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【石子と羽男 第6話 感想】『産後パパ育休制度』直前だからこそ見ごたえを感じた第6話

By - grape編集部  公開:  更新:

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Twitterで人気ドラマの感想をつづり注目を集める、まっち棒(@ma_dr__817125)さんのドラマコラム。

2022年7月スタートのテレビドラマ『石子と羽男ーそんなコトで訴えます?ー』(TBS系)の見どころや考察を連載していきます。

何事も初めから100%変えようとするのは難しい。そして人は変化することを諦めていくのだ。

6話では『幽霊マンション』を舞台に現代の『育休問題』に迫り、現状を変えていく上で大切な視点が描かれた。

夫婦に届いた怪文書

様々な案件を経て石子(有村架純)とようやくパートナーらしくなってきた羽男(中村倫也)のもとにツイッターDMで依頼が届く。

依頼人は、中小企業の共同経営者・高梨拓真(ウエンツ瑛士)。数ヶ月前に分譲賃貸マンションに越してきたが、衝撃の怪文書が匿名の手紙で届いたようだった。

この506室は呪われている。

不慮の事故以外の理由で死を遂げている場合には、不動産屋は契約者へ告知しなければならない。

双子の息子を抱え育児ノイローゼ気味だった拓真の妻の文香(西原亜希)が最近、幻覚や幻聴を訴え始めており、早急な解決が必要だった。

さっそく石子と羽男は、引っ越し費用の請求と契約解除の違約金無効化を不動産屋社長・六車(佐藤仁美)に交渉しに行くも、前の住人に告知したとして告知義務違反はないと主張。

そして、「幽霊が出ると言って裁判を起こしてみては」とけん制され、二人は突っ返されてしまう。

だがこの結果次第で、拓真が立ち上げた会社の顧問弁護士になり得るかもしれない羽男と、なにより収入が大切な石子。

『決まったらデカい』案件をここで投げ出すわけにはいかなかった。二人は怪文書を送った犯人へ慰謝料請求のために動き出す。

しかし手紙を出した人物について皆心当たりはなく、元住民が出て行った理由も不明だった。何も手がかりをつかめない二人は、まず拓真から生活事情を詳しく聞くことに。

ここから今回の案件の大きなテーマに切り込んでいく。

石子は法律に携わる身として、拓真が正当な権利である『育休制度』を利用していないことを不思議に思っていた。

だが実は、社員が既に産休中で、拓真は自分も育休を取ることが現実的に厳しかったと話す。

「法律としてはそうでも、綺麗事だけじゃ生きていけませんから」

『声を上げること』を軸とした今作で描かれる、声を上げたくても上げられない人のリアルな声である。石子の胸に拓真の言葉が重くのしかかる。

元々は子供は保育園に預け、妻も仕事に復帰する予定だったが、待機児童となり今は『保活中』なのだ。

待機児童問題解消のため、多くの自治体において世帯状況指数『保活ポイント』で入園の可否を決める制度がある。

親の労働環境や収入、兄弟姉妹や親族の有無、障がいや健康状態などを点数化し、各家庭における保育園の必要性の指標としている。

保護者の間で、高い点数を得るために家庭の状況を無理矢理にでも調節する者も現れ、熾烈な競争が繰り広げられているのだ。

高いポイントが、家庭環境の恵まれなさの証拠として評価されている。

待機児童問題という不幸を解消するための『保活』が、いつの間にか不幸の背比べの指標に変わってきたように思えてくる。

拓真もそんな問題と仕事で板挟み状態だった。

心身共に限界が来ていた妻の文香も、料理中にボヤ騒ぎを起こし、入院する事態となる。加えて、芳香剤や柔軟剤の匂いで吐き気を催すなど、文香の体調は悪化していった。

怪文書の犯人は…

一方、手紙の調査を進めていた石子と羽男は、石子を手伝いにきた大庭(赤楚衛二)の協力のもと、住民の証言と、エントランスの防犯カメラの映像の犯人の様子から、同じマンションに住む女性・熊切(向里祐香)が怪文書の犯人だということを突き止める。

熊切が手紙で高梨夫妻を退居させたかった理由、それは『保活』のためだった。

熊切も待機児童を抱え、経済的に厳しい状況で保活を続けている中、自分よりポイントの高い高梨家が越してきたため、苦肉の策を打ったのだという。

他人を蹴落としてまで掴み取った幸せが招いたのは、誰かの幸せを曇らせる結末だった。

拓真はその苦しさを痛いほど理解していた。そんな中でも、妻を助けてくれた熊切を思い、慰謝料を断るのだった。

残るは、不動産屋の過失を裏付ける証拠。羽男達は、住人が持ってきた元住人の映像をヒントに、その人物に接触することに成功し、ルームロンダリングの証言を掴む。

そしてここから石羽コンビのいつものショータイム。

告知義務違反に加え、詐欺罪、文香の幻覚や幻聴の症状の原因となった化学物質過敏症を引き起こしたリフォームのシックハウス規制違反。

高梨夫妻の訴えを伝える羽男の圧力に負け、ついに六車は数々の違反を認め始める。

石子の完璧なシナリオを、羽男が完璧に喋り倒し、これでもかと畳み掛ける。羽男の「これ以上の要求は致しません」という言葉に合わせ、石子の口が動く場面に相棒としての信頼関係を強くを感じた。

その後、待機児童が少ないところに引っ越すことができた高梨家のもとを石子と羽男が訪れていた。

拓真は育休は取ることができなかったが、小さな努力を積み重ね、文香の負担を減らせるように奮闘中だという。

そしてそれを聞き安心した様子の石子は、「綺麗事だけでは生きていけない」という拓真の言葉がずっと胸を締め付けていたことを語り出す。

2022年10月に『産後パパ育休制度』がスタートする。しかし法律という受け皿が用意されるとしても、利用したくても思い留まる人は多い。

育休取得を諦めさせるためのハラスメントも存在するし、育休を取っても周りにしわ寄せがいく現状だ。綺麗事を言う暇はないほど、人間自分の生活でいっぱいいっぱいだ。

しかし、こうした法整備が、誰もが育児と仕事を両立しやすい環境に近づく大きなステップとなるのは確かだ。石子はこう続ける。

「考える方が増えるだけでも、社会が変わっていく気がしました」

どんな時でも、不測の事態が起こる。育児休暇だけを差別化するのではなく、社員の不在に対応できる体制を会社としても、個人としても整えられるようになれば、残された人も安心できるだろう。

高梨夫妻のように、イヤイヤ期を迎えた我が子に成長を感じ微笑む親が少しでも増えるように…。

何よりスモールステップを積み重ねていくことが大事だということを教えてくれた。

『石子と羽男』第6話で大庭の恋の行方が描かれる

そして大庭の恋の行方も描かれた6話。

石子に告白はしたものの、お付き合いは保留になっていると大庭から伝えられた羽男は、嘘をついて大庭と石子をわざと二人きりにするなど、厚かましく応援する。

曖昧な気持ちを真剣な大庭に返しても良いのか、そして事務所との両立で悩む石子に対して、「心配いらないよ」と優しく伝える羽男。

背中を押され、大庭への思いを確認する石子。誰でも変わることは怖い。積み上げてきた大切なものがあるからこそ、そう簡単には変われない。その中でも石子は自分なりに大庭告白を受ける。

「一緒に過ごす中で、思いを積み重ねて、ゆくゆく100%になれれば、それはそれでいいのかなぁって」

初めから完璧なものなど存在しない。人や世界は変わりゆくもの。明日を変えるのは、いつだって変わろうとしたその瞬間なのだ。

説教臭くないまま、日々の大切な視点に導いてくれる作品だということを、より強く実感する6話だった。

『石子と羽男ーそんなコトで訴えます?ー』/TBS系で毎週金曜・夜10時~放送

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[文・構成/grape編集部]

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