『座らせろ』vs『譲らない』 優先席のトラブル、弁護士に聞いてみたら…
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電車やバスには、妊婦や高齢者など、さまざまな利用者が乗り合わせています。
そのため、優先席の前に立った時、「どの人を優先すべきなのか」と判断に迷うことがあります。
見た目では体調が分かりにくい場合もあり、声をかけるかどうか悩む場面も少なくありません。
また、優先席の使い方については利用者ごとに考え方が異なり、譲る側・譲られる側の双方で戸惑いが生じやすい状況もあります。
こうした事情から、「どうするのが正しいのか」と戸惑う人も少なくありません。
優先席はどのような考え方で運用されている?
まずは、優先席がどのような仕組みとして位置づけられているのかを整理してみましょう。
アディーレ法律事務所の正木裕美弁護士に話を聞きました。
――電車やバスの優先席には、法律上「誰を優先しなければならない」という義務はあるのでしょうか?
優先席は、公共交通機関が自主的に行っている取り組みです。
法的な強制力がないため、優先しなければいけない義務も、優先してもらう権利も生まれません。
優先席を譲ってほしいという依頼を断ったとしても、法的責任を問われることにはなりません。
例えば、札幌市営地下鉄では『専用席』を設けており、優先席よりも空席率や対象者の利用率が高いと評価されています。
しかし、名称にかかわらず、マナーと思いやりで誰もが使いやすい公共交通機関が実現されることが望まれます。
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――外見では分からない体調不良や障がいがあって席を譲れない場合、どのように伝えるとトラブルを避けられるでしょうか?
理解のない方もいますし、無理はせず丁寧に断ることがトラブルになりにくいと思います。
事情を伝えられる人もいる一方で、事情を明かしたくない人も多いといいます。
例えば、外観から分からない援助や配慮を必要とすることを示す『ヘルプマーク』などをつけて、見て分かるよう周囲に知らせるのもよいと思います。
とはいえ、見て見ぬふりをされたり、「優先席を使ってモラルがないよね」といった心ない決めつけをされたりして、苦しんでいる人が多くいるのも事実です。
さまざまなマークの意味を理解すること、見た目にかかわらず優先席を必要とする人がいるという認識をもち、譲れる人は必要な方に譲るといった思いやりを意識したいですね。
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――優先席をめぐって言い争いやトラブルになった場合、どの時点から法律問題に発展する可能性があるのでしょうか?
手を出せば暴行罪や傷害罪、脅せば脅迫罪、暴行や脅迫を用いて無理やり優先席を譲らせた場合は強要罪に問われる可能性があります。
また、乱暴な言葉で罵倒して迷惑をかけると、軽犯罪法違反や迷惑防止条例違反に問われることがあります。
さらに、優先席に座っている人間を無断撮影し、インターネット上にさらす事案も報道されています。
この場合、プライバシー権や肖像権侵害のほか、書き方によっては名誉毀損罪や侮辱罪になることもあります。
トラブルが生じた際には冷静に対応し、相手の挑発には乗らないことが大切です。
可能なら人や駅員がいる場所へ移動して安全を確保しましょう。
周囲も見て見ぬふりをせず、駅員に助けを求める、非常ボタンを押す、110番通報など状況に応じた対応が必要です。
優先席は義務ではなく思いやりで支える場所
優先席は、法的な義務ではなく、公共交通機関による自主的な取り組みです。
外見からは判断できない事情を抱えている人もいるため、「誰を優先すべきか」という基準だけでは割り切れません。
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トラブルを避けるためには、声をかける側も譲る側も、相手の背景を想像する思いやりが大切です。
断られた場合でも感情的にならず、丁寧な声かけを意識することで、お互いが無理なく過ごせる環境につながるでしょう。
[文・取材/ことのは 構成/grape編集部]
取材協力 アディーレ法律事務所 正木裕美 弁護士(愛知県弁護士会所属)
一児のシングルマザーとしての経験を活かし、不倫問題やDV、離婚などの男女問題に精通。
TVでのコメンテーターや法律解説などのメディア出演歴も豊富。コメンテーターとして、難しい法律もわかりやすく、的確に解説することに定評がある。
HP⇒アディーレ法律事務所