交通違反の取り締まり、警察のノルマはある?ない? 元警察官が明かす「実情」は…
公開: 更新:

※写真はイメージ
りょうせい
元警察官。警察歴10年。交番勤務を経て、生活安全課にて従事。第三級陸上特殊無線技士。
行方不明事案、DV・ストーカー、子供や高齢者の安全確保など、年間300件規模の人身関連事件に対応。
聴取・初動捜査・被害者支援だけでなく、地域の防犯広報・企画にも携わる。
現在は警察で得た実務経験を生かし、XやYouTube、StandFMで「日常で使える防犯知識」を中心とした情報発信を行う。
「自分で身を守るために必要な知識」を分かりやすく届けることをミッションとしている。

知名度が高まった『ピーポくん』 警視庁が「次は?」と考えたことに「笑った」「発想好き」みなさんは『ピーポくん』をご存じでしょうか。『ピーポくん』は、頭のアンテナと大きな耳が特徴の警視庁のマスコットキャラクターです。1987年から警視庁のPRに貢献し続けているので、知っている人のほうが多いかもしれませんね。...

宅配で『女性の一人暮らし』を悟られない方法 「すごくいい」「私も使ったことある」Toji Komorin(@tojikomorin)さんが開発した、インターホンで使える『男声』の音声をまとめたウェブサイト『男声で対応』をご紹介します。






先般、神奈川県警による、交通違反の取り締まりをめぐる不適切な対応が明らかになり、注目を集めました。
こうしたニュースを受けて、「警察にはノルマがあるのでは?」と疑問に感じた人も多いのではないでしょうか。
本記事では、元警察官の視点から、警察にノルマがあるのかについて解説します。
手段が歪められるのは『あってはならない』
問題となった神奈川県警の事案は『検挙件数を稼ぐための強引な取り締まり』というもので、あってはならないことです。
交通違反の取り締まりは、本来、交通事故を防ぎ、人の命を守るために行われるもの。
検挙件数を増やすことを目的にしてはいけませんし、やり方を曲げることも決して許されないのです。
まずはこの大前提を押さえたうえで、『警察にノルマはあるのか』という点について見ていきます。
結論:世間一般的な『ノルマ』は存在しない
一般的に「ノルマ」と聞くと、数字を達成しないとペナルティがあり、達成すれば給料に大きく反映される仕組みをイメージする人も多いのではないでしょうか。
しかし、警察官には、交通違反の件数に応じて給料が歩合のように増える仕組みはありません。
※写真はイメージ
また、「交通違反の反則金が、取り締まりをした警察官の収入になるのでは?」といった疑問を持たれることもありますが、そのようなこともありません。
交通違反で納める反則金は、警察署ではなく銀行や郵便局の窓口で納付され、国の収入となります。
その財源は、信号機や道路標識など、交通安全に関わる設備の整備・管理に充てられています。
警察官の給与はこうした反則金の件数に応じて増えることはなく、公費によって賄われているのです。
警察官の業務に数字が求められる実情はある
ここで一度、考えてみてください。
「パトロールを強化した結果、事故が減りました」
「年間〇件の交通違反を検挙した結果、事故が減りました」
上記2つの説明では、どちらのほうが納得感がありますか。多くの人が後者だと感じるでしょう。
警察の仕事は、国民の安全を守ることです。
その成果を示すためには、感覚的な説明だけでなく、件数や数値といった『見える形』での説明が求められる場面もあります。
実際に警察では、交通違反の検挙件数や犯罪の検挙数、事故件数の推移など、さまざまな数値が統計として管理・公表されています。
こうした背景から、現場でも一定の目標が設定され、活動の成果が数字として把握される仕組みになっているのです。
警察は利益を追求する組織ではありませんが、指標がなければ活動の成果が見えにくくなってしまいます。
そのため、業務の実態として、検挙件数などの数字が意識される場面があるのも事実です。
『目的』を履き違えてはならない
※写真はイメージ
本来、検挙件数などの数字は、交通事故を防ぎ、安全・安心を守るために業務を遂行した『結果』であるべきです。
しかし、その本来の目的を見失い、数字を上げること自体が目的になってしまうと、住民からの信頼を損ね、不適切な対応につながるおそれがあります。
実際に筆者自身は、交通違反の取り締まりに難しさを感じていました。
必要最低限の説明だけで次々と切符を切るよりも、なぜ取り締まりを行っているのか、その違反の先にどのような事故が起こり得るのかを丁寧に説明し、違反者に納得してもらうことを大切にしていたためです。
結果として、短時間で多くの件数を処理することはできませんでした。
一方で、件数という数字だけを見れば、どちらのやり方が実績として評価しやすいかは明らかです。
さまざまな考え方はありますが、共通していえるのは、数字を上げることだけが目的となってはならないということ。
数字の先にあるのは、住民の安全と信頼であることを忘れてはなりません。
安心・安全を守る使命を見失わないで
検挙件数といった数字は、警察の活動を内外から評価するうえで重要な指標の1つです。
その一方で、この『数字』に対して、現場の警察官たちが悩みや苦悩を抱える側面があるのも事実でしょう。
それでも、その先にある本来の目的である安全・安心の確保という使命を見失うことなく、職務が遂行されることを願います。
[文・構成/りょうせい]