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【持続可能な恋ですか? 第5話 感想】それぞれの『会いたい』 杏花と林太郎の親子が見つけたもの

By - grape編集部  公開:  更新:

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※写真はイメージ

Twitterで人気ドラマの感想をつづり注目を集める、まっち棒(@ma_dr__817125)さんのドラマコラム。

2022年4月スタートのテレビドラマ『持続可能な恋ですか?〜父と娘の結婚行進曲〜』(TBS系)の見どころや考察を連載していきます。

過去を乗り越えるためにも、何かを成し遂げるためにも、前を向くことは大切なことだ。

だが同時に自分の本当の気持ちに蓋をしていることに気づきにくくなる。

第5話ではそんな『前を向くこと』や『会いたい』という気持ちに寄り添っていく。

セミナー最終日、杏花(上野樹里)への想いが募り、杏花を抱きしめた晴太(田中圭)だったが、そんな二人を颯(磯村勇斗)が目撃してしまう。

晴太は颯に気づき、ふと我に帰ってお別れのハグと誤魔化すだけ。

セミナーも終わり、会う理由がなくなってしまった二人であるが、心の中では『会いたい』という気持ちを募らせていた。

林太郎がお見合いを続ける理由

独立に向けて全力を尽くすことを決めている杏花だったが、林太郎(松重豊)は本当にそれで幸せなのかと疑問に思っていた。

亡き妻・陽子(八木亜希子)の手紙の言葉を受け、親子で始めた婚活。

知り合った明里(井川遥)のことは気になりながらも、幸せとは何なのか考え始めた林太郎は、ふと陽子との生活を思い出していた。

そこにあるだけのものや言葉が、初めて意味を持った日、隣にはいつも陽子がいた。

『上の空』の語釈を考えるだけだった林太郎をスカイダイビングに連れ出すなど、陽子はリアルを体感させてくれた存在だった。

林太郎が現在もよく街へ出かけ、写真を撮ったり、人々の会話から新しい言葉を探していたりするのも、陽子の影響なのだろう。

辞書や誰かが決めた言葉の解釈だけではない世界を教えてくれた陽子は、もういない。

結婚条件は『僕より長生きしてくれる人』。

しつこく、杏花の結婚や普通の幸せにこだわっていたのは、自分がそうではなかったからだ。幸せだったけど、その幸せは長くは続かないことを知っている。

だからこそもう杏花に負担はかけられないと、林太郎も焦ってお見合いを続けているのだ。

そんな中、オーナーのヴァネッサ(柚希礼音)から『TAMAGAWAサステナブルフェス』の仕切りを任された杏花。

それを聞いた林太郎は陽子の服をフェスのバザーに出品することを決心する。

杏花も、偶然知り合った明里から最近の林太郎の様子を聞き、前を向き始めたことを嬉しく思っていた。

フェス当日、お見合い終わりに林太郎はフェスに顔を出すが、バザーに出す予定のなかった陽子の『オレンジのストール』が手違いで出品されてしまったことを知り、ショックを受ける。

このオレンジのストールには陽子とのある思い出が詰まっていた。

オレンジのストールをきっかけに変わる2人の関係

辞書の編集委員に選出されず、公園で途方に暮れていた林太郎に陽子はそっと寄り添った。

溢れ出した悔し涙を隠すように、陽子は頭にそのオレンジのストールをかけてあげたのだった。

これは第3話でお見合いが上手くいかず涙する明里に林太郎がしてあげたことだった。

大切な人の涙を誰にも見せないというこの行動は、陽子が自分にしてくれた思い出からきていたのだ。

そんな思い出を聞いた明里は、あの時心を軽くしてくれたのは林太郎と陽子だったと気づく。

陽子のストールは林太郎にとって特別なものでもあり、明里にとっても大切なものなのだ。

明里は諦めかけた林太郎の背中を押し、二人は無事にストールを探し出すことができた。

「会いたいと思える人と、会える今を大切にしたい」

林太郎は、もう手放しても平気だと思っていた。

しかし、後ろも向かず、前だけ見て歩くということは、言い換えれば自分の忘れたくない過去や今の辛い気持ちを無理やり忘れるということなのだ。

林太郎は陽子との思い出にも蓋をしようとしていた。そうではないと、先に進めないと思っていたからだ。

情けなさそうに想いを話す林太郎に、明里はこう声をかける。

「歳をとった分色んな思い出があるけど、そういうの皆んな引きずって…でも時々振り返りながら歩いていけたら、それで十分じゃないですか?」

人は、沢山の重りを引き連れ、擦り減った靴でこれからの人生を歩いていかなくてはならないのだ。

大切な人を亡くした経験も、嫌な記憶もそう簡単にはなくならない。

だが、擦り減った分、同じように忘れたくない大切な記憶があるはずだ。

「今の自分たちを見たらどう思うのかな?」と、時々立ち止まって思い返しながら進んでいければいい。

「会いたいと思える人と、会える今を大切にしたいと思いまして」

林太郎は思い出を引き連れながら、今一番会いたいと思える明里との第二の人生を考えることに決めた。

晴太らしい返答にグッとくる

そして晴太と杏花も会いたい人がいた。もう会う理由はないけど、どうしようもなく会いたい人が。

林太郎の決心を聞いた晴太と杏花は考えることは同じだった。二人は思い出の丘で出会う。

晴太から林太郎が元気そうだと聞いた杏花は、陽子が亡くなった頃の辛そうな林太郎のことを思い出していた。

そして、自分のことも。

杏花は父を生き返らせ、生活を守らなくてはならない、そんな使命だけで必死に生きていた。強がる杏花に晴太は言う。

「でも、杏花さんだって辛かったでしょ?」

愛していた父の方が悲しんでいるはずだからと、娘としての辛い気持ちに蓋をしてきた。

杏花は今まで誰にも弱音を吐くことはなかったのだ。晴太の言葉を聞いて、長く堪えてきた涙が杏花の頬をつたう。

「もう一度でいいから、会いたい」

晴太は杏花の背中をさする。

そんな自分に寄り添ってくれる大切な晴太と向き合いたいという思いが杏花の中で込み上がっていた。

「会いたい、これからも会いたいです」

「このままだと愚痴ばかりのおばあちゃんになっちゃう」というのは、「会いたい」と伝えなかったことを後悔したくないという気持ちなのだろう。会いたいに理由なんか必要ないのだ。

そして、泣き顔は見られたくないと言う杏花に晴太はこう返す。

「その顔を見る権利、僕にはある気がするんですけど」

見つめあった二人は夕暮れの中、キスをする。

「僕にはある」じゃなく「気がするんですけど…」といまいち締まらない弱気な感じも、なんとも晴太らしい。

だが、杏花の言葉を会いたいという言葉を聞き、どんな杏花も受け止めたいという真っ直ぐな気持ちが伝わってきた。

そんな二人の関係はこのキスをきっかけに進むのか?そして林太郎の第二の人生も動き出す次回が待ち遠しい。

持続可能な恋ですか?〜父と娘の結婚行進曲〜/TBS系で毎週火曜・夜10時~放送

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[文・構成/grape編集部]

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