「女は度胸」 女性初の国会議員が記した『胆で考える』ということ
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吉元由美の『ひと・もの・こと』
作詞家でもあり、エッセイストでもある吉元由美さんが、日常に関わる『ひと・もの・こと』を徒然なるままに連載。
たまたま出会った人のちょっとした言動から親友のエピソード、取材などの途中で出会った気になる物から愛用品、そして日常話から気になる時事ニュースなど…さまざまな『ひと・もの・こと』に関するトピックを吉元流でお届けします。
女は度胸、胆力を鍛えましょう
「胆で考えてください」
ある人から、こんなアドバイスをもらいました。頭で考えるのでも、心で思うのでもない。もっと奥にある、自分の根源的なところ、胆の力を鍛えて、胆が望んでいることをやりなさい、ということです。胆で考え、胆を鍛えるとは、本当に魂が望んでいることを、覚悟を決めてやり通すということだと、私は解釈しています。
胆とは、本心、勇気や度胸、どんなことにも恐れない気力が生じると考えられている身体の箇所。胆力、胆を据える、腹が決まる、腹が据わる、腹が癒える、胆を練る…。日本語には胆、腹にまつわる言葉がたくさんあり、胆、腹を鍛えることが人間力を高めることにつながることを示しています。
またへそ下三寸(9センチ)のところには気力が集まる場所とされている丹田があります。胆、腹に意識を向けることによって、物事に動じず、気力がみなぎってくるのです。
戦後、女性初の国会議員になり、女性の権利向上の活動など、多くの功績を残した園田天光光は、著書『女は胆力』(平凡社)の中で数多くの困難を胆力で乗り切ったエピソードを紹介しています。
早稲田大学政経学部の口頭試問の時に、「女性は竈の前に引っ込んでいろ」といわれます。これが昭和15年頃のこと。天光光は、胆に力をこめて「そんな考えの先生から学ぶことはありません」と伝え、退席します。そして法学部へ進み、なんと政経学部の授業に出る。政治経済を学びたい、という希望を叶えるのです。
これは単に短気であるということではなく、胆で考えた上での行動だったわけです。空襲で逃げ惑う中でも、胆で判断し行動したことで、九死に一生を得る体験をします。戦後の上野駅で行く場所を失くした人たちが餓死していくのを見て、これは何とかしなくてはいけないと思い立つ。そこから国会議員への道が開けます。常に胆に力を入れ、腹を決める。すると、世の中のためになるよい方向へと導かれていったそうです。
7年前に婦人科で手術を受けました。入院する前の日に、夫から「手術を受けることについてどう思っているのか」と聞かれました。
「生きていくためには、それしかない」
そんなふうに答えたことをよく覚えています。何の迷いも恐れも、悲しみも淋しさもありません。そんなことはいっていられません。この時、ささやかな胆力を発揮したのかもしれません。
誰にでも迷いはあります。葛藤も不安もある。胆力を鍛えるためには「いま、ここ」に集中すること、そして「やるべきことをやる」こと。そして、やはり何度もピンチをちゃんと乗り越えることです。感情に流されず、お腹に意識を集中して最善の方法を胆に問うてみる。その経験の積み重ねが胆力を高めていくのですね。
女は度胸。肝っ玉母さん。女は胆力。天光光さんの本のタイトルの通り、いざとなったら、胆を据えるのは女性なのかもしれません。
作詞家・吉元由美の連載『ひと・もの・こと』バックナンバー
[文・構成/吉元由美]
吉元由美
作詞家、作家。作詞家生活30年で1000曲の詞を書く。これまでに杏里、田原俊彦、松田聖子、中山美穂、山本達彦、石丸幹二、加山雄三など多くのアーティストの作品を手掛ける。平原綾香の『Jupiter』はミリオンヒットとなる。現在は「魂が喜ぶように生きよう」をテーマに、「吉元由美のLIFE ARTIST ACADEMY」プロジェクトを発信。
⇒ 吉元由美オフィシャルサイト
⇒ 吉元由美Facebookページ
⇒ 単行本「大人の結婚」