真冬に上着を忘れた警察官 震えながらの説得に違反者が放った一言
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筆者が交番勤務をしていた頃、同い年で公私ともに仲のよい相棒がいました。警察官を辞めた今でも交流は続いています。
彼をひと言で表すなら『天然』。
早朝の事故対応に向かう車内で、昇る太陽を見ながら「昨日は満月だったんだね…」と、真顔で謎の一言をつぶやくほどの天然っぷりです。
ですが、とにかく優しくて住民第一で、数字にとらわれず、目の前の人に真剣に向き合う警察官でした。
彼と組んでいると、妙に気を遣うこともなく、自然体で勤務ができたのを覚えています。
そんな天然な彼と、冬の寒空の下で発生した珍事件を紹介します!
冬の夜の追跡
ある冬の夜、パトカーで巡回中のことです。信号無視をする車を目撃し、すぐに追跡しました。
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車内は暖房が効いており、制服の上に着ていた外套(がいとう)を2人とも脱いでいました。外套とは、防寒・防雨のための上着のようなもので、冬の勤務には欠かせません。
追跡の末、車は停車。助手席の相棒が勢いよく降り、先に運転手の元へ向かいます。
慌てて運転手の元へ向かった末路
筆者が合流すると、彼は大きな身体をぶるぶる震わせ、歯をガチガチ鳴らしながら必死に話しています。
「う、う、うんてん、しゅ、しゅ、さん!おと、お止めした、り、理由は、わ、分かりますか…」
不思議に思って彼をよく見たら…なんと外套を着ていなかったのです…!
真冬の夜。相棒はカッターシャツと防護衣という薄着のまま、冷たい空気の中に立っていました。
人の身体というのは不思議なもので、一度震え始めるとなかなか止まりません。
さらに、運転手は「信号ですか?無視していませんよ」と否認。
それでも相棒は「ウゥゥゥゥ」と大きな身体を震わせ、歯もガチガチなりながらも、違反であることと、事故につながる危険性を必死に説明し続けました。
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違反運転手のまさかの一言
震え上がる相棒の姿を見かねたのか、運転手が思わぬ一言を発します。
「分かったよ、逃げないから…。とりあえず、コートを着てきなよ!」
違反したであろう人から、こんな気遣いをされるとは思わず、笑いがこぼれます。
相棒が一度外套を取りに戻り、再び話しかけようとした時、運転手はぽつりとこう話してくれました。
「確かに赤信号を無視した自覚がある。急いでいたから認めたくなかった。でも、寒い中あんなに震えながら説明されて、事故になる運転だと分かった。真摯に説明してくれてありがとう」
真摯に向き合えば不恰好でも伝わる
相棒も筆者も決して説明がうまくなかったと思いますし、本当に不恰好なコンビに映ったことでしょう。
それでも、真剣に向き合う姿勢は相手の心に届くことがあるのだと、あの夜に学びました。
カッコ悪くても、真剣さは、きっと伝わる。
今でも彼と会うたびに、『あの震えながらの説得』を思い出して笑いがこみ上げるとともに、ちょっと温かい気持ちにもなるのです。
[文・構成/りょうせい]