「かわいそうだから」は許されない! 野生動物にエサをあげてしまうと…?
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連日のように報道される、クマなどの野生動物の出没ニュース。本来、山奥で暮らしているはずの野生動物が、なぜ人里に降りてくるのでしょうか。
その原因の1つとして指摘されているのが、観光客などによる『餌づけ』です。
「お腹を空かせてかわいそう」
「ちょっとあげるだけなら…」
そんな軽い気持ちで与えた食べ物が、野生動物から『人を恐れる気持ち』を奪い、結果として人身被害や、その野生動物の殺処分という悲しい結末につながっているという声もあります。
弁護士「『違法』になるケースがあります」
そもそも野生動物への餌づけは、法的に問題はないのでしょうか。
大阪府大阪市で、まこと法律事務所を運営する北村真一弁護士にうかがいました。
――野生のクマやサルにエサをやることは、犯罪になるのでしょうか。
はい、多くの自治体で『条例違反』として禁止されており、罰金などのペナルティが科される可能性があります。
野生動物は、一度『人間は食べ物をくれる存在だ』と学習すると、人里に居着き、農作物を荒らしたり、人を襲ったりするようになると言われています。
餌づけは、一見優しさのように見えますが、結果的にその動物を駆除(殺処分)せざるを得ない状況に追い込む可能性もある点は忘れてはいけません。
――では、公園のハトや野良猫へのエサやりも違法ですか。
ハトや野良猫へのエサやり自体を直接禁止する国の法律はありませんが、やり方によっては違法になります。
例えば、食べ残しを放置して、悪臭や虫を発生させた場合には、廃棄物処理法違反(不法投棄)や軽犯罪法違反に問われる可能性があります。
また、エサやりで集まった動物が、フン害や鳴き声で近隣住民の生活を妨害した場合には、自治体の迷惑防止条例違反に問われかねません。
実際に、近隣住民から訴えられ、エサやりをしていた人に対して損害賠償請求が認められた裁判例も存在します。
「かわいそうだから」という理由だけでは、許されないケースがあるのです。
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本当の『優しさ』とは何か
厳しいルールや悲しい結末があるにもかかわらず、なぜ餌づけをする人は後を絶たないのでしょうか。
そこには、『自分だけは特別』という心理や、『動物と心が通じ合った』という錯覚があると言われています。
野生動物が自分に近づいてくる体験は、非日常的で、強い承認欲求を満たしてくれます。
『私が助けてあげている』という正義感が、その行為がもたらす長期的な悪影響から目を背けさせてしまうのかもしれません。
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動物を愛する気持ちは大切です。しかし、その愛が、動物の野生の本能を狂わせ、人間との共存を不可能にしてしまっているとしたら、それは愛ではなく、人間のエゴなのではないでしょうか。
お腹を空かせているように見えても、野生動物たちは自然の中で生きる術を持っています。
人間が安易に手を差し伸べないことこそが、動物たちの命を守る、本当の『優しさ』なのかもしれませんね。
[文・取材/ことのは 構成/grape編集部]