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旅は書棚から始まっている 自分を解放するための旅を求めて

By - 吉元 由美  公開:  更新:

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吉元由美の『ひと・もの・こと』

作詞家でもあり、エッセイストでもある吉元由美さんが、日常に関わる『ひと・もの・こと』を徒然なるままに連載。

たまたま出会った人のちょっとした言動から親友のエピソード、取材などの途中で出会った気になる物から愛用品、そして日常話から気になる時事ニュースなど…さまざまな『ひと・もの・こと』に関するトピックを吉元流でお届けします。

旅は書棚から始まっている

旅心を募らせてくれる書棚。銀座のGINZA SIXに入っている蔦屋の旅行ガイドのコーナー、ガイドブックよりも各地の旅行記が充実していて、タイトルを見ているだけでもわくわくしてきます。

旅行記には人それぞれの旅のスタイルが描かれ、さまざまな価値観、感性で切り取られた旅の視点があります。そこには人肌感があり、実用的なガイドブックとはまったく異なる国の、街の、人たちの日常が描かれていて、作者の体験と共に楽しめます。

書棚は国別、街別になっています。さすがにパリ、ロンドン、ニューヨークなどは旅行記だけでなく、そこで生活している人たちの著書も多く、興味をそそられます。

うれしいのはモロッコ関係の本も多く揃っていること。次の次くらいの旅はモロッコと思っているので、時期が来たらゆっくり読みたいと、わくわくしてきました。そう、何年か先の旅であっても、旅はこうした瞬間からも始まっているのかもしれません。

絶対に行きたくないと思っていたインドに突然行こうと思い立った10年前。沢木耕太郎の『深夜特急〜インド・ネパール編』(新潮文庫)を読み返しました。安宿のベッドには南京虫がいる。物乞いの女に足を掴まれる。死体も生活排水も流れるガンジス川で沐浴する人々。聖なるガンジスの河岸で火葬されることを目指して生きている人々…。沢木耕太郎の放浪の旅を読み込み、覚悟して旅立ちました。

ホテル(それも高級ホテル)でお湯が出ることに感動し、パリッとしたシーツの清潔なベッドに感動。しかし、シャワーのお湯が口に入らないように固く唇を結び、食事に行くとフォークやスプーンを除菌ティッシュで拭きました。生野菜、フルーツは食べず。水はボトルの水のみ。細心の注意を払ったインドの旅…。

今やインドはIT関係で発展していますが、物乞いもスラムもガンジス川での沐浴も火葬も、沢木耕太郎がインドを旅した40年近く前と変わらないのでしょう。『深夜特急』は今でも多くの人に読まれていて、蔦屋の書棚にも平積みになっています。旅とは何なのか。人生という旅の途上で、人は無意識のうちに自分を解放するための旅を求めているのかもしれません。

わくわくしながら見ていた旅本の書棚から私が手にとったのは…大好きなパリの本でも、憧れのモロッコの本でもありませんでした。女優の中谷美紀さんの『インド旅行記Ι』(幻冬舎文庫)…またもやインドでした。延べ90日のインドのひとり旅。

まだ読み始めですが、中谷美紀さん…すごいです。あの演技力はひとりでインドへ行った気概と、さまざまな体験をしたことから発せられているのでしょう。毎日サンダルを洗って消毒し、除菌ティッシュを活用しまくる気持ち、とてもよくわかる。そんな滑稽なほどの用心深さも含めて、インドはおもしろいのです。

結局、本心はどこへ行きたいのか。銀座の蔦屋の旅本の書棚は、そう私に問いかけていたのでした。

※記事中の写真はすべてイメージ

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[文・構成/吉元由美]

吉元由美

作詞家、作家。作詞家生活30年で1000曲の詞を書く。これまでに杏里、田原俊彦、松田聖子、中山美穂、山本達彦、石丸幹二、加山雄三など多くのアーティストの作品を手掛ける。平原綾香の『Jupiter』はミリオンヒットとなる。現在は「魂が喜ぶように生きよう」をテーマに、「吉元由美のLIFE ARTIST ACADEMY」プロジェクトを発信。
吉元由美オフィシャルサイト
吉元由美Facebookページ
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