【考察】耕一、大胆な提案をおこなう真意が? 『ザ・ロイヤルファミリー』第8話
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- 出典
- TBS






SNSを中心に注目ドラマの感想を独自の視点でつづり人気を博している、イラストレーターの渡辺裕子(@satohi11)さん。
2025年10月スタートのテレビドラマ『ザ・ロイヤルファミリー』(TBSテレビ)の見どころを連載していきます。以下、ネタバレが含まれます。
渡辺裕子さんがこれまでに書いたコラムは、こちらから読めます。
山王耕造社長(佐藤浩市)が亡くなって一年。
相続馬限定馬主なので馬を買うことはできないけれど、勉強になるはずと栗須(妻夫木聡)に連れられてセリの会場に来た耕一(目黒蓮)は、耕造のライバルだった椎名社長(沢村一樹)の息子・展之(中川大志)と出会う。
耕一がいいと思った馬を競り落として購入したのは、自分と同年代の展之だった。
耕一が耕造から受け継いだ馬・ロイヤルファミリーはなかなか勝つことができず、焦る耕一はジョッキーを隆二郎(高杉真宙)から翔平(市原匠悟)に交代させるなど、自分で考えた計画をチームに提案するが、全員に反対され、不満を募らせる。
そんな中、展之に誘われて『若手馬主の会』に入った耕一は、競馬界の考えの古さを批判する展之とどんどん親しくなっていくが…。
いつも着古したトレーナーにジーンズ姿。前髪は目が見えないほど伸びている。
自分の見た目についてまるで考えてなさそうな大学生の耕一は、うっかりすると中身が目黒蓮さんであることを忘れてしまいそうなほど、もっさりしている。
大学を出て社会人となり、服はスーツに変わったけれど、中に着ているのはヨレヨレのシャツ。
ネクタイを緩く締めている姿は、やっぱり、もっさり。
「こういう場では、ネクタイはきちんと締めた方がいいんじゃない?ほら、シャツにはアイロンをかけないと」と、テレビの中の彼につい声をかけたくなりつつも踏みとどまった視聴者は、きっと私だけではないだろう。
しかし、見た目についてはまだしも、ずっとロイヤルの馬を見てきた調教師の広中(安藤政信)たちの考えを全否定するような『ボクの考えた最強のファミリーへの道』をいきなり発表する姿を見た時は、さすがに「ちょっと待ちなさいー!落ち着いてー!」と、肩を掴んで揺さぶりたくなった。
言い方や順序を考えずに発言する彼にハラハラしすぎて、視聴者全員が耕一の世話焼きな保護者に変身してしまいそう。
すぐそばにいる栗須は、心配ともどかしさでもっと大変なことになっているだろう。
同じように展之に振り回されている相磯(吉沢悠)とふたりのために、胃に優しい食べ物を集めた『お疲れ様会』を開いてあげたい。
古い慣習に囚われている競馬界に対して、いろいろ思う若い馬主たちの気持ちはわかる。
しかし、酔ってケンカして警察のお世話になるなんて、「ほんとに何をやってるのー!」と、この日何度目かの耕一へのお説教をしそうになったところで、彼への評価が一変する。
なかなか気持ちを言葉にできない不器用な耕一の真意に気がつくのは、やはり、人を信じ続け、しつこくて諦めない人・栗須だった。
ファミリーを一生面倒見ると決めたからこそ、賞金を稼ぐ。そのための、2年後の有馬で勝つための長期計画。
その頃には翔平が成長していることも見越して、今からジョッキーを交代。
そしてケンカの現場では翔平をかばって逃していた。
まだ若い耕一が、勝利を焦っているだけだと思い込んでいた自分が恥ずかしい。
しつこい栗須は、泣き虫の栗須でもある。
今回の彼の涙は、耕一がずっと「あの人」と呼んでいた耕造のことを「父」と言い直した瞬間に流れた。
父と一緒にいられた時間はわずかだったけれど、耕造の教えは耕一の中にある。必死に働いて育ててくれた、母の愛も残っている。
ずっとひとりで無言で夕食を食べてきたこともあり、自分の思いや感情を誰かと分かち合うのが苦手な耕一だけれど、もうひとりじゃない。
向かい合って大盛りの定食を食べてくれる栗須がいる。そしてロイヤルのチームもいる。
相手に自分の気持ちをちゃんと伝えて、相手の言いたいことをちゃんと聞き、その上でベストを探す。
まだそれが難しい耕一がうまくできるようになった時、今までガチャガチャしていたすべてのピースがぴたりとはまるように、ファミリーは勝てるのではないだろうか。
最初のシーンでもっさりしていた耕一は、ラストシーンではきちんとスーツを着こなしていた。
あれから栗須に、大人としての振る舞いを少しずつ教わったのだろう。
固く結ばれたネクタイに、彼の決意の固さも見える。前髪で人を拒絶するように隠していた目にも光が宿り、展之を強く見つめる。
展之は「安い」と大喜びしながら3900万円で、耕一がいいと思っても買えない馬を購入し、ロイヤルチームから離れた隆二郎をその馬・ソーパーフェクトに乗せ、勝利する。
耕一が持てないもの、手放したものをすべて持っている展之と、ファミリーとロイヤルチームの人々だけしかない耕一。
ふたりはこれからどういう関係になっていくのか。
そして今回、耕造ではなく栗須が言った。
「絶対に私を裏切らないでください」
栗須は何があっても最後まで耕造を裏切らずに彼を見送った。耕一は同じことができるのか。
ドラマはとうとう最終章。ますますおもしろくなってきた。
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[文/渡辺裕子 構成/grape編集部]
渡辺裕子
SNSを中心に注目ドラマの感想を独自の視点でつづり人気を博している。
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