【『正直不動産』第4話感想・考察】作品に込められた想い、「正直」と向き合う山下智久の表情に注目
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- 出典
- 正直不動産
ドラマ好きなイラストレーター、ゆう。(@yamapyou)さんによるドラマコラム。
2022年4月スタートのテレビドラマ『正直不動産』(NHK)の見どころや考察を連載していきます。
ドラマも中盤に入り、山下智久演じる永瀬財地にようやく心の変化が起き始めた『正直不動産』第4話。
嘘がつけなくなってしまう祟(たた)りにより、営業に苦戦していた永瀬だが、気付けばその弱点を味方につけたセールストークを披露していた。
永瀬の柔軟さ、器用さに、人間はこうやって上手く自分の弱点と向き合って生きていかなければならないのだと考えさせられる。
ドラマは時に、忙しい日々の中で私たちが忘れかけていた『大切なもの』を思い出させてくれるのだ。
みなさんもドラマを見たあと、心がスッと軽くなったり、心機一転して恋や仕事、勉強に取り組むことができたりした経験はないだろうか。
それは作り手が意図して作品に盛り込んだ『伝えたいこと』が、物語を通して無意識に自分の中に落とし込まれているからである。
勇気を出してプロポーズをする、仕事で失敗しても諦めない、友情を大切にする、おそらくどんな作品にも伝えたい想い、もしくは教訓に近いものがきっとある。
一見、コメディ色強めのお仕事ドラマだと思われている『正直不動産』だが、物語は実に視聴者に伝えたい『想い』で溢れている。
この『想い』に気付いた時、私たちは今よりもっと正直不動産を好きになるに違いない。
今日はそんな正直不動産という作品に込められた『想い』について考えた。
捉え方は人それぞれ。『いい部屋の定義』とは
第4話では、ライバル会社であるミネルヴァ不動産と競う形で、中古マンションの空き部屋を販売することになった。
キーワードとなったのは『事故物件』。
事故物件と聞くと、なんだか気味が悪いなと思ってしまうのは当然だろう。劇中に出てきた夫婦も中古マンションが事故物件だったと聞くと顔色を変えてキャンセルに訪れていた。
そんな中、来店したのは事故物件に住みたがる奇妙なおばあさん・節子(風吹ジュン)である。
彼女は事故物件に住めば、亡くなった夫が幽霊として出てきてくれるのではないかと考えていた。
誰かにとっては悪い物件でも誰かにとっては良い物件の場合もある。
『良い部屋の定義』とは人それぞれ異なるということだ。
「物は考えよう」という言葉があるが、これは、物事は捉えかた次第で楽しく生きることができるという教えなのだと思う。
中古マンションを購入した夫婦も、当初は駅から遠いのが通勤に不便だと嘆いていたが最終的に「駅からちょっと歩くけど、運動だと思えばいいか」とポジティブに捉えていた。
おそらく『正直』を味方につけた永瀬もそうだ。
嘘がつけないことをいつまでも悲観するのではなく、上手く利用してやろうという考えに転換することができた。
中古マンション、事故物件、正直、それぞれを上手く描きながら、その裏側には壮大なテーマが隠れていたことに気付いていただけただろうか。
これがドラマを見た後、視聴者を優しい気持ちにさせてくれる、作り手が仕込んだトリックなのである。
初めての充足感、正直と向き合う永瀬
正直を味方につけたことで永瀬が今回勝ち得たのは初めての『充足感』だった。
嘘ではなく正直に向き合うことでお客にも喜んでもらうことができ、契約を取ることで会社にも貢献することができた。
ここでも山下智久の表情で魅せる演技が光る。
今まで味わったことのない感情が込み上げてくるその表情は、不思議な感覚であることを伺わせた。でもすぐに気付く、「自分は嬉しいんだ」と。
どこか遠くを見つめるその瞳は希望で満ち溢れていた。
山下智久の表情が見せるラストに温かさを感じたのは間違いない。心がほっこりするというのはこういうことだろう。
こんなに作り手の想いと、キャストの演技がマッチし、優しい雰囲気を作り出せるドラマは珍しい。
令和という時代で素敵な作品に出会えたことに感謝している。
正直と向き合う、新しいフェーズに突入した永瀬を最後まで見守っていきたい。
[文・構成/grape編集部]