「わざとじゃない!」は通用しないことも? 電車やバスで気をつけたい『もたれかかり問題』
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電車や新幹線、長距離バスなど、公共交通機関で移動していると、つい睡魔に襲われることがあります。
仕事帰りの電車で座席に腰を下ろし、うとうとと眠ってしまい、目を覚ました時、隣の人にもたれかかっていたという経験がある人もいるかもしれません。
ほんの一瞬の出来事であっても、突然知らない人に身体を預けられた側は、驚きや不快感を覚えることがあります。
「少し寄りかかっただけ」と思っていても、相手の受けとり方次第で、思わぬトラブルに発展することもあるのです。
うっかりもたれかかる行為は、どこまでがマナーの範囲?
この『居眠り中のもたれかかり』は、どこまでがマナーの問題で、どこからが法的に問題になるのでしょうか。
弁護士法人・響の古藤由佳弁護士に話を聞きました。
――居眠りをして隣の人にもたれかかった場合、法的に問題になることはありますか?
居眠り中にうっかり隣の人にもたれかかっただけであれば、すぐに罪になることは多くありません。
法律では「わざとやったかどうか」が重く見られるため、無意識の接触だけでは、原則として処罰の対象にはならないからです。
ただし、もたれかかった拍子に相手が転んで怪我をした場合、『過失傷害罪』として、30万円以下の罰金、または科料が科される可能性があります。
また、飲み物をこぼして服を汚した場合、罪にはならなくても、クリーニング代などを支払う損害賠償責任が生じます。
さらに、居眠りの原因が飲酒だった場合、『酩酊者規制法』(酒に酔って公衆に迷惑をかける行為の防止等に関する法律)に違反し、拘留や科料が科される可能性もあります。
――居眠り中の接触で、相手が「不快だった」「触られた」と感じた場合、法律に違反することはあるのでしょうか?
この場合、問題になりやすいのが『痴漢』に当たるかどうかです。
痴漢といっても、行為の重さによって、各都道府県の迷惑防止条例違反になる場合と、より重い『不同意わいせつ罪』に当たる場合があります。
居眠り中の接触では、多くが衣服の上から身体に触れてしまうケースのため、実際には迷惑防止条例違反として扱われることが多いとされています。
例えば東京都の場合、違反すると6か月以下の拘禁刑または50万円以下の罰金が科される可能性があります。
また、うっかりの接触であっても、何度も繰り返したり、強い力で身体を押しつけたりすると、「寝たふりをしてわざと密着しているのでは」と疑われやすくなります。
相手が被害を訴えれば、事実関係の調査が始まり、トラブルに発展する可能性はあるということです。
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――わざとではなくても、罪に問われるのでしょうか?
被害の申告があり、加害者とされた側が「わざとではない」と否定した場合でも、最終的には証拠や状況から総合的に判断されます。
本人の気持ちそのものは目に見えないため、『どういう状況だったか』『どんな動きだったか』など、周囲から見える事情が重く見られるのです。
例えば、ほとんど人が乗っていない電車で、あえて隣に座ったうえでもたれかかった場合は、「わざわざ身体が触れる位置に行った」と判断され、故意と認定されやすくなります。
また、接触した回数、押しつける力の強さ、触れた部位、どんな流れで接触に至ったかといった点も、細かく見られます。
実際の裁判では、事件前後に送っていたメッセージの内容や、事件後にインターネットで『痴漢』『えん罪』などを検索していた履歴まで、判断材料にされた例もあります。
つまり、「寝ていただけ」という言い分だけでは足りず、あらゆる事情を積み重ねて、本当にうっかりだったのかどうかが判断されるということです。
「うっかり」が取返しのつかない誤解にならないために
「自分にそのつもりがなかった」という気持ちだけでは、必ずしも自分を守れない場面があることが分かりました。
公共交通機関は、不特定多数の人が集まる場所だからこそ、ほんのわずかな行動が、思わぬ誤解や疑念につながることがあります。
強い眠気を感じる日は、あえて立って移動するという選択も、予防策の1つです。
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そして、もし相手に不快な思いをさせてしまったと感じた時には、誠意をもって対応しましょう。
ほんの少しの気づかいを忘れずに、誰にとっても心地よい移動時間を過ごせるようにしたいですね。
[文・取材/ことのは 構成/grape編集部]
取材協力 古藤由佳弁護士(弁護士法人・響)
「難しい法律の世界をやさしく、わかりやすく」をモットーに、消費者トラブルや交通事故・借金・労働問題・相続・離婚など、民事事件から刑事事件まで幅広く手掛ける。
FM NACK5『島田秀平と古藤由佳のこんな法律知っ手相』にレギュラー出演するほか、ニュース・情報番組などテレビ・新聞・雑誌等メディア出演も多数。
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