【『最愛』感想 2話】 丁寧に積み重ねる描写がもたらす独特の体温・ネタバレあり
公開: 更新:
大倉忠義「何かが間違っている」 飲食店に嘆きコメント、同情の声アイドルグループ『SUPER EIGHT(スーパーエイト)』の大倉忠義さんが、2024年11月15日にXを更新。焼き鳥店に行きづらい、嘆きの投稿に同情の声が集まりました。
あの童謡を歌っていた、ののちゃん!? 成長した姿に「美人になった」「別人級」と驚きの声あんなに小さかった、ののちゃんが…!6歳になった姿に「別人級に成長」「大きくなった」と驚きの声が相次いでいます。
Twitterを中心に注目ドラマの感想を独自の視点でつづり人気を博している、かな(@kanadorama)さん。
2021年秋スタートのテレビドラマ『最愛』(TBS系)の見どころを連載していきます。
かなさんがこれまでに書いたコラムは、こちらから読めます。
第1回の放送後から早くも話題や考察が盛り上がっているサスペンスドラマ『最愛』(TBS 金曜日22時 主演・吉高由里子)。
第2回は、現在の事件と過去を往還しながらヒロインの真田梨央(吉高由里子)と宮崎大輝(松下洸平)の15年を更なる回想で丁寧に埋めていくような回だった。
今回特に興味深かったのは、食事のシーンが何度も出てくることである。
これはおそらく、何をどんな状況で誰と食べているかが、端的かつ確実に人ひとりの人生を映し出すからだと思う。それらのシーンが、回想をより深みのあるものにしている。ドラマで放送された時系列に第2回の食事のシーンを書き出してみる。
食事シーンから見る『最愛』
まず一つ目は現在。
警察の事情聴取から帰ってきた梨央が会社の一室で顧問弁護士である加瀬(井浦新)と食事をするシーン。
二人で弁当をそれぞれに食べており、飲み物は一本のペットボトルをシェアしている。これだけでも二人の間にある深い信頼が読み取れるが、ここで梨央はニンジンが苦手である素振りを見せ、加瀬に渡してしまう。
また加瀬の弁当から自分が食べたい何かを摘まんでいる。家族以上に近しい、甘えられる関係がはっきり分かるやりとりになっている。
次の食事のシーンは、思い出の中、真田ホールディングス社長である母親の梓(薬師丸ひろ子)に引き取られた頃、母の梓、兄の政信(奥野瑛太)、梨央に加瀬を加えた歓迎の食事会とおぼしき高級中華料理のテーブル。
互いの距離の遠い大きなテーブルで、家族愛を語る梓の言葉は上滑りしている。梨央は母の手前、遠慮して苦手なニンジンを食べようとして食べられない。加瀬はその様子を静かに見守っている。
三つ目の食事のシーンは同じく思い出の中、豪華な自宅での梨央一人の食事。
梓は梨央のために、ぐずぐずなカボチャの煮物を作って家政婦に託してから仕事に出勤している。小さい頃に梨央がカボチャを好きだったという遠い記憶ひとつで。
娘への愛情はあるとわかる。しかしそれを表現するのも、届けるのも不器用な女性だと示唆する場面である。
そして、そのまま梨央が幸せな食事として思い出すのは、白川での大学寮の食事、父の作る牛丼だった。
それは何も失われなかった頃、賑やかな寮の食堂でみんなで分け合って食べた記憶である。誰かの特別でも、誰かの悪意が向けられることもない頃。
四つ目の食事のシーンも回想、悲しい出来事が続く梨央を加瀬が連れてきた行きつけの店。
「夕ご飯、食べましたか?」残してきた弟に会えず、兄からは絶えず嫌がらせを受け、母親からもなかなか理解を得られない梨央の苦しい状況で「夕食」でも「夕飯」でもなく、加瀬の「ゆうごはん」という響きが優しい。
この家では私があなたを守ります、という加瀬の言葉に深みと説得力をもたらす温かい場面である。
五つ目の食事のシーンは、大輝の回想。陸上部の大麻使用事件に巻き込まれた女子マネージャーの菜奈(水崎綾女)と大輝が食べるラーメンである。
どん底の中で二人はもがくように麺をすする。大輝の哀れみを拒むような「私は被害者やない」と呟く菜奈の強い目が印象的である。
六つ目は真田ウェルネス専務の後藤(及川光博)と、梓の高級寿司店での乾杯。
梨央のことを敵視している後藤は「梨央さんの未来に」と乾杯の音頭をとり、梓は「私たちの友情にも乾杯しましょう」と満開の笑顔で返す。梓もまた会社経営のパワーゲームの下で戦っている。
シャンパンの泡、グラスの音とともに乾いた空虚な言葉が行き交うシーンである。
そして、この回のラスト。夜中の帰宅途中、空腹の梨央が歩きながら食べていたシュークリームが、梨央の腕を引き寄せた大輝の胸で潰れる。
時に深く悲しみ、タフに戦い、そして加瀬という味方に見守られて積み上げてきた梨央の15年間が、ただ一つの小さなシュークリームで消し飛んでしまう。
それは心身ともに遠く離れていた梨央と大輝の二人の距離を一瞬で潰して0にしてしまう。
今回、何度も積み重ねた食事の場面の最後を飾る、鮮やかな逆転だった。
第2回にして、15年前の忌まわしい事件にまつわる謎が明かされる。しかし本当にそれで全てなのか、それより後にも何かあったのではないかと思わせる加減が絶妙である。
一つ何かが判明したあと、一つ過去を開く鍵が失われる。
そして、このドラマの素晴らしさの一つは、ロマンティックでありながら、同時にサスペンスとしても存分に怖くておぞましいという鮮やかな二面性である。
回を追うごとにますます深みを増すであろう物語が待ち遠しい。息をつめて金曜日の夜を待っている。
この記事の画像(全9枚)
最愛/TBS系で毎週金曜・夜10時~放送
ドラマコラムの一覧はこちら
[文・構成/grape編集部]
かな
Twitterを中心に注目ドラマの感想を独自の視点でつづり人気を博している。
⇒ かなさんのコラムはこちら