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自閉症の息子に話しかけ続ける店員 「障がいに気付いていないのか」と思っていたら?

By - grape編集部  公開:  更新:

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※ 写真はイメージ

2021年8~10月に開催された、エッセイコンテスト『grape Award 2021』。

『心に響く』というテーマを軸に、コロナ禍により変化した生活スタイルが続く中、自分の周りであった心温まるエピソードや、心が癒されるような体験談を募集しました。

寄せられた376本もの応募作品の中から、最優秀賞が1作品、タカラレーベン賞が1作品、優秀賞が2作品、選ばれています。

今回は、応募作品の中から優秀賞に選ばれた『心も温まるラーメン屋さん』をご紹介します。

「今日のお昼ご飯は、何ですか?」「ラーメン」

週末、電車の中で交わす息子との会話。息子は11歳。知的には1歳。自閉症。単語は少し言えますが、パターンになっていない会話は難しい。急に大きな声を出すこともあります。

コロナ禍になり、マスクをすること、静かにすることが当たり前の世の中になった。しかし、両方苦手な彼にとってストレスな世の中になってしまった。

そんな中でも、週末に通うトランポリン教室が楽しみだった。教室へ行く途中、外食をするのが習慣だった。しかし、コロナ禍になり、店内での飲食は、大声禁止。難しくなった。

電車で教室に向かっている途中、西新井駅のホームへ降りた。立ち食いラーメン店があった。ここなら、外だし、電車が通るから大きな声を出しても誰も気にしないかも。

しかし、彼にとって、食事は座ってするもの。立って食べることができるだろうか?ドキドキしながら挑戦。大丈夫だった。しかも、このラーメンをとても気に入った。

それから、週末通うようになった。常連になり、店員さんと話すようになった。いつも息子に「こんにちは」「元気?」「おいしかった?」彼が答えることはほとんどないが、普通に話しかけてくれる。

大体の人は、息子の障がいがわかると、私に話しかけてくる。

もしかして、障がいがあることに気づいてないのかも?と思っていたある日、
「ここにはいろんな人が来てね、ヘルパーさんと一緒にラーメンを食べにくる子もいるよ。ホームで大きな声でアナウンスの真似をしている子もいるよ。いつも大きな声で独り言を言っているから、聞こえないときは、今日はいないのかなと寂しくなってしまう。」と。

私は、息子がいつも大きな声を出すたびに、ハラハラドキドキして、一生懸命止めていた。周りからの視線も気になり、皆に迷惑がられていると思っていた。それを、その子の存在と思ってくれる人がいてくれることに、とても心が救われ感動した。

帰り際、いつも通り息子に「いつもいっぱい食べてくれるね」と。私は「ありがとうは?」と言葉を促した。

すると、「言わなくてもわかっているから大丈夫」と、彼のペースを尊重してくれた。こんなに彼のことを理解してくれていることに、感謝の気持ちでいっぱいになった。私たち家族が安心して出かけることができる心のオアシスとなった。

今週も、西新井の駅が近づくと車窓から外を見て、ワクワクする息子。らーめんの看板をみつけ、下車した瞬間「キー」と大きな声で叫びながら、ラーメン店に走っていく。

その声を聞いて、「今日も来てくれたね」と、優しくほほえみかけてくれる店員さん。コロナ禍にならなかったら、なかった出会い。西新井駅のホームには、心も温まるラーメン店があります。

grape Award 2021 応募作品
タイトル:『心も温まるラーメン屋さん』
作者名:イルミ

※この作品は、3分7秒からご聴取いただけます。

ほかの受賞作品も知りたい人は、こちらをご覧ください!


[文・構成/grape編集部]

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