【『インビジブル』感想5話】 『それ以上』の一線
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2022年4月スタートのテレビドラマ『インビジブル』(TBS系)の見どころを連載していきます。
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期待のない関係なら失望もない。いかに利用するかの駆け引きがあるだけだ。
だが、互いに期待と信頼が生じ始めた時に、皮肉なことに相手の粗(あら)も見え始める。
距離が縮まれば、見たくないものも目に入る。誤魔化しているところもわかる。
そこが『知人以上』の最初の一線である。そこから引くか、踏み出すか。
裏社会で恐れられている犯罪コーディネーターが、警察相手に協力者として指名したのは、数年前に目の前で後輩を殺されて以来、荒れた捜査を続けている無骨な刑事だった。
そんな異色のバディが数々の事件に立ち向かう『インビジブル』(TBS系 金曜日22時)、いよいよ中盤折り返しの5話目である。
物語が始まった時から、ずっと微かな違和感があった。
犯罪者たちから恐れられ、『インビジブル』と呼ばれている犯罪コーディネーターのキリコ(柴咲コウ)は確かにクレバーで、人をくったようなところがあり(志村をからかう「キレッキレじゃん」の表情の魅力的なこと)、犯罪の知識にも通じているけれども、どうも倫理観が真っ当なのである。
それもまたキリコという人物の魅力に違いないのだが、本当に彼女がインビジブルなのか、あるいは彼女一人だけがインビジブルなのかは、おそらくこのドラマを楽しんでいる多くの人たちの頭の片隅に、ドラマの当初からあった疑問ではないかと思う。
前回のラストで、主人公の刑事・志村貴文(高橋一生)の後輩・安野(平埜生成)が殺害された事件は、インビジブルの指示した犯罪であることが判明する。
激高する志村相手に何も答えず、キリコは直後に姿を消してしまう。3年前の殺人の情報、キリコの見えない思惑、複雑な感情を抱えたまま志村はキリコを探す。
その過程で志村はハッカーのラビアンローズ、通称ローズ(DAIGO)に、半ば無理矢理協力を求めるのだが、このローズのキャラクターが鮮烈でとてもいい。
初回、第3話とハッカーとして少し登場していたローズだが、回を追うごとに『キャラ立ち』していくのが分かる。ジェンダーレスで派手で一見軽薄だけれども、知的好奇心に溢れている。
志村が連れてきた警察の鑑識の近松(谷恭輔)に興味津々で絡みたがるが、ハッキングを始めれば知識と能力をフル稼働して仕事に没頭する。
キャラクターの癖は強いが下品にならないのは、演じているDAIGO本人の持つ清潔感ゆえだと思う。この先の後半も繰り返し見たいキャラクターである。
また今作では、志村を監視するキャリア監察官・猿渡紳一郎を演じる桐谷健太もまた、助演としてニュアンスのある演技を見せている。
auのCMで、浦島太郎を元にした『浦ちゃん』での印象が強く、明朗な好青年のイメージで語られがちな桐谷だが、NHK連続テレビ小説『まんぷく』では敵か味方か判然としない胡散臭い男・世良勝夫を演じた。
宮藤官九郎脚本の『俺の家の話』(2021年 TBS系)では芸養子として主人公の家に引き取られて屈折した心情を押し殺して暮らしている青年・観山寿限無をと、内面を表に見せない複雑な役を作品のトーンに合わせて演じ分けている。
今作の猿渡も真意はなかなか表に出さないが、常に志村に厳しくあたる言葉と裏腹に、無茶な捜査に走りがちな志村を案じている様子が垣間見える。
その真意は志村に通じているやらいないやら、毎回絶妙なさじ加減なのが見ていて興味深い。
奔走の果てに志村はキリコを見つけ合流する。
そこで志村はキリコが桐島と名乗る誰かを追っていること、その為にインビジブルを装って警察に近づいたということを見抜く。
そして今回の最後、二人の前に桐島つまり本来のインビジブルが現れる。
本来のインビジブルであるキリヒトを演じるのは永山絢斗。登場のときから有無をいわせぬ暴力の気配をまとっているのはさすがである。
更に、キリコとキリヒトが姉弟であることも明かされて5話目は終わる。
ともにインビジブルを名乗る姉と弟の関係は、必ずしも良好ではなさそうである。
ここまでにキリコは、志村相手に何かもの言いたげにしつつも自分の意図を語ることはなかったし、この回でも一度言いよどんで結局告げずにいる。
それは弟のことまで告げてしまえば、志村を後戻りできない大きな危険に引き込むというためらいではなかったか。
その一線を目の前に、志村は立ちすくむのか、踏み込むのか。物語は加速する。
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[文・構成/grape編集部]
かな
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