炊きたてのごはんをゆっくりと味わう 世界に誇れる日本の食文化 By - 吉元 由美 公開:2019-11-24 更新:2019-11-24 エッセイ吉元由美 Share Post LINE はてな コメント 吉元由美の『ひと・もの・こと』 作詞家でもあり、エッセイストでもある吉元由美さんが、日常に関わる『ひと・もの・こと』を徒然なるままに連載。 たまたま出会った人のちょっとした言動から親友のエピソード、取材などの途中で出会った気になる物から愛用品、そして日常話から気になる時事ニュースなど…さまざまな『ひと・もの・こと』に関するトピックを吉元流でお届けします。 土鍋ごはんの幸せ 土鍋ごはんは、何だかうれしい。ぽってりとした蓋を開ける。でも、すぐにパッとは開けない。早く中を見たい気持ちを焦らすように。プレゼントの箱を開けるときのようにわくわくする。ゆっくりと蓋を開ける。ふわりと湯気が立ち上る。ごはんは湯気に覆われている。炊きたてのごはんの香りの中に、具材の香りも立ち上る。湯気の向こうに、ごはんが見えてくる。あ!香箱蟹。蟹の甘みとごはんの甘み。そして卵の軽いぷつっという歯ごたえがうれしい。10月半ばに出会った季節の土鍋ごはんは、口福この上ないものでした。 お米は日本人にとって、いにしえより命の根源となる食糧です。『稲』という言葉は、『いのち』の『ね』であることから、『いね』と名付けられたと言います。日本は『豊葦原瑞穂国』(とよあしはらみずほのくに)、瑞々しい稲が豊かに実る国であるとされました。『古事記』によると、天照大神が、降臨する孫のニニギノミコトに「この稲で国を治めなさい」と稲穂を託された。これが『斎庭稲穂(ゆにわいなほ)の神勅』です。 日本各地で執り行われるお祭り、行事のほとんどは五穀豊穣を祈るもの。お花見も、田の神にお供え物をし、そのお下がりをいただく、という神事だったそうです。日本がお米を特別に大切にしてきたのは、ここに由来しています。ごはん粒を一粒残らず食べるように言われたのは、食べ物を大切にすることに加えて日本人にとってお米が特別だったからなのだと思います。 そのような文化的な歴史の中でいま、日本人のごはん離れが進んでいます。麺類、パンの方が手軽であること、カロリーの高さを敬遠する、家族の帰宅時間がまちまちであることなどから、ごはんを炊く頻度が減っているそうです。1962年に米の消費量がピークになって以来、減少が続いています。生産者が減るのは残念なこと、田が転用されるのは残念であり、また休耕田を復活させるのも大変なことです。 何でも簡単に、合理的に。暮らしはどんどん便利になりました。自分で作らなくても、お惣菜はどこでも買えるし、食事は外食で済ませたら楽なことです。便利になった恩恵もあります。 土鍋で炊いたごはんをゆっくりと味わうこと。それは『季節』を愛で、味わうことでもあります。日本人に生まれてよかった。そんな感慨を覚えるのも、幸せなことだと思うのです。 日本の食文化は世界に誇れるものです。四季があること、東西に長い地形であること、山があり、海があること。そして何よりも自然を敬い、季節の実りに感謝する精神的な文化が、日本の食の源なのです。そして、日本人の力の源でもあります。 土鍋ごはんの幸せ。ときどきの旬の味を楽しむ。日々の暮らしを豊かに彩り、心和むひとときを。忙しい毎日だからこそ、時にはそんな時間を味わいたいものです。 ※記事中の写真はすべてイメージ エレガントな終活~50歳から、もっと幸せになる~ エレガントな終活~50歳から、もっと幸せになる~吉元 由美1,394円(12/21 22:05時点)Amazon楽天市場YahooAmazonの情報を掲載しています 作詞家・吉元由美の連載『ひと・もの・こと』バックナンバー [文・構成/吉元由美] 吉元由美 作詞家、作家。作詞家生活30年で1000曲の詞を書く。これまでに杏里、田原俊彦、松田聖子、中山美穂、山本達彦、石丸幹二、加山雄三など多くのアーティストの作品を手掛ける。平原綾香の『Jupiter』はミリオンヒットとなる。現在は「魂が喜ぶように生きよう」をテーマに、「吉元由美のLIFE ARTIST ACADEMY」プロジェクトを発信。 ⇒ 吉元由美オフィシャルサイト ⇒ 吉元由美Facebookページ ⇒ 単行本「大人の結婚」 快挙を成し遂げた狩野英孝、帰国便の搭乗券をよく見ると… 「さすがJAL」の声ホノルルマラソンから帰国する狩野英孝さんに、JALが用意したサプライズとは…。 ロケで出会う人を「お母さん」と呼ぶのは気になる ウイカが決めている呼び方とは?タレントがロケで街中の人を呼ぶ時の「お母さん」「お父さん」に違和感…。ファーストサマーウイカさんが実践している呼び方とは。 Share Post LINE はてな コメント
吉元由美の『ひと・もの・こと』
作詞家でもあり、エッセイストでもある吉元由美さんが、日常に関わる『ひと・もの・こと』を徒然なるままに連載。
たまたま出会った人のちょっとした言動から親友のエピソード、取材などの途中で出会った気になる物から愛用品、そして日常話から気になる時事ニュースなど…さまざまな『ひと・もの・こと』に関するトピックを吉元流でお届けします。
土鍋ごはんの幸せ
土鍋ごはんは、何だかうれしい。ぽってりとした蓋を開ける。でも、すぐにパッとは開けない。早く中を見たい気持ちを焦らすように。プレゼントの箱を開けるときのようにわくわくする。ゆっくりと蓋を開ける。ふわりと湯気が立ち上る。ごはんは湯気に覆われている。炊きたてのごはんの香りの中に、具材の香りも立ち上る。湯気の向こうに、ごはんが見えてくる。あ!香箱蟹。蟹の甘みとごはんの甘み。そして卵の軽いぷつっという歯ごたえがうれしい。10月半ばに出会った季節の土鍋ごはんは、口福この上ないものでした。
お米は日本人にとって、いにしえより命の根源となる食糧です。『稲』という言葉は、『いのち』の『ね』であることから、『いね』と名付けられたと言います。日本は『豊葦原瑞穂国』(とよあしはらみずほのくに)、瑞々しい稲が豊かに実る国であるとされました。『古事記』によると、天照大神が、降臨する孫のニニギノミコトに「この稲で国を治めなさい」と稲穂を託された。これが『斎庭稲穂(ゆにわいなほ)の神勅』です。
日本各地で執り行われるお祭り、行事のほとんどは五穀豊穣を祈るもの。お花見も、田の神にお供え物をし、そのお下がりをいただく、という神事だったそうです。日本がお米を特別に大切にしてきたのは、ここに由来しています。ごはん粒を一粒残らず食べるように言われたのは、食べ物を大切にすることに加えて日本人にとってお米が特別だったからなのだと思います。
そのような文化的な歴史の中でいま、日本人のごはん離れが進んでいます。麺類、パンの方が手軽であること、カロリーの高さを敬遠する、家族の帰宅時間がまちまちであることなどから、ごはんを炊く頻度が減っているそうです。1962年に米の消費量がピークになって以来、減少が続いています。生産者が減るのは残念なこと、田が転用されるのは残念であり、また休耕田を復活させるのも大変なことです。
何でも簡単に、合理的に。暮らしはどんどん便利になりました。自分で作らなくても、お惣菜はどこでも買えるし、食事は外食で済ませたら楽なことです。便利になった恩恵もあります。
土鍋で炊いたごはんをゆっくりと味わうこと。それは『季節』を愛で、味わうことでもあります。日本人に生まれてよかった。そんな感慨を覚えるのも、幸せなことだと思うのです。
日本の食文化は世界に誇れるものです。四季があること、東西に長い地形であること、山があり、海があること。そして何よりも自然を敬い、季節の実りに感謝する精神的な文化が、日本の食の源なのです。そして、日本人の力の源でもあります。
土鍋ごはんの幸せ。ときどきの旬の味を楽しむ。日々の暮らしを豊かに彩り、心和むひとときを。忙しい毎日だからこそ、時にはそんな時間を味わいたいものです。
※記事中の写真はすべてイメージ
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作詞家・吉元由美の連載『ひと・もの・こと』バックナンバー
[文・構成/吉元由美]
吉元由美
作詞家、作家。作詞家生活30年で1000曲の詞を書く。これまでに杏里、田原俊彦、松田聖子、中山美穂、山本達彦、石丸幹二、加山雄三など多くのアーティストの作品を手掛ける。平原綾香の『Jupiter』はミリオンヒットとなる。現在は「魂が喜ぶように生きよう」をテーマに、「吉元由美のLIFE ARTIST ACADEMY」プロジェクトを発信。
⇒ 吉元由美オフィシャルサイト
⇒ 吉元由美Facebookページ
⇒ 単行本「大人の結婚」