オダウエダ・植田紫帆もドハマり! 伊藤潤二『潰談』恐怖と笑いの絶妙なバランスに迫る
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『日傘』をレジに持ってきた年配男性客 恥ずかしそうにしていた理由が?なぜかレジでソワソワする年配の男性客。飛び出た一言に、店員がビックリ!

会計直後、商品を壊した客 飛び出たまさかの一言に、店員「ハァ~!?」買ったばかりの品を破損!客のとった行動に目を疑います。
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『日傘』をレジに持ってきた年配男性客 恥ずかしそうにしていた理由が?なぜかレジでソワソワする年配の男性客。飛び出た一言に、店員がビックリ!
会計直後、商品を壊した客 飛び出たまさかの一言に、店員「ハァ~!?」買ったばかりの品を破損!客のとった行動に目を疑います。
2025年9月から、grapeではお笑いコンビ『オダウエダ』の植田紫帆さんとの連載企画がスタート!
漫画を愛してやまない植田さんによる選りすぐりの漫画を、毎月1作品ずつ紹介してもらいます。
オダウエダ・植田紫帆が、伊藤潤二著『潰談』について語る
読んでくださりありがとうございます。私は吉本興業という会社に属しております「オダウエダ」というコンビの植田ともうします。
子供の時から続けている数少ないことが、「漫画を読むこと」でして、それがこの度お仕事に繋がりまして好きなことでお仕事をいただけるなんて有り難い限りでございます。
私が読んだ漫画の中から一作ずつご紹介出来るということで一発目は私の愛する伊藤潤二先生の作品から行かせて頂きたいです。
先日、漫画界のアカデミー賞とも言われるアイズナー賞の殿堂入りを果たされたということで益々の活躍をなさっている伊藤潤二先生でございます。
先生には私の恐怖的嗜好を形作って頂きました。
伊藤潤二先生の作品は身の毛もよだつ、そのまま抜けてどっか行く程のホラー作品ばかりでして、有名な作品だと「富江」「うずまき」「ギョ」など、どれも気を失うぐらいのめちゃくちゃな怖さです。
今回は「伊藤潤二傑作集11 潰談」をご紹介いたします。
こちらは短編集ですので先生の作品を読んだことない方やホラーのジャンルにまだ挑んでいないかたでも手に取りやすいかと思います。
まぁ、表紙がめちゃくちゃ怖いからホラー苦手な人は表紙でチビっちゃうかも♡
それでも手に取られた方にはまだ知らない快感が待っていますよ。
特に私がお勧めしたいのはタイトルにもある「潰談」というお話。
ある男、尾木が友人の杉男に南米旅行で手に入れた謎の壺を見せるところからお話は始まります。
©ジェイアイ/朝日新聞出版
その壺の中には蜜が入っており、それが神がかり的な旨さといって蜜を舐め、杉男に勧める尾木。
更に尾木は「この蜜を舐める前に言っておくが、気付かれないように飲めよ」と続ける。
その蜜を手に入れた時に強く注意されたらしい。
話半分でその蜜を舐める杉男。
本当に神がかり的な旨さにその蜜を尾木から分けてもらえないかねだるが断られ、その場を後にする。
その後なにを食べてもあの蜜の旨さに敵わないと思った杉男は友人たちと蜜を分けてもらえないかと尾木の家に向かう。
その家にあったのは蜜と部屋一面に広がる異臭の漂う潰れた”何か”だけだった。
蜜を舐めるたびに増えていく潰れた”何か”、一体これはなんなのだろうか。
と話は続いていくわけです。
©ジェイアイ/朝日新聞出版
今回この文を書くにあたってこの作品を読み直したのですが、このページの止まらぬ読書体験こそ伊藤潤二先生の作品の真骨頂だと私は思います。
この先恐ろしい展開が待っているのに止まらないコマを読む視線とページを捲る手。
まさにこの「潰談」のテーマと同じく、触れてはいけないものこそ触れてしまいたくなる、禁忌こそ破りたくなってしまうのです。
先生の絵のタッチは手描きだからこそ出る繊細さで書き込みの量も褒め称える意味で異常。
だからこそページ一面に異様さが溢れ出しています。
先生だからこそ生み出せる異物みが、この「潰談」では何かよくわからない潰れたものに現されています。
最初なんやこれはと思うのですが本能から遅れて理性がやって来て、その絵の意味を理解するのです。
©ジェイアイ/朝日新聞出版
めちゃくちゃ気色悪いのですが、もう一つ伊藤潤二先生の特徴として挙げるべき点がここで出て来ます。
ちょっとおもろいんです。なんか笑ってまうのです。
あまりにも不気味すぎて逆に面白くなってくると言いますか、お笑いにも通ずる”緊張と緩和”の技法を先生は使われているので怖いのに面白く感じてしまいます。
これが伊藤潤二先生の良さです。
先生はかなりお茶目な方なので多分狙ってこのページを書いていらっしゃるのだなと、漫画を通して先生が楽しんでいらっしゃるのが伝わって来ます。
読んではいけないのに読んでしまうホラーに狂気的な笑いを添えていらっしゃるところが大好きなところです。
「潰談」のネタバレは伏せておきますので気になる方は是非その目で、貴方自身の目で見に行ってくださいませ。
そして、伊藤潤二先生。
いつも他では味わえない経験を与えてくださりありがとうございます。
これからの作品も楽しみにしております。
お身体に無理をなさらず、少しずつで問題ございません。少しずつでも恐怖の蜜を垂らしていただけると私はどこまでも舐めに行きますので。
[文/植田紫帆 構成/grape編集部]