【『ラストマン』感想7話】福山雅治、大泉洋、永瀬廉…男たちの想いがほろ苦い
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2023年4月スタートのテレビドラマ『ラストマン』(TBS系)の見どころを連載していきます。
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下心と相手に尽くしたい気持ちは、グラデーションのように繋がっているのだろうけれども、自分自身の内面でも曖昧なものを、他人の真意となると到底分からない。
全盲にして千里眼の男は直感でそれを見抜くけれども、私たち凡人にはそんなことは出来ないわけで、献身か打算か、最後は自分の受け取り方次第になるのだろうなと今回の『ラストマン-全盲の捜査官-』(TBS系日曜21時)を見て思った。
アメリカから警視庁の交換留学生としてやってきたのは全盲のFBI捜査官だった。
その男・皆実広見(福山雅治)は、壮絶な過去を全く感じさせない人たらしの魅力と、高い捜査能力で案内役の刑事・護道心太朗(大泉洋)を相棒に、捜査一課の難事件を解決していく。
後半に入った7話は、ビターな愛情のエピソードだった。
埠頭から白骨化した遺体を積んだ車が引き上げられ、車のデータから遺体は行方不明の資産家の高齢男性・葛西征四郎(小林勝也)だと判明する。
その高齢男性には40歳近く年の離れた美しい妻・亜理紗(岡本多緒)がおり、いわゆる『後妻業の女』として殺人の疑いが濃厚にかかっていた。
しかし亜理紗に直接会って話をした皆実は、亜理紗に好意を抱き、呆れる心太朗や捜査一課の面々をよそに彼女は犯人ではないと断言する。
今回、視聴者待望の皆実の離婚した妻、デボラジーン・ホンゴウが登場である。演じているのは木村多江。
しなやかで風が通り抜けるように明朗だが、言動の端々に深い知性を感じさせる女性を好演している。
印象的なのは、デボラが皆実に自身のグラスにワインを注ぐように音で催促するシーン。
彼女にとって、皆実は庇護や介護の対象ではなく、何をどこまで出来るのかを知り尽くした、心許せる相手として接していると分かる場面だった。
事件解決後のバーのシーン、皆実はデボラに「君は同情ではなく、愛情で私と結婚してくれました」と感謝をもって語りかける。
この二人の信頼の間には、もう関係性の肩書きはいらないのだろう。
それは同時に『同情でなくて愛情』、それが皆実広見という人物にとってどれだけ希有で大切なものだったか透けて見えるようで、少し切なかった。
後妻業殺人として確定寸前だった事件は、皆実と心太朗の機転で、若い妻が老いた夫を深い愛情で守ろうとしていた真実が明かされる。
自分を犠牲にしても老いた夫だけでも守りたかった妻と、若い妻の奔走が金目当ての打算だと思いながらも、妻をおいて逃げられなかった夫のすれ違いがほろ苦い。
そんな事件のあと、佐久良(吉田羊)への想いを閉じ込めてきた心太朗の心境にもいささかの変化があったようである。
一方で佐久良の部下として実績を積んできた馬目(松尾諭)もまた、キャリアの岐路で佐久良への想いを告げるべきか迷っている。
未練や後悔や迷いが絡み合い、働き盛りで仕事に脂がのった世代の恋慕は、どうしても変化を前に動けずに立ち尽くす。
だからこそしがらみのない若い世代の泉(永瀬廉)は、どさくさ感満載だとしてもちゃんと気持ちを伝えてくれよともどかしくなるけれども、それでもやはり永瀬廉のシャイな『揺れ』は魅力的だ。
そして演技の繊細さとは対照的に、4話と今回で魅せた格闘シーンもまた、これから時代劇の殺陣や、もっと長いアクションで見てみたいと思うような華と切れ味だった。
今回のラストで、ついに心太朗は皆実がこれまで語らなかった41年前の事件と自分達の関わりを知ってしまう。
下心と打算しかないように見えた人間が、実は深い献身を捧げていたと明かされる事件の最後に、打算のない相棒だと信じていた相手には、そもそも下心があったのだと知る。
薄暗がりに立ち尽くす心太朗、大泉洋の横顔には、静かな絶望と怒りが滲んでいる。
だがしかし、皆実が逮捕された葛西征四郎と最後に対話した言葉がこれだった。
「人が人を好きになるとき、そこに理屈なんかありません。年齢も性別も、人種も国籍も一切関係ない。どんな二人にも、愛情は生まれることがあります。そしてそれは、すべてが素晴らしいことです」
これは皆実が葛西へ贈る言葉であると同時に、被害者家族である自分と加害者家族である心太朗も、きっと境界線を越えて理解しあえると心太朗に語りかけた言葉なのではないか。
皆実のその真摯な想いが、心太朗に届くことを願っている。
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[文・構成/grape編集部]
かな
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