【『ラストマン』感想1話】福山雅治と大泉洋、双璧で魅せる疾走感・写真全41枚
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2023年4月スタートのテレビドラマ『ラストマン』(TBS系)の見どころを連載していきます。
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そもそも配役だけで恐ろしくハードルが上がっている。
大体、福山雅治と大泉洋だ。この国のどんな映像作品でも、どちらか一人だけでも主演を張れる。それが二人も揃う。盆と正月が一緒に来たような、というやつだ。
誰もが思う、きっと面白い物語が見られるに違いない。
そんな最初から爆上がりしたハードルを、今作『ラストマン 全盲の捜査官』(TBS系 日曜21時)の初回はいとも軽々と越えて飛んだ。晴れた空に舞い上がるような気持ちの良い跳躍だった。
アメリカから交換留学で来日した全盲のFBI捜査官・皆実広見(福山雅治)と、彼をアテンドすることになった警察庁の孤高の刑事・護道心太朗(大泉洋)。
本来なら形式上の交換留学のはずが、皆実は警察庁が捜査中の無差別連続爆破事件の捜査に渋る心太朗を連れて乗り出していく。
招かれぬ客として、皆実と心太朗に対して敵意満々の捜査一課の中で、皆実が最初に披露した犯人の見立ては意外なものだった。
爆破現場に足を運んだ皆実は、火薬の匂いから一人の男を探り当てるが、そこから事件は意外な展開を迎える。
初回の見どころは、やはり次から次に繰り出される『人たらし』、皆実広見という人物の魅力だろう。
盲目という大きなハンデと引き換えに会得した鋭敏な聴覚、嗅覚。
犯人の数手先まで見越した推理と適格な判断力、そしてシャープな身のこなし。
捜査官としての高い能力はもちろんだが、皆実の周囲への飄々(ひょうひょう)とした言動一つ一つが魅力的だった。
皆実はとにかく頻繁に相手の名前を呼ぶ。相手の存在が自分にとって記憶に足る特別なものだと暗に示すようだ。
そして些細なことでも細かく礼を伝える。お礼の言葉は、いつも紋切り型のものではなくて、その場に応じた彼なりの言葉だ。
爆破事件解決ののち、助力してくれた吾妻ゆうき(今田美桜)に、わざわざアイカメラの向きを変え、顔を見せて礼を伝えた場面はとりわけ印象に残った。
皆実自身には視覚という感覚が失われているからこそ、その心遣いの重みが感じられるように思う。
視覚の欠如は最新のガジェットや他の感覚で補い、無類の機転と身体能力で『ほぼ』健常者と同じように、いやそれ以上の能力を見せる皆実だが、それでも盲目という要素は大きく、どうしても彼一人でミッションを完結することは出来ない。
とりわけ運転・歩行・走行といった身体の移動のハンデは大きい。
その欠落の部分こそが他の刑事ドラマとの違いであり、物語全体に常に心地よい緊張の糸を張る。
個人的に今回最もゾクゾクしたのは、皆実が爆弾を作った犯人・渋谷英輔(宮沢氷魚)と対峙し、銃を向けられながらも距離を詰めていくシーンだった。
イヤホン越しに止めようとする心太朗を制し、「チャンスは今しかありません」と犯人に向かい合う瞬間、皆実はにっこりと完璧な作り笑いを見せる。
ミュージシャンとしての魅力、俳優としての魅力、極上のトークも、ユーモアも寛容さも、何もかも持ち合わせている彼を見るたびに、「この人の内面は一体どこからどこまで『福山雅治』という存在なんだろう」と、畏怖に近い気持ちになる。
演じる本人へのそんな憧れとシンクロするように、皆実の完璧な笑顔にしびれた瞬間だった。
そして、皆実の超人めいた存在をリアリティとして物語に繋ぎとめるのは、実は護道心太朗を演じる大泉洋の『渋い顔』だと思う。
人たらしの魅力に必死で抗い文句を言いつつ、それでもついていく心太朗の右往左往が、皆実を単調な超人、聖人君子にしない。
それこそ、日本一『右往左往が絵になる男』大泉洋の、魅力の本領発揮だろう。
また重要な初回のゲスト犯人役として、これまでの好青年の印象を覆し、社会に排除され恨みを暴走させる青年の哀切を演じきった宮沢氷魚もまた、見ごたえある演技だった。
バディの脇を固める俳優陣もまた、日曜劇場に相応しい厚みのある顔ぶれだ。
出会ってすぐの車の中で、心太朗は苦々しく「お別れする日が楽しみです」と嫌味を言い、それに皆実は「泣かないでくださいね?」と飄々と応じた。
私たち見る側もこれからの数か月、一筋縄でいかないこのバディを堪能したい。
きっと最終回、お別れする日にはひどく寂しくなってしまうだろうけれども。
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[文・構成/grape編集部]
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