【日本沈没 希望のひと 1話】2021年に日本沈没をやる意味とは・ネタバレあり
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Twitterやブログでドラマの感想をつづり人気を博している、あずきごはん(@komadorama)さんによる、新連載。
TBSで始まった2021年秋の新ドラマの見どころを、あずきごはんさん独自の視点でご紹介します。
小松左京原作の小説『日本沈没』が、2021年秋にTBSでドラマ化という情報を初めて聞いた時の率直な感想は「何で今?」だった。
『日本沈没』は1973年刊行のSF小説。今作『日本沈没 希望のひと』は五度目の映像化にあたる。
原作や過去の映像作品を知っている人も多いだろうが、私は今作で初めて『日本沈没』に触れた。
そして、今だからこそ放送する意味のある作品だと感じた。
TBS新ドラマ『日本沈没 希望の人』序盤から重々しい雰囲気
2023年、日本政府は地球物理学の権威・世良徹教授(國村隼)と協力して、環境に関する大規模な施策に取り組んでいた。
更に各省庁の若手官僚が集まる『日本未来推進会議』が発足。環境省の天海啓司(小栗旬)もその一員となった。
目標に向けて一丸となる中、官僚達はネット上で話題の『関東沈没説』に悩まされていた。
天海は事態収束のため、説の提唱者である田所雄介博士(香川照之)の元へ向かう。そして博士から「伊豆沖で起こる地震によって日之島が水没し、それが関東沈没の前兆になる」という旨の『予言』を聞かされる。
序盤から緊張感のある展開だが、嫌な重みは感じない。
その理由の1つが、登場人物の名前や所属を大きな文字で打ち出して視聴者を盛り上げる『シン・ゴジラ風の演出』だと思われる。
また、香川照之演じる田所博士の絶妙な存在感も話題となり、視聴者の関心を集めた。
その後、予言を聞いた天海は強引なやり口で関東沈没説を潰しにかかる。
まず、説を立証するためと伝えて田所博士を会議に呼び出すのだ。しかし、それは博士を失脚させるための罠。
記者の椎名実梨(杏)から田所博士に環境詐欺ビジネスへの関与の疑いがあることを聞いた天海は、その証拠に『見える』ような資料を収集し、田所博士を追い込んでいく。
過剰なほどの強引さを持つ天海を嫌いになれないのは、小栗旬の強い意志を携えた瞳と、相手を引き込むような語り口の賜物だ。
この時点で天海から出世欲以外の何かを感じ取った視聴者も多いのではないかと思う。
天海の行動によって関東沈没説が封じられるのかと思いきや、ある2つの出来事が事態を変化させる。
事態を変化させた2つの出来事とは…
1つ目は、伊豆半島沖を震源とする地震の発生。ここで天海と視聴者は田所博士の予言を思い出す。
この場面で気になるのは、田所博士以外の登場人物が地震から身を守る行動を取らなかったことだ。
大規模な施策を行ったことで、自然はある程度管理できるという驕(おご)りが生まれ、防災意識が薄れたのではないか…。そう思うと他人事とは思えない恐ろしさを感じた。
2つ目は天海の趣味であるスキューバダイビング中に起こった現象。
海底に不審な裂け目を見つけた天海。そこに近づいた瞬間、水の流れが急激に変化。裂け目の中に吸い込まれそうになった天海は「関東沈没説の真実を知りたい」という想いを抱く。
海のシーンの撮影はほぼすべてプールで行われたそうだが、そう思わせないリアルな怖さを感じた。その怖さが、天海の思考の転換に説得力を持たせているのである。
その後、天海は椎名と取引し、ある記事を書かせる。その結果、政府は再び関東沈没説と向き合うことを余儀なくされる。
頭を抱える官僚達に天海は、田所博士と世良教授を伴った海底調査で、すべてを明らかにすることを提案。そして調査中、田所博士が関東沈没の原因となり得る痕跡が見えたと主張する。
しかし乗組員の1人が突如体調不良におちいり、そのことを追求できぬまま調査は中断された。
地上に戻った天海は、世良教授から「関東沈没などあり得ない」という見解を述べられる。
戸惑う天海だったが、世良教授の語り口と圧にのまれて反論の機会を失ってしまう。
この場面は國村隼の『説得力と圧力』の演技によって、自分の主張を強引に通してきた天海が初めて黙らされる様が、強く印象付けられている。
2021年に『日本沈没』をドラマ化した意味
そして舞台は移り、調査の結果報告の場。
何の痕跡も映っていない海底映像を見て抗議する田所博士と、関東沈没説の取り下げを訴える官僚達…そして天海は葛藤の末、口を開く。
この場面の天海の語りにはこれまでのような『過剰な強引さ』はない。
真実を明らかにしようという彼の訴えは、多くの視聴者の心を動かしたことだろう。
そんな最中、会議室に「日之島が沈没した」という一報が入る。田所博士の予言が当たったのだ。
じゃあ関東はどうなるのか…視聴者が不安になったところで第1話は終了となった。
人々の不安を煽る噂は社会を混乱させる。コロナ禍でそのことを身をもって感じた人も多い。
だからこそ、関東沈没説を潰そうとする官僚達の判断も理解できる。
それが今作のポイントであり、2021年に『日本沈没』をやった理由の1つではないだろうか。
しかし、「真実に目を向けることが日本の未来に繋がる」という天海の主張もまた、今の日本に必要なもののように感じる。
本当に関東は沈むのか。他の地域はどうなるのか。そして政府や国民はどのように立ち向かっていくのか。ドラマの今後の展開を見つめていきたい。
日本沈没 希望の人/TBS系で毎週日曜・夜9時~放送
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[文・構成/grape編集部]