。今まではお客様がいない研修ばかりだったため始めはすごく緊張していた。あたりまえだが、いつも同じペースで進んでいるわけではないため止まってほしくない信号に引っかかったり、観光地に近づくにつれて渋滞でバスが進まなかったり、覚えたての原稿で間をつなげるのはすごく大変だった。
夜景が人気の観光地なのでもちろん夜まで勤務。朝から夜まで、家に帰ってからは暗記の確認、予備原稿の勉強をしたりと体力的にも厳しくなっていた。
「ちょっといいかな。話があるんだ。」
お昼のコースが終わり車庫に戻ると上司からの呼び出し。心当たりはないがもしかしてクレームが来たのかと背中を丸めながらついていくと上司は「これを読んでください。」と一枚の便せんを渡してきた。もしかして本当にクレームが来たのかと恐る恐る読んでみた。
「先日はお世話になりました。最後にお礼が言えなかったのでせめてもの気持ちです。いつまでも笑顔を忘れず頑張ってください。」
私の顔は上司の顔と手元の紙を行ったり来たり。まさかの応援の手紙だったのだ。手紙のほかには仲睦まじい夫婦の写真が入っていて、見た瞬間に思い出した。あのよく晴れた日に私が「ここがフォトスポットだから」とシャッターを押して一日観光のお供をしたご夫婦だ。
さらに便せんを見るとお守りが入っていた。お客様からのお手紙をもらったのは初めてだったため、つらくても頑張ってよかったと涙がぽろぽろ出てきた。私は嬉しくてすぐにお返事を書いて送り、今でもお守りは肌身離さずカバンに入れて持ち歩いている。
しばらくしてまた上司から呼び出しがあった。渡されたのは一枚の便せん。なんとまたお返事を送ってくださったのだ。
「健康と、仕事中の事故等もないように」ともう一つお守りを同封してくださっていた。
今は新型コロナウイルスの影響で観光業は大打撃。私の会社も今はほとんどお休みの状況。また日常がもどって観光を楽しむことができるようになったら遊びに来てくださいね。そんな気持ちを込めて今は自宅でたくさん勉強して次にお会いした時にはもっと楽しんでもらえるように日々精進。
私の右手に見えるのも左手に見えるのもお客様の笑顔、いつか来る満員御礼バスの旅を夢見て今日も元気に出発進行。
grape Award 2020 応募作品
テーマ:『心に響くエッセイ』
タイトル:『観光バスでの一期一会』
作者名:北野 由美子
エッセイコンテスト『grape Award 2020』の審査員が決定!
2017年から続く、一般公募による記事コンテスト『grape Award』。第4回目となる2020年の審査員には、grapeでも人気の漫画『犬と猫どっちも飼ってると毎日たのしい』シリーズでおなじみの漫画家・松本ひで吉さんが決定しました。
さらに『Jupiter』などの作詞を手がけた作詞家でエッセイストの吉元由美さんや、映画化もされた『スマホを落としただけなのに』などで人気を博する小説家の志駕晃さんも審査員として作品を読みます。
心に響く作品として選ばれるのは、どのエピソードでしょうか。結果発表をお楽しみに!
『grape Award 2020』詳細はこちら
[構成/grape編集部]