子供の言葉とどんぐりの思い出 小さな種に込められたいのちの可能性
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吉元由美の『ひと・もの・こと』
作詞家でもあり、エッセイストでもある吉元由美さんが、日常に関わる『ひと・もの・こと』を徒然なるままに連載。
たまたま出会った人のちょっとした言動から親友のエピソード、取材などの途中で出会った気になる物から愛用品、そして日常話から気になる時事ニュースなど…さまざまな『ひと・もの・こと』に関するトピックを吉元流でお届けします。
一粒の種に思いを馳せると
今朝、葡萄を一粒食べたら、ガリっと。
種のない葡萄だと思いこんで、何も考えずに噛んでしまいました。
小さな種をうっかり噛んだときの違和感というのか、残念な感じがしたのですが、ふとこの種から芽は出るのだろうかと思いました。
桃やメロン、スイカなど、大粒の種だったり、たくさんの種がある果物を食べたときに意識することはなかったのですが、一粒の小さな種にふと立ち止まってしまいました。
もしかしたら、この種にも可能性があったかもしれません。
手のひらの上の砕けた小さな種を見ながら、いのちの可能性に思いを馳せました。
娘が四歳の頃、「ものには作った人の心が宿っている」という話をしたことがあります。
お家には、「この家で仲良く暮らしてくださいね」という大工さんの心が宿っている。
野菜には、「これを食べて健康で元気になりますように」という農家の人の心が宿っている。
「もの」を作った人の心を感じることができたら、そのものを大切にする意味も深まります。
そんな話をしていたら、娘はテーブルの上にあったどんぐりを手のひらにのせてこう言いました、
「種には神様の心が宿っているんだね」
子どもたちは、時々はっとするようなことを言うものです。
この言葉は、私にとって宝物のような言葉になりました。子どもたちは大人よりもこの世界の「本当のこと」を知っているのですね。
どんぐりの思い出をもうひとつ。
大学生の頃、小さな従姉妹と散歩に出かけました。近くに雑木林があり、従姉妹は「探検しに行こう!」と林の中に入っていきました。
私はあまり気乗りがしなく、「もう帰ろうよ」と言ったのですが、従姉妹はどんどん奥へと入っていきます。
そして何かしゃがんでごそごそとしていると思ったら、私に小さな手を開いて言いました。
「ね、由美ちゃん。嫌だなあと思ってもちょっと頑張ると、こんなにいいことがあるよ」
小さな手のひらにはどんぐりが五つ。
これも生き方のひとつの法則のような。
もう40年以上前のことですが、この言葉も私の宝物なのです。
ガリっと噛んでしまった葡萄の種。
小さな一粒の中に、神様の心が宿っている。芽が出ていつか木と成長し、葡萄を実らせるかもしれない。
そこにはいのちの可能性があるのですよね。
そしてその可能性は自分のいのちにもつながっている。そう思うと、ありがたさで胸があたたかくなるのです。
いのちを紡ぐ言葉たち かけがえのないこの世界で
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※記事中の写真はすべてイメージ
作詞家・吉元由美の連載『ひと・もの・こと』バックナンバー
[文・構成/吉元由美]
吉元由美
作詞家、作家。作詞家生活30年で1000曲の詞を書く。これまでに杏里、田原俊彦、松田聖子、中山美穂、山本達彦、石丸幹二、加山雄三など多くのアーティストの作品を手掛ける。平原綾香の『Jupiter』はミリオンヒットとなる。現在は「魂が喜ぶように生きよう」をテーマに、「吉元由美のLIFE ARTIST ACADEMY」プロジェクトを発信。
⇒ 吉元由美オフィシャルサイト
⇒ 吉元由美Facebookページ
⇒ 単行本「大人の結婚」