姪の仕事を「しゃべくりやな」といっていた伯父 急逝後、発覚した『事実』に涙
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道路標識、縦読みすると… 1枚に「これは気付かなかった」「面白い看板」目的地の方向や距離、道路上の警戒情報などを視覚的に伝える、道路標識。普段から車を運転する人であれば、頻繁に目にするでしょう。なおき(@528_frs)さんがXに公開した道路標識の1枚に、5万件を超える『いいね』が寄せられています。
北海道のコンビニ 駐車場で撮影した1枚に「怖すぎるだろ…」「五度見したわ」北海道で男性が撮影した1枚。写った光景に道民以外が「ウソだろ…」
2020年5~8月にかけて、ウェブメディア『grape』では、エッセイコンテスト『grape Award 2020』を開催。
『心に響く』と『心に響いた接客』という2つのテーマから作品を募集しました。
『grape Award 2020』心に響くエッセイを募集! 今年は2つのテーマから選べる
今回は、応募作品の中から『しゃべくりの仕事』をご紹介します。
結婚式や法事、親戚が集まるたびに近況を尋ね合うのは礼儀というものなのだろうか。駆け出しライターの私は、同じ質問をされるたびにうんざりしていた。
「東京でフリーライターをしている」と答えると、返ってくる反応は大抵2つ。「びっくり!」か「やっぱりね〜」のどちらかだ。
「びっくり」は都会のカタカナ職業というだけで、勝手に華やかなイメージを膨らませてしまっている場合。内心、「あの地味で暗かった子がね」となる。
一方、「やっぱり」はご近所では聞いたこともない、よくわからない職業と決めてかかっている場合。「あのいかにも風変わりな子らしいよ」となる。
どちらにしても、人並みはずれて不器用で人と目も合わせられない、いじめられっ子だった私を思い返してのことに違いない。
ところが、その伯父さんの反応はまるきり異なっていた。
「ライターというのは何をどうする仕事や?」
「今は取材モノが中心で、話を聞いて、その内容をまとめて…」
「人と話をする仕事か?」と、いきなり前のめりになる。
「まあ、そういえばそうだけれど、聞いた話を文章にするまでが仕事だから…」と、なぜか私はしどろもどろ。
「そやけど、うまいこと言うて、相手に話してもらわなあかんのやろ。ほな、おっちゃんと同じや」
伯父さんは細い目を一層細くしてにっこり。
「しゃべくりの仕事やな」と断定した。
私が子どもの頃、伯父はタクシーの運転手だったのを覚えている。その後、自動車教習所の教官を経て、今は所長なのだとか。たしかに、大勢の人を指導する「しゃべくりの仕事」と言えるだろう。
教習所の校長先生のような務めとライターが同じのはずがない。そう思いながらも、私はうやむやに頷いてみせた。ただ、「しゃべくりの仕事」という言葉だけがいつまでも耳に残った。
自分の中で何がどう変わったのかはわからない。それ以来、「しゃべくり」を意識することが増えていった。インタビューの際、私の発する言葉が目の前の相手にちゃんと届いているかを確かめるようになった。
そう心がけるだけで会話はスムーズになり、思いがけず盛り上がったり、話の核心に触れられたりすることもあった。原稿を書くための材料集めにしか考えていなかった取材の大切さを、改めて思い知らされた。
あれから十数年、数えられないほどの人に出会い、問いかけ、語らってきた。あるときは取材慣れしていない若手タレントに「なんでこんなに話しやすいかな」と目を見張られ、あるときは大物経営者に「余計なことまで話しちゃったよ」と照れ笑いされた。
いつしか、人とのコミュニケーションは私の仕事の真ん中に位置していた。
昨秋、伯父が急逝した。慌ただしく葬儀を終え、親族が寄り集まると、思い出話は尽きない。つられるように私も、「しゃべくり」のエピソードを持ち出した。すると、同年代のいとこの間から「俺も!」「私も!」という声が続いた。
伯父から「しゃべくりの仕事」と決めつけられたのは、私だけではなかったのだ。しかも、それぞれの職種はバラバラ。営業マンや接客業はともかく、経理など事務職の人まで揃って同じように断定された。そして、誰もが抵抗を感じながらも言いくるめられ、心に刻まれた言葉に従うように自分の仕事を振り返るきっかけにしていた。
「おっちゃんらしいな…」
皆、泣き笑いしたような顔を見合わせた。
あらゆる仕事の根底には人とのコミュニケーションがある-私たちに伝えてくれたのはこういうことだったのか。ともあれ、伯父はささやかな成長の種を一人ひとりに植え付け、旅立っていった。
grape Award 2020 応募作品
テーマ:『心に響くエッセイ』
タイトル:『しゃべくりの仕事』
作者名:西田 知子
エッセイコンテスト『grape Award 2020』の審査員が決定!
2017年から続く、一般公募による記事コンテスト『grape Award』。第4回目となる2020年の審査員には、grapeでも人気の漫画『犬と猫どっちも飼ってると毎日たのしい』シリーズでおなじみの漫画家・松本ひで吉さんが決定しました。
さらに『Jupiter』などの作詞を手がけた作詞家でエッセイストの吉元由美さんや、映画化もされた『スマホを落としただけなのに』などで人気を博する小説家の志駕晃さんも審査員として作品を読みます。
心に響く作品として選ばれるのは、どのエピソードでしょうか。結果発表をお楽しみに!
『grape Award 2020』詳細はこちら
[構成/grape編集部]