「当時の私を救う気持ちで描きました」 『あくたの死に際』漫画家にインタビュー
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母親「遊んでばっかりいないで」 叱るのかと思ったら… 「声出して笑った」漫画家のジョンソンともゆき(@tomo_yuki2525)さんは、Xに、ゲームをする子供と親のやり取りを描いた創作漫画を公開しました。ゲームのコントローラーを手にする子供に向かって、「あんた遊んでばっかりいないで」といい放つ母親。

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読者が「過去の自分が救われた」と思ってくれたら嬉しい
――そもそも、漫画家になろうと思ったきっかけはなんだったんでしょうか。
先ほどの話にも出た、漫画家の幼馴染の存在が大きいですね。
会社員時代はテレビの番組制作の仕事をしていて、仕事自体は楽しかったんですけど、体力面でとても大変でした。ある時、その幼馴染に仕事の弱音を吐いたら「じゃあ漫画家になっちゃいなよ。楽しいよ」といわれたんです。
「簡単になれる職業ではないよな」と思いつつも、私は「仕事を辞めてもなんとかなるでしょ」と思えてしまう楽観的なタイプなので、仕事を辞めて漫画家になりました。
もともと絵を描くのは好きで、幼い頃から、鉛筆を使ってたまに落書き程度の絵を描いていたんです。小学生の頃はよく漫画を描いて友達に見せていた気がします。
高校生や大学生時代、就職後はほとんど漫画を描けていなかったんですけど、いざ漫画家になって描くようになったら、当時の記憶が蘇りました(笑)。
――物語を文字のみで創る小説家と、絵と文字を使って描く漫画家、創作の手段は違えど『作家』であるという点においては同じですよね。創作との向き合い方において、黒田とご自身を比べた際に重なる部分はありますか。
私は創作する時、よくクヨクヨしたり悩んだりするんです。そういった性格は黒田と似ていると思います。
『マンガワン』に新連載として第1話が掲載される直前、漫画家の幼馴染と、ほかの漫画家の友達を交えて3人で通話していたんです。私が「もうすぐ載っちゃう!今からやめたい!間に合うかな」といったら、2人に「きみ、黒田みたいなことをいってるよ」と指摘されました(笑)。
(C)竹屋まり子/小学館
――約1年前、本作に込めたテーマについては「読者のみなさんがそれぞれ感じたことがテーマ」と考えていたそうですね。あれから時が経った2025年2月現在、本作のテーマに対する考え方は変わりましたか。
基本は変わっていないです。読者全員が「これ、自分じゃん!」や「自分だけに向けて描いてくれているのかも」と感じてくれたら嬉しいなと思いながら描いています。
本作の中には「このセリフは過去の私、あのセリフは『あの時の友達』に向けて描いている」というシーンが結構あります。そういうふうに描いた話には、読者から「自分かと思いました!」みたいな反応が寄せられることも多いんです。
また、昔の私を救いたい思いから描いている話やセリフも結構あるので、同じように「過去の自分が救われた」と思ってもらえたら嬉しいですね。
――「過去の自分を救うために描いた」と思うシーンやセリフの中で、特に印象的なものはありますか。
第10話で黒田が同じ職場の後輩にいった「才能ってあるかないか、0か100かじゃないんだ…多分」というセリフは、私自身に向けています。
昔は本当に絵も下手だったし、漫画を描く才能なんて全然ないと思っていたけど、今こうして漫画家になり「別に才能が100なくても描けるんだ」と気付くことができたんです。
(C)竹屋まり子/小学館
(C)竹屋まり子/小学館
――黒田と同様、自分自身と戦いながら作品を生み出されていたのですね。漫画家を続ける上で、大事にしていることはありますか。
編集さんはもちろん、漫画家の友達など、周りの人はすごく大事にしています。
締切に追われていて「間に合わない…」と切羽詰まっている時などに、チャットサービスの『Discord』を使って漫画家の友達10人くらいで作業通話をすることもよくありますね。
作画環境がiPadのため場所を問わずに描けるので、友達と一緒に喫茶チェーン店『コメダ珈琲店』などのカフェや、カラオケボックスに行って作業することもあります。
また、読者の方々からいただける感想はすごく励みになっています。読者の方々の存在は、本当に有り難いです。
――『マンガワン』で連載をすると、アプリ上で話ごとに読者コメントを読めるのが特徴だと思います。普段からコメントはどの程度チェックされていますか。
チェックする時もあれば「今回の話は自信がないから怖い。見ない」と決めて、どんなコメントがあったか代わりに編集さんに見てもらう時もあります。編集さんには助けられっぱなしですね(笑)。
チェックする時は「そこまで読み取ってくれるの!?」と感心するコメントが目に留まることもあって嬉しいです。先ほどお話しした、ミライと黄泉野の名前の対比関係について、コメント欄で考察している人もいましたね。
――今回お話をうかがう中で、何度も担当編集者の存在が登場している気がします。第4話で黄泉野が「担当者は一緒に死んでくれなくてもいいけど、一緒に走ってくれる人がいいな」と想いを述べていましたが、竹屋先生自身の想いと重なる部分はあるのでしょうか。
(C)竹屋まり子/小学館
(C)竹屋まり子/小学館
そうですね。私自身もそう感じるし、周りの漫画家さんや小説家さんと話をしていると「相性のよい編集さんが見つかることのほうがレア」といった声もよく上がります。
態度だけでもいいから、私と同じくらいの熱量で作品と向き合っていることが伝わってくると、頑張れるんですよね。
私は自分の絵を下手だと思っているので、恥ずかしくてあんまり自分の作品を読み返せなくて、すぐに記憶がなくなっちゃうんです。打ち合わせの時に「あのシーンでこのキャラ、どう動いてました?」と聞くことも多くて、編集さんにはいつも助けられています。
また、先ほどの話にも出た「過去の自分を救うため」に描いたセリフでもあります。過去に「なんか合わないな」と思う編集さんが私の担当に就いたことがあったんですけど、その時に感じたことを反映させていますね。
当時は「編集者はあくまで会社員だし…」と考えていて、「漫画家と一緒に死んでくれるわけないよな」と解釈していたんです。同時に「でも、一緒に走ってくれたらいいじゃん」とも感じていたので、当時の私を救う気持ちで「担当者は一緒に死んでくれなくてもいいけど、一緒に走ってくれる人がいいな」というセリフを描きました。
――本作の連載を通じて、実現したい目標があれば教えてください。
私の好きな人たちや、尊敬する方々などからも本作を面白いと思ってもらえたら嬉しいです。
そういった方々に面白いと声をかけていただける時、すごくアドレナリンが出ちゃいます!
――最後に、連載を楽しみにしている読者に対してメッセージをお願いします。
ずっと不安を抱えたまま描いているので、とにかく見捨てないでください…!
編集さんに対する気持ちと同じで、読者の方にも「一緒に、手をつないで走ってくれ」と思います。走っている最中、振り返ったら誰もいないなんて嫌です(笑)。
「なんか今回の話はちょっと微妙だな…」と思っても、1回だけではなくて『3回』くらいは許して、次の話も読んでほしいです!
2025年3月現在、『あくたの死に際』の単行本は第3巻まで発売されています。
スイッチが入ると寝食も忘れて執筆に没頭する黒田のように、本作のページをめくったら、読む手が止まらなくなること間違いなしです。
フィクションとして楽しむのはもちろん、リアルな日常の中で抱く感情を各登場人物に投影しながら、読み進めてみてはいかがでしょうか。
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[文・構成/grape編集部]