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究極のロマンスは、すこしせつなく 映画『シェイプ・オブ・ウォーター』

By - 吉元 由美  公開:  更新:

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(C) 2017 Twentieth Century Fox Film Corporation

吉元由美の『ひと・もの・こと』

作詞家でもあり、エッセイストでもある吉元由美さんが、日常に関わる『ひと・もの・こと』を徒然なるままに連載。

たまたま出会った人のちょっとした言動から親友のエピソード、取材などの途中で出会った気になる物から愛用品、そして日常話から気になる時事ニュースなど…さまざまな『ひと・もの・こと』に関するトピックを吉元流でお届けします。

究極のロマンスは、すこしせつなく

「声を失くしたイライザと、遠い海から連れて来られた“彼”。冷戦下のアメリカで、種族を超えた恋に落ちる2人。だが、国家の行方を握る“彼”に危険が迫る」

ベネチア国際映画祭で金獅子賞を受賞し、ゴールデングローブ賞でも2部門を獲得した映画『シェイプ・オブ・ウォーター』の試写を観ました。観終わってからしばらく、胸の奥に何ともいえない感覚が渦を巻く…不思議な物語です。誰も観たことのない究極のファンタジーであり、ラブロマンス…。ああ、なんて表現していいか分からないほど、イライザと“彼”の関係は異次元に存在します。

舞台は1960年代のアメリカ。米ソ冷戦時代に、核戦争の危険性が高まり、宇宙開発に両国がしのぎを削っていた時代です。アメリカでは公民権運動が起こり、不平等、マイノリティの人たちへの差別など、恐怖に包まれていた時代でした。

清掃員のイライザと“彼”は、政府の機密機関の研究所で出会います。イライザは、偶然目にした“彼”の奇妙な姿に神々しさを感じ、心惹かれていきます。緊張が張り巡らされているような国家機密を扱う研究所で、愛が生まれるのです。

それが愛なのか、共感なのか。信頼なのか。私たちにも経験があるように、誰かを好きになることに理由なんてありません。心が持っていかれるように惹かれるのに、理性で抗うことはできないのですから。しかし、その恋する吸引力は種族を超えていた…。観る人がどれだけ自分の中の枠を外していけるか。そこを試されているような感じです。

サスペンスのような展開と、愛の物語。イライザと“彼”がダンスをするミュージカルのようなシーン。はらはらするサスペンスの中でのこの展開に違和感を覚えながらも、こうあるべきという枠や差別や偏見の壁を壊していく、どんなこともこれからの世界では『あり』なのだと、また試されているような感じです。

『美女と野獣』『シザーハンズ』『人魚姫』など、種族を超えたラブストーリーがありました。心の目で相手を見て、愛することができるかどうか。その心の強さと純真無垢な感性に憧れます。物語なので「種族を超えた」という設定になりますが、これは人間にとって永遠のテーマのひとつになるのではないかと思います。

ギレルモ・デル・トロ監督が小さいころに観た『大アマゾンの半魚人』(1954)では、種族を超えた愛が悲劇的結末を迎えました。『大アマゾンの半魚人』へのオマージュとして、『シェイプ・オブ・ウォーター』では、ハッピーエンドの物語にしたかったそうです。

全体的にブルーの映像は、水の流れを感じさせます。オープニングの映像も流れるように不思議な世界、そしてイライザの少し妙な日常のルーティーンへと流れていきます。

私たちの固定概念を外したところに、物語があるのですね。『シェイプ・オブ・ウォーター』は、3月1日から全国ロードショーです。

シェイプ・オブ・ウォーター

2018年3月1日 公開

(C) 2017 Twentieth Century Fox Film Corporation


[文・構成/吉元由美]

吉元由美

作詞家、作家。作詞家生活30年で1000曲の詞を書く。これまでに杏里、田原俊彦、松田聖子、中山美穂、山本達彦、石丸幹二加山雄三など多くのアーティストの作品を手掛ける。平原綾香の『Jupiter』はミリオンヒットとなる。現在は「魂が喜ぶように生きよう」をテーマに、「吉元由美のLIFE ARTIST ACADEMY」プロジェクトを発信。
吉元由美オフィシャルサイト
吉元由美Facebookページ
単行本「大人の結婚」

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