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カラテカ・矢部太郎の誠実な受賞スピーチに会場も号泣、そして勇気を貰う!

By - grape編集部  公開:  更新:

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2017年10月末の発売以来38万部のベストセラーとなり、口コミでさらに売り上げを伸ばし続けているカラテカ・矢部太郎さんの著書『大家さんと僕』。

矢部さんと下宿先の大家さんとの交流を描いた、心温まる作品です。

お笑い芸人ならではの独特のユーモアと、究極にほっこりする優しさいっぱいの内容が日本中をとりこにし、2018年4月には手塚治虫文化賞の短編賞を受賞しました。

6月7日に授賞式が行われ、矢部さんが受賞スピーチでその時の思いを語りました。口下手でシャイだという矢部さんの精一杯のスピーチに、多くの人が涙し、そして勇気をもらったのです。

カラテカ・矢部太郎の受賞スピーチ全文

(贈呈されたブロンズのアトム像を見つめながら)あ…ありがとうございます…。思った以上にアトム像が重いです…。

このたびは手塚治虫先生という『漫画の神様』のお名前がついた賞を受賞させていただきまして、大変光栄です。

神様をもおそれぬことを思い切っていわせていただきますと、手塚先生はどんなに売れっ子になられても、若い作家の先生の作品を読んで嫉妬されることがあったというお話を聞いたことがありまして、天国の手塚先生に、僕の本を読んでいただき、そしてほんの少しでもいいので嫉妬していただけたら、嬉しいです。この賞がそういうものだったらいいな、と思います。

僕はいま40歳で、38歳の時に漫画を描き始めました。38歳で漫画家になるといったら、普通は周囲が全力で止めると思うのですが、僕の場合は、「作品にしたほうがいいよ」といってくださった方がいました。

倉科遼先生は僕の漫画をとてもほめてくださって、自分が自費出版してでも出したいといってくださいました。相方の入江くんもすすめてくれて、入江くんのほうは僕はあんまり覚えていないんですが、本人がそういうので、そうなんだと思います。

だから、新しいことに挑戦するのが苦手な僕ですが、描き始めることができました。ほかにも、デジタルで描いているので、文明の利器に助けられたということもあると思います。

でも一番は、大家さんがいつも、「矢部さんはいいわね、まだまだお若くて何でもできて。これからが楽しみですね」といってくださっていたのですね。

ご飯を食べていても、散歩をしていても、ずっといつもいってくださるので、本当に若いような気がしてきて、本当に何でもできるような気がしてきて…。

これはあまり人にはいっていないのですが、僕の中では、38歳だけど18歳だと思うようにしていました。だからいま、20歳(ハタチ)なんです。何を開き直っているんだと思われるかもしれませんが、これは本当に効果があって、10代だと思ったら大概の失敗は許せました。

人生何があるか分からないとよくいいますが、中学生のころ、図書室で1人で『火の鳥』を読んでいた僕が、いまここにいるなんて思いもよらなかったですし、芸人になって長く経ち、次第にすり減り、人生の斜陽を感じていた僕がいま、ここにこうしていることも、半年前には想像もつきませんでした。

それでも、あのころ、全力で漫画を読んでいたこととか、芸人として仕事をして創作に関わってきたこととか、子どものころ、絵を描く仕事をする父の背中を見ていたこととか、なんだかすべては無駄ではなく、つながっている気がしています。それは僕だけじゃなく、みんながそうなのではないかとも思います。

お笑い芸人が僕の本業なのですが、人前でうまくしゃべることが苦手です。そんな「うまく言葉にできない気持ち」を、これからも少しでも漫画で描いていけたらと思っています。

本日は本当にありがとうございました。

カラテカ・矢部太郎のスピーチに、多くの人が涙

会場でこのスピーチ聞いていた矢部さんの先輩で飲み仲間の俳優・木下ほうかさんをはじめ、漫画家の里中満智子さん、手塚先生の長女の手塚るみ子さんなど、たくさんの人たちがこのスピーチを大絶賛し、涙したそうです。

そして、各メディアでもこのスピーチが紹介されたことから、ネット上でも大きな反響がありました。

・カラテカ・矢部太郎さんのスピーチに感動!新しく何かを始めるのに年齢を気にする必要はないんだ!と強く思った。

・矢部さんの誠実なスピーチに心が震えた。同世代だけど自分も頑張らなきゃ!

・とても口下手だとは思えない立派な口調で、力強いメッセージを感じた。この人は才能に恵まれてるし、まわりの人にも恵まれてると思う!

・ただただ号泣。矢部さんの大家さんを思う気持ちがしみました。これからも大家さんを大切にして欲しい。

何気なく始めた漫画によって、わずか半年でこんなに絶賛され、注目される日が来るとは…本当に人生は分からないものですよね。

そして矢部さんが自分を18歳だと思い込んで、新しい世界に飛び込んだ時の心構えはきっと、誰にでもあてはまる秘けつになるでしょう。

そんな矢部さんも2018年6月30日に誕生日を迎えました。また新たな気持ちで、素晴らしい作品を描いてほしいですね。


[文・構成/grape編集部]

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出典
新潮社

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