手をつなぐこと それは何ものにも替えがたい美しい時間 By - 吉元 由美 公開:2021-01-24 更新:2021-01-24 エッセイ吉元由美 Share Post LINE はてな コメント 吉元由美の『ひと・もの・こと』 作詞家でもあり、エッセイストでもある吉元由美さんが、日常に関わる『ひと・もの・こと』を徒然なるままに連載。 たまたま出会った人のちょっとした言動から親友のエピソード、取材などの途中で出会った気になる物から愛用品、そして日常話から気になる時事ニュースなど…さまざまな『ひと・もの・こと』に関するトピックを吉元流でお届けします。 手をつなぐ 〜見えない絆を育てる時間 街で手をつなぎながら歩いている親子連れを見かけると、ふっと懐かしいような、淋しいような気持ちが胸をかすめます。 娘が15歳でアメリカに留学してから8年。ずいぶん時間が過ぎました。まさか15歳で手放すとは思っていませんでしたが、考えてみると親子で一緒に暮らす年月というのはそんなに長いものではないのです。 留学するのは、なかなか勇気のいる決断だったと思います。生半可な気持ちや、憧れではなく、人生を賭ける覚悟だったことは確かです。 ですから親が淋しいとか淋しくないとか、つまらないことを言ってはいけないと思いました。娘がこれから自分のステージをゼロから作ろうとしているのを応援するだけです。 親から離れる解放感もあったでしょうし、同じくらい不安もあったでしょう。でも、娘が覚悟を決めて巣立って行けたのは、小さいとき、どんなときも手をつないでいたからではないかなと思うのです。 娘が手をつなぎたいだけ、手をつないで、そして自分から手を離していった……そんな感じがします。 いつも手をつないでいること。そしていつも会話をすること。会話が成立しなくてもいいのです。 空がきれいだね。風が気持ちいいね。そんなことでいいのです。そして子どもの話を聞くのです。それでどう思ったの?そんなことがあったんだ……。 ジャッジを求められない限りジャッジすることなく、子どもが話すそのままをそっと手にとって愛でるように、話を聞くのです。 そんな時間が確かに私の人生の一時期に流れていたのです。遠い日のことですが、それらは何ものにも替えがたい美しい時間でした。 ですから若いお母さんと子どもが歩いているのを見かけると、そんな時間を大切にしてほしい!と思ってしまうのです。 子育ての悩みはあったし、仕事と両立させることがきつかったこともありました。それでも、過ぎてしまうと何もかもが夢物語のような気がしてくるのです。 娘と遠く離れていると、ときどき本当にゆめまぼろしだったのかしら、とふと思います。妙な感覚なのですが、これまでの人生すべてがゆめまぼろしだったような。 振り返る年月が多くなるにつれ、何か確かだったものが指の間をすり抜けていくような感があります。「いま、ここ」の自分の中から、母としての自分が薄らいでいくことの淋しさがあるのかもしれません。 それもまた人生の1ページであり、流れなのでしょう。もう少ししたら、私の方から手をつないでほしくなるのかもしれません。 ※記事中の写真はすべてイメージ 作詞家・吉元由美の連載『ひと・もの・こと』バックナンバー [文・構成/吉元由美] 吉元由美 作詞家、作家。作詞家生活30年で1000曲の詞を書く。これまでに杏里、田原俊彦、松田聖子、中山美穂、山本達彦、石丸幹二、加山雄三など多くのアーティストの作品を手掛ける。平原綾香の『Jupiter』はミリオンヒットとなる。現在は「魂が喜ぶように生きよう」をテーマに、「吉元由美のLIFE ARTIST ACADEMY」プロジェクトを発信。 ⇒ 吉元由美オフィシャルサイト ⇒ 吉元由美Facebookページ ⇒ 単行本「大人の結婚」 快挙を成し遂げた狩野英孝、帰国便の搭乗券をよく見ると… 「さすがJAL」の声ホノルルマラソンから帰国する狩野英孝さんに、JALが用意したサプライズとは…。 ロケで出会う人を「お母さん」と呼ぶのは気になる ウイカが決めている呼び方とは?タレントがロケで街中の人を呼ぶ時の「お母さん」「お父さん」に違和感…。ファーストサマーウイカさんが実践している呼び方とは。 Share Post LINE はてな コメント
吉元由美の『ひと・もの・こと』
作詞家でもあり、エッセイストでもある吉元由美さんが、日常に関わる『ひと・もの・こと』を徒然なるままに連載。
たまたま出会った人のちょっとした言動から親友のエピソード、取材などの途中で出会った気になる物から愛用品、そして日常話から気になる時事ニュースなど…さまざまな『ひと・もの・こと』に関するトピックを吉元流でお届けします。
手をつなぐ 〜見えない絆を育てる時間
街で手をつなぎながら歩いている親子連れを見かけると、ふっと懐かしいような、淋しいような気持ちが胸をかすめます。
娘が15歳でアメリカに留学してから8年。ずいぶん時間が過ぎました。まさか15歳で手放すとは思っていませんでしたが、考えてみると親子で一緒に暮らす年月というのはそんなに長いものではないのです。
留学するのは、なかなか勇気のいる決断だったと思います。生半可な気持ちや、憧れではなく、人生を賭ける覚悟だったことは確かです。
ですから親が淋しいとか淋しくないとか、つまらないことを言ってはいけないと思いました。娘がこれから自分のステージをゼロから作ろうとしているのを応援するだけです。
親から離れる解放感もあったでしょうし、同じくらい不安もあったでしょう。でも、娘が覚悟を決めて巣立って行けたのは、小さいとき、どんなときも手をつないでいたからではないかなと思うのです。
娘が手をつなぎたいだけ、手をつないで、そして自分から手を離していった……そんな感じがします。
いつも手をつないでいること。そしていつも会話をすること。会話が成立しなくてもいいのです。
空がきれいだね。風が気持ちいいね。そんなことでいいのです。そして子どもの話を聞くのです。それでどう思ったの?そんなことがあったんだ……。
ジャッジを求められない限りジャッジすることなく、子どもが話すそのままをそっと手にとって愛でるように、話を聞くのです。
そんな時間が確かに私の人生の一時期に流れていたのです。遠い日のことですが、それらは何ものにも替えがたい美しい時間でした。
ですから若いお母さんと子どもが歩いているのを見かけると、そんな時間を大切にしてほしい!と思ってしまうのです。
子育ての悩みはあったし、仕事と両立させることがきつかったこともありました。それでも、過ぎてしまうと何もかもが夢物語のような気がしてくるのです。
娘と遠く離れていると、ときどき本当にゆめまぼろしだったのかしら、とふと思います。妙な感覚なのですが、これまでの人生すべてがゆめまぼろしだったような。
振り返る年月が多くなるにつれ、何か確かだったものが指の間をすり抜けていくような感があります。「いま、ここ」の自分の中から、母としての自分が薄らいでいくことの淋しさがあるのかもしれません。
それもまた人生の1ページであり、流れなのでしょう。もう少ししたら、私の方から手をつないでほしくなるのかもしれません。
※記事中の写真はすべてイメージ
作詞家・吉元由美の連載『ひと・もの・こと』バックナンバー
[文・構成/吉元由美]
吉元由美
作詞家、作家。作詞家生活30年で1000曲の詞を書く。これまでに杏里、田原俊彦、松田聖子、中山美穂、山本達彦、石丸幹二、加山雄三など多くのアーティストの作品を手掛ける。平原綾香の『Jupiter』はミリオンヒットとなる。現在は「魂が喜ぶように生きよう」をテーマに、「吉元由美のLIFE ARTIST ACADEMY」プロジェクトを発信。
⇒ 吉元由美オフィシャルサイト
⇒ 吉元由美Facebookページ
⇒ 単行本「大人の結婚」