「この世界に、美しいものはひとつも存在していない」 豊かに生きるための極意とは
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吉元由美の『ひと・もの・こと』
作詞家でもあり、エッセイストでもある吉元由美さんが、日常に関わる『ひと・もの・こと』を徒然なるままに連載。
たまたま出会った人のちょっとした言動から親友のエピソード、取材などの途中で出会った気になる物から愛用品、そして日常話から気になる時事ニュースなど…さまざまな『ひと・もの・こと』に関するトピックを吉元流でお届けします。
「世界は美しい」と感じる心を
「この世界に、美しいものはひとつも存在していない」
この事実に気づいたとき、豊かに生きるための極意がそこにあると確信しました。美しいものは、それを美しいと感じる人がいて初めて、美しいものになるのです。
まだ人間がこの地球に存在していなかった頃も、おそらく海は青く、空は青く。そして緑の山々が連なっていたことでしょう。
春の野山にはさまざまな種類の花が咲き、夏草は匂い立つように風に揺れていたでしょう。秋になれば木の実が熟し、木々は鮮やかに紅葉し、冬には雪が世界を眠らせるように降ったでしょう。
しかし、それを美しいと思う人がいなければ、それらはただの海で、空で、花でしかなかったのです。
自然界のひとつひとつに名前をつけ、自然に生かされ、愛で、感動を詩にし、物語にし、旅をして……。
そうして人間は「美しい」という感じる感受性を育み、それを表現する感性を磨いてきました。
芸術も、その作品を美しいと思わなければ、ただの作品です。つまり、美しさというのは人類にとって共通の価値観ではなく、それを感じる人による、とても個人的な価値観なのです。
ということは、美しさを感じる感受性を高めていけば、それだけ心が震えるような感動に多く出会える。
感動力を高めていくことが、多くの美しさを体験できることにつながるのです。
世の中には、実に多くのモノや情報で溢れています。必要なモノであれば手に入れることはそれほど難しいことではありません。
でも、たとえば夏の炎天下、喉がカラカラに乾いているとき、自動販売機もコンビニもなく、公園には水飲み場がなかったとしたらどうなるでしょうか。
そう、あたりまえのことなどひとつもないのです。自動販売機もコンビニも街にたくさんありますが、それはあたりまえという次元のことではないのです。
喉がカラカラに乾いたときに飲む一杯の水に、命がよみがえるような気がしますよね。ありがたい、と思うのも感動です。
そして、たとえば小さなてんとう虫のあの愛らしい模様も、多種多様な動物たち、植物たち、星空も太陽も月もこの世界に存在する何もかもが、驚くべき存在であること。
そこに心の目を向けたときに、私たちの中に感動が生まれます。美しさに心が震えるのです。その個人的な体験が、人生を豊かに彩ります。
初めて満天の星空を見上げたときのような、初めて子どもが手のひらにカブトムシを載せたときのような、そんな新鮮な感動を大切に持ち続けていきましょう。
いのちを紡ぐ言葉たち かけがえのないこの世界で
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※記事中の写真はすべてイメージ
作詞家・吉元由美の連載『ひと・もの・こと』バックナンバー
[文・構成/吉元由美]
吉元由美
作詞家、作家。作詞家生活30年で1000曲の詞を書く。これまでに杏里、田原俊彦、松田聖子、中山美穂、山本達彦、石丸幹二、加山雄三など多くのアーティストの作品を手掛ける。平原綾香の『Jupiter』はミリオンヒットとなる。現在は「魂が喜ぶように生きよう」をテーマに、「吉元由美のLIFE ARTIST ACADEMY」プロジェクトを発信。
⇒ 吉元由美オフィシャルサイト
⇒ 吉元由美Facebookページ
⇒ 単行本「大人の結婚」