【『ラストマン』感想3話】福山雅治・大泉洋、バディの進化と物語の深化
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2023年4月スタートのテレビドラマ『ラストマン』(TBS系)の見どころを連載していきます。
かなさんがこれまでに書いたコラムは、こちらから読めます。
初回はFBI捜査官・皆実広見(福山雅治)、2話目は刑事・護道心太朗(大泉洋)、それぞれどんな性格の人物かの紹介だった。
いわばこれまでは視聴者に対する名刺の交換で、3回目からが本格的なバディの始動。
アメリカから日本の警察庁にやってきたのは、全盲のFBI捜査官、皆実広見。
お飾り扱いの交換留学生としてやってきたはずが、皆実は案内担当の刑事・護道心太朗を連れて現場での事件解決に乗り出していく。
現場を仕切る捜査一課から反発を受けつつ、有能かつ人たらしの皆実は心太朗の力を借りながら徐々に理解者を増やし、難事件を解決に導く。
日曜の夜、視聴率も好調な『ラストマン-全盲の捜査官-』(TBS系 日曜21時)。
第3話は人気刑事ドラマに絡む若い俳優の殺人事件である。
早朝、不祥事で落ち目となっていた若い俳優が殴打殺害されているのが発見され、遺体の第一発見者もまた俳優、国民的スターの羽鳥潤(石黒賢)だった。
羽鳥が演じる人気刑事ドラマシリーズの大ファンだという皆実は、半ば呆れる心太朗を連れて嬉々として羽鳥のもとに事情聴取に向かう。
国民的人気俳優の気さくな対応と演技へのストイックな取り組みに感心する二人だったが、羽鳥は犯人ではないという皆実の見立てをよそに、羽鳥が犯行を自供したことで事件は意外な展開へと転がっていく。
国民的スターとその妻、共演者の女優、ドラマのプロデューサー。
それぞれに隠したいことが絡み合って殺人の真実を覆い隠す複雑な過程を、皆実と心太朗は一つ一つ要素を拾いながら解き明かしていく。
今回もっとも興味深いのは、皆実が心太朗に対して捜査の中では多くを語らず、心太朗自身の判断を期待しながら行動を共にしていたことである。
むしろ「私のバディは、そんな(ネタを共有する)必要はないはずですが」と突き放し、心太朗も自分の能力を証明すべく受けて立つ。
一方で、皆実は彼特有の視覚以外をフルに活用した捜査の様子を逐一、心太朗に見せている。材料は提供しつつ、それを心太朗がどう調理していくのかを見るように。
皆実のその様子には、自分が選んだ相棒をただの『添え物』にはしたくないという願い、対等な相棒と充実した日々を過ごしたいという願いが見えるようだ。
そして初回と2話で、私たちも皆実の捜査の流儀を知りつつある。
鍵に触れる指、玄関の床の違和感、台本の匂いを確かめる仕草、繰り返し差し出されるハンドクリーム。
心太朗と私たち視聴者は、皆実の微妙な表情の変化を見つめつつ、どの要素が犯人に繋がるのかを緊張感とともに考える。
匂いか、触覚か、それとも声か。意外にも皆実が重点的に求めた要素は『チューブの潰し方』であった。
改めて皆実広見という男が見せてくれる、人ひとりを構成する要素の細かさ、複雑さに驚かされる。
ドラマの中で、最終的に事件の種明かしに費やした時間はおよそ10分強。
だがそのボリュームを感じさせない流れるような種明かしで、冒頭から解決まで一切緩めず駆け抜ける構成の見事さに唸った。
回を追うごとに次々と人たらしの本領を発揮する皆実だが、今回は日本のドラマが好きだったり、女優のゴシップに本気でがっかりしたりと、意外とミーハーという愉快な一面を見せてくれた。
それに呆れながらも、相棒として凸凹が噛み合っていく心太朗の様子も楽しい。
とりあえず人前の『シンディー(皆実が心太朗につけた愛称)』呼びは嫌がりつつ、バディ二人ならもう『シンディー』呼びでかまわないようである。
そして今回はバディ二人に加えて、心太朗の昔の恋人で現在は捜査一課の班長を務めている佐久良円花(吉田羊)の仕事ぶりが描かれていた。
殺人事件自体が解決したあとも、その事件を引き起こした人々の根本の怒りや悲しみをしっかり掘り起こし、昇華させる。
直接は組織内の評価に繋がらないだろうその仕事に、皆実が大きな敬意を表したのが印象深かった。
こうした硬質で有能な女性の役は吉田羊の十八番(おはこ)である。
今回は皆実の動向を監視しておきたいらしい護道家の思惑も垣間見え、この先バディの二人はもちろんのこと、佐久良、吾妻、護道泉ら周辺の面々の人物像もより奥行きを得て立体的になっていくだろう。楽しみに待ちたい。
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[文・構成/grape編集部]
かな
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